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記録ノート
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吉塚駅までの道を地図でたどりながら、見つけると吉塚駅の看板に苔が生えて傾いていた。天災による被害はどこに行っても一緒だった。駅の近辺には、雑草が見渡す限り生えている。
駅に出ると、涼しい風と鳥のさえずりが聞こえてきた。息を飲み込むようにして歩くとこの季節が春だったと気付く。
町はすっかり変わってしまったが、確認しておきたいことがあった。
亡き妻のミユの伯母が居た所だったからだ。
ミユの母はセイカのことをよく知っていた。
彼女の記す中田家にあった山内透吾〈セイカ〉の記録ノートを持っていたからだ。
あの時、確かに彼女が言ったことがある「もしも、世界があなた一人になったとしても、私達が残してきたノートはここにあります」
と。
もしかしたら山内透吾についての鍵が有るかも知れないと思った。
ゆっくりと、徒歩を進めていく。雨をたっぷり浴びた雑草を踏んでいくと。ガラクタとなったビルの隙間から日が差し込んでいた。
地図に記された位置を示すには崩れた店の名前を辿っていた。
「コンビニは、あそこね。その先に」
進んでいくと、「千代県庁口」とか記された地下入り口があった。
暗いトンネルのように続く地下から小動物の鳴く声が聞こえてきた。
「チュル!チュルチュル!」
おそらくネズミがいるのだろう。
でも目指す先は、地下ではなくすぐ目の前にある倒れたマンションだった。
崩れたマンションを離れた場所から眺めているとふいに空気が変わったような気がした。
まるでミユの母の存在が呼んでいるような。
遠くから、何かが光るものがあった。
「ん?なんだろう・・・」
目を懲らしめながら、歩いてみた。
近づいて見てみると金庫の鍵穴が日差しをうけ、光っていた。
その周囲には見覚えのある物が散乱していた。
「彼女の部屋だわ・・・」
何年も経ったこの部屋には沢山の思い出が詰まっていた。
ミユの母は、おそらくこの金庫に記録ノートを入れていたのかも。
そう思うと金庫に手を掛けてみた。
少し隙間がある・・・
鍵は解除された状態でずっとセイカが来るのを待っていたのかもしれない。
ゆっくりと開けてみた。
「あったわ」
確かにそこには「山内透吾」と表紙に書かれている。
中田家が関わってきた彼に関するノートを開いてみた。
駅に出ると、涼しい風と鳥のさえずりが聞こえてきた。息を飲み込むようにして歩くとこの季節が春だったと気付く。
町はすっかり変わってしまったが、確認しておきたいことがあった。
亡き妻のミユの伯母が居た所だったからだ。
ミユの母はセイカのことをよく知っていた。
彼女の記す中田家にあった山内透吾〈セイカ〉の記録ノートを持っていたからだ。
あの時、確かに彼女が言ったことがある「もしも、世界があなた一人になったとしても、私達が残してきたノートはここにあります」
と。
もしかしたら山内透吾についての鍵が有るかも知れないと思った。
ゆっくりと、徒歩を進めていく。雨をたっぷり浴びた雑草を踏んでいくと。ガラクタとなったビルの隙間から日が差し込んでいた。
地図に記された位置を示すには崩れた店の名前を辿っていた。
「コンビニは、あそこね。その先に」
進んでいくと、「千代県庁口」とか記された地下入り口があった。
暗いトンネルのように続く地下から小動物の鳴く声が聞こえてきた。
「チュル!チュルチュル!」
おそらくネズミがいるのだろう。
でも目指す先は、地下ではなくすぐ目の前にある倒れたマンションだった。
崩れたマンションを離れた場所から眺めているとふいに空気が変わったような気がした。
まるでミユの母の存在が呼んでいるような。
遠くから、何かが光るものがあった。
「ん?なんだろう・・・」
目を懲らしめながら、歩いてみた。
近づいて見てみると金庫の鍵穴が日差しをうけ、光っていた。
その周囲には見覚えのある物が散乱していた。
「彼女の部屋だわ・・・」
何年も経ったこの部屋には沢山の思い出が詰まっていた。
ミユの母は、おそらくこの金庫に記録ノートを入れていたのかも。
そう思うと金庫に手を掛けてみた。
少し隙間がある・・・
鍵は解除された状態でずっとセイカが来るのを待っていたのかもしれない。
ゆっくりと開けてみた。
「あったわ」
確かにそこには「山内透吾」と表紙に書かれている。
中田家が関わってきた彼に関するノートを開いてみた。
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