遠い記憶、遠い未来。

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親子の涙

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3993年、ミユと蓮は市役所に婚約届けをして、晴れて婚約した。

蓮の過去を受け止めてくれた。
「私はあなたがどれだけの人生を歩んできたとしても、ずっと死ぬまで寄り添いつづける」と言ってくれた。

彼女の住む糸島で共に過ごすことを誓った。

ミユの旧名は、長谷川ミユ。蓮と結婚したことで「羽角ミユ」となった。

平日の昼間、蓮とミユはソファでゆったりとしていた。

「むふふ・・・」ミユは照れながらも嬉しそうに笑っていた。

「気持ちわるいな・・・」蓮は少しドン引きしていたが、


「だって、羽角ミユになったんだよ。これ以上嬉しいことないよ」

「あ、蓮!どれだけ歳離れていったとしても、見捨てないよね?」
「蓮は、ずっとそのままだけど。私は、ばあちゃんになるのよ」


「そんなことはしないさ。いくつになったとしても、オレは君のそばにいるよ」

「ほんとに言い切れる?」

「絶対にね。子供が生まれても子供が大人になっても、オレはずっと守りつづけるさ」

「私はそこにはいない?」

「そりゃあ、そうだろうなあ」

「だって、歳とって老衰になるのは、人間の性ってものだろう」

「そんなこといわないでよー。いいなあー。ずっと蓮と生きていたい!蓮の血を飲めば、私も不老不死になるかも!」

「え!!バンパイア?」

「血をすってやるうーーー」

お互い冗談の言い合いをしながら、新築の一軒家で新しい生活をしていた。

蓮は、お金には困ってはいなかったが、バイト程度でコンビニで働いたり、会社の事務を行っていたりしていた。
年齢不詳なところもあるので、ずっと同じ場所にいることは難しかった。
多額なお金は父、羽角康太から振り込まれていた。

倒産になりかけた頃、「株式会社AIR BORD」から合併の話を持ちかけられてから吸収されることになった。父は社長の座を矢形サキに受け渡して以来、家を構えて引きこもるようになった。
おそらく、名義は父であるが、サキがしたのだろう。

蓮を作ってくれた父であっても、自分にとっては父親には変わりなかった。結婚の報告も恥ずかしながらもメッセージで綴った。
それから一週間後、自分宛てに電話がかかってきた。

あらかじめ耳に埋め込まれていた小型電話機から電話がかかってきた

「もしもし・・・」

「・・・・・・・」


「あの・・どなたですか?」

「・・・・・」

ずっと無言であった。でも蓮の中で誰からの電話かはわかっていた。

「お父さん?」


「ああ・・」

「蓮、結婚したんだってな。おめでとう」

「ありがとう。」

「こんな父親ですまないな・・」

父の声はどこか弱々しくなっていた。
それもそうだろうと思った。ニュースでも取り上げられるぐらいのことをしたのだから。

自分の本体である山内透吾は、父が誘拐して自分のものにしたのだから。誘拐罪としての罪を追ってしまっていた。

我が研究のために。それがゆえに、彼の細胞遺伝子からクローンを作り上げたのだから、「人クローン規制法」としての罪もある。

多額の借金は覆っているはずだが、それは矢形サキ社長の力なのだろうか。借金の負担を背負い、全額返していたのだ。

サキはもともと、人が良すぎる。
そんなサキももう、定年を迎えることで、次期社長は「テツ」に託すそうだ。

「あのテツが?・・・想像できない。」

「だろ?でもな。お前と関わってきたテツくんとカオルくんは、ずっとお前のことを思っていたそうだよ。離れていても一緒だと私に言っていたよ」

「お前とこうやって話すのは、初めてだな。蓮」

「私はもう長くは生きられない。お前に話したいことがある」

「なんだよ、改まって」

「私がまだな。小学校の頃の話だ。」

「私は喘息持ちでな。よく病院通いをしていた。その時にな。ある一室だけ気になっていたんだ。山内透吾は寝ていたのだ。」

「その頃は、たまたま見ただけだった。だが、私が中学になる頃まで、病院に通っていると。その少年はまだ寝ていたのだ。ずっと変わらないまま。」

「あの時、保護者と名乗る女性がいてね。先生と話をしているところを聞いてしまったんだ。」

「彼には、私達には考えられない生命反応があるようだ。永遠不老と呼ばれる遺伝子を持ち合わせた身体を持っていると」

「調べたよ。医学を勉強してね。」

「社会人になった歳に、いくつかの電気メーカーで営業をして、そのうち、彼をクローンとして蘇えさせることを思いついた。医学と電気の構造は似ているところがある、組み込めばそれはクローン化は夢ではないと考えた」

「そして実行したんだ。彼を拉致することを」

「その女性がいないすきをみてね。」

「お父さん、少し聞きたい。その女性の名前は」

「ああ・・長谷川梨花と書いてあった。カルテに書かれているのを見たよ。保証人名にね」

「長谷川?」

蓮は少し思い出すことがある。というよりか、自分の妻の旧姓と同じであった。


「なあ、お父さん。ありがとう」

「こんなオレでも息子にしてくれて。」

「すまない・・ほんとに・・・」
電話の奥で泣いているのが分かった。

その後、父との電話を切った。

「お父さんなんて?」ソファに横になっているミユは言ってきた。

「ああ・・父の叫びは伝わったようだ」


そう、どんな形であろうと、血が繋がってなかろうと
そこには結ばれない愛はあった。でも「親子」であることは
間違えてはいない。


そして、羽角康太は、94という歳で他界してしまった。
自分の過去と見つめ合いながら





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