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生活
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「165番の中村様」
木曜日の平日、ミユはいつものように受付の仕事をしていた。
「こちらに、サインを」
と相手に指示をしていた。
「次の167番の山内様」
「ん?山内?」
気付くと、山内透吾は目の前に座っていた。
「今は透吾でいいんですよね?」
「はい。」
今日は、かしこまった格好をしていてた。
灰色のスーツをまとっていて、唯一ネクタイはしていなかった。
「今日は、どこか行かれるんですか?」
「ええ。今から博物館へ行きます。」
「催し物はなんですか?」
「まだそこまでは見てませんが、知り合いが博物館で働いてるもので」
「ふうん。」ミユはどこかヤキモチな感覚になっていた。
「彼女さんとか?ですか?」
「いないですよ。親戚というか難しい間柄なもので」
「それで今日は、口座カードの積立をその相手名義でしたいのですが」
「どうしてその方の名義にされるんですか?」
「お世話になったとしか言えないです。」
「その方の証明書と指紋認証カードはお持ちですか?」
「はい、持ってきました。」
準備が早いとミユは思った。
「これで大丈夫です」
一仕事が終わると
「ありがとう。それじゃまた」
透吾は、ロビーまで向かっていた。
受付の机に、証明書が置きっぱなしになっていてたので追いかけていた。
「お客様!」
外に出るともういなかった。
「あれ?」
まるで、一瞬にして消えたようにどこにもいなかった。
17時に仕事が終わると、商店街をくぐり抜けて、アパートの前のスーパーで足りない食料を買っていた。
また彼に会いたいと心の中で思ってしまう。
ミステリアスな彼と話すことが、今のミユにとって心地よいと思ってしまう。
歩いていると、アパートに向かう間の坂道に彼が立っていた。
山内透吾が。
「偶然ですね」
ミユが言うと
「帰りなんですね。自分もこの近くに住んでいるもので」
「どこなんですか?」
「ここから見える、あそこのアパートです」
「え!」
「私もここに住んでいて。」
その時、ミユは気付いてしまっていた。
新しいスーツのジャケットの肩から少し破れかかっている箇所があることを。
「あの~、良かったらご飯ご一緒どうですか?」
ミユは彼といたい一心で、言った。
「いや、ご迷惑かけると思うので、大丈夫ですよ」
「それにそこ」ミユは指指すと
「破れてますよ。裁縫しますから是非!」
「ああ・・・」
透吾は、頭をかきながら、素直に来てくれた。
「302号なんですね」
「透吾さんはどの階なんですか?」
「1階に住んでいます。」
指をセンサーにあてると「カシャ」と鳴らし、部屋にご招待した。
休日の掃除をしたかいもあり、お客さんが来ても良いようにキレイにしていた。
あらためて、自分の完璧さに褒めていた。
「へえー、いがいにキレイにされているんですね」
「意外と?」
「あっいや別にいい意味で」
「こう見えても、私完璧主義ですよ。」
冗談を込めた話をすると、笑ってくれていた。
「ぷっ・・・」
「あっ笑いましたね。やっと笑ってくれたというか」
「ジャケット貸してください。裁縫しますから」
「あ、ありがとう」
ジャケットを手にすると、引き出しから裁縫キットを出して縫い始めた。
「どうなったら、ここまで破れるんですか?それになにか臭い!」
動物園にでも行ったのだろうか。動物のニオイが臭っていた。
「ああ、そうそう、動物園に行ったもので」
なにかを隠すような言い方に聞こえた。
「ほんとにー?」
なんか慌ててる彼を見てかわいいと思った。
裁縫終わると「これで大丈夫!今日はジャケットお預かりしておきますから、洗濯しなきゃ!」
「いいですよ!そこまでしなくて一回切りのスーツだから」
「いいえ。また使うかもしれないですよ」
「とりあえず、こういうのはきっちりしないと」
ミユはすっかり奥さん気分になっていた。
「今日は、食べていってください。」
「そこまでは」
「私って以外に一人なれしてるようにみえて寂しいんですよ」
「じゃあ、おかまいなくお邪魔します」透吾は言った。
「日本語になってないですよ・・・」
ミユはチャカしてみた。
それからミユは何度も透吾と一緒に過ごすことが増えていった。
仕事終わるとすぐに買い出しをして、ご飯の準備をする、毎日の工程になっていた。
「蓮さん、今日は豚の生姜焼きですよ」
蓮と呼ぶようになったのは、透吾は別にいるから蓮と呼んでくれと言うようになっていた。
「いつもすみません」
「だって、蓮さんの冷蔵庫何も入ってないんですもん」
「私がちゃんと作りますから」
毎日が、ミユにとって幸せなことだった。
ある日の夜に、二人でご飯を食べているときに蓮が言ってきた。「もしよかったら、でいいんだけど。一緒に住みませんか。」
「え?」
「実は、管理人にも言ってきました。」
「早いですね・・・」
「いや、だったらあの・・また戻ります」
「え。。私は、一緒にいたいです」
「いいんですか?」
「はい」
「今週中には、下の階は引き払ってきます。」
「ん?ちょいと待てよ」
蓮は疑問が湧いてきた。
「それって告白ですか?」
「もう・・言わせないください。」
ミユは照れながらも言ってしまった。
「オレもあなたといたいです」
そして一週間後、二人でミユの部屋で過ごすことになった。
木曜日の平日、ミユはいつものように受付の仕事をしていた。
「こちらに、サインを」
と相手に指示をしていた。
「次の167番の山内様」
「ん?山内?」
気付くと、山内透吾は目の前に座っていた。
「今は透吾でいいんですよね?」
「はい。」
今日は、かしこまった格好をしていてた。
灰色のスーツをまとっていて、唯一ネクタイはしていなかった。
「今日は、どこか行かれるんですか?」
「ええ。今から博物館へ行きます。」
「催し物はなんですか?」
「まだそこまでは見てませんが、知り合いが博物館で働いてるもので」
「ふうん。」ミユはどこかヤキモチな感覚になっていた。
「彼女さんとか?ですか?」
「いないですよ。親戚というか難しい間柄なもので」
「それで今日は、口座カードの積立をその相手名義でしたいのですが」
「どうしてその方の名義にされるんですか?」
「お世話になったとしか言えないです。」
「その方の証明書と指紋認証カードはお持ちですか?」
「はい、持ってきました。」
準備が早いとミユは思った。
「これで大丈夫です」
一仕事が終わると
「ありがとう。それじゃまた」
透吾は、ロビーまで向かっていた。
受付の机に、証明書が置きっぱなしになっていてたので追いかけていた。
「お客様!」
外に出るともういなかった。
「あれ?」
まるで、一瞬にして消えたようにどこにもいなかった。
17時に仕事が終わると、商店街をくぐり抜けて、アパートの前のスーパーで足りない食料を買っていた。
また彼に会いたいと心の中で思ってしまう。
ミステリアスな彼と話すことが、今のミユにとって心地よいと思ってしまう。
歩いていると、アパートに向かう間の坂道に彼が立っていた。
山内透吾が。
「偶然ですね」
ミユが言うと
「帰りなんですね。自分もこの近くに住んでいるもので」
「どこなんですか?」
「ここから見える、あそこのアパートです」
「え!」
「私もここに住んでいて。」
その時、ミユは気付いてしまっていた。
新しいスーツのジャケットの肩から少し破れかかっている箇所があることを。
「あの~、良かったらご飯ご一緒どうですか?」
ミユは彼といたい一心で、言った。
「いや、ご迷惑かけると思うので、大丈夫ですよ」
「それにそこ」ミユは指指すと
「破れてますよ。裁縫しますから是非!」
「ああ・・・」
透吾は、頭をかきながら、素直に来てくれた。
「302号なんですね」
「透吾さんはどの階なんですか?」
「1階に住んでいます。」
指をセンサーにあてると「カシャ」と鳴らし、部屋にご招待した。
休日の掃除をしたかいもあり、お客さんが来ても良いようにキレイにしていた。
あらためて、自分の完璧さに褒めていた。
「へえー、いがいにキレイにされているんですね」
「意外と?」
「あっいや別にいい意味で」
「こう見えても、私完璧主義ですよ。」
冗談を込めた話をすると、笑ってくれていた。
「ぷっ・・・」
「あっ笑いましたね。やっと笑ってくれたというか」
「ジャケット貸してください。裁縫しますから」
「あ、ありがとう」
ジャケットを手にすると、引き出しから裁縫キットを出して縫い始めた。
「どうなったら、ここまで破れるんですか?それになにか臭い!」
動物園にでも行ったのだろうか。動物のニオイが臭っていた。
「ああ、そうそう、動物園に行ったもので」
なにかを隠すような言い方に聞こえた。
「ほんとにー?」
なんか慌ててる彼を見てかわいいと思った。
裁縫終わると「これで大丈夫!今日はジャケットお預かりしておきますから、洗濯しなきゃ!」
「いいですよ!そこまでしなくて一回切りのスーツだから」
「いいえ。また使うかもしれないですよ」
「とりあえず、こういうのはきっちりしないと」
ミユはすっかり奥さん気分になっていた。
「今日は、食べていってください。」
「そこまでは」
「私って以外に一人なれしてるようにみえて寂しいんですよ」
「じゃあ、おかまいなくお邪魔します」透吾は言った。
「日本語になってないですよ・・・」
ミユはチャカしてみた。
それからミユは何度も透吾と一緒に過ごすことが増えていった。
仕事終わるとすぐに買い出しをして、ご飯の準備をする、毎日の工程になっていた。
「蓮さん、今日は豚の生姜焼きですよ」
蓮と呼ぶようになったのは、透吾は別にいるから蓮と呼んでくれと言うようになっていた。
「いつもすみません」
「だって、蓮さんの冷蔵庫何も入ってないんですもん」
「私がちゃんと作りますから」
毎日が、ミユにとって幸せなことだった。
ある日の夜に、二人でご飯を食べているときに蓮が言ってきた。「もしよかったら、でいいんだけど。一緒に住みませんか。」
「え?」
「実は、管理人にも言ってきました。」
「早いですね・・・」
「いや、だったらあの・・また戻ります」
「え。。私は、一緒にいたいです」
「いいんですか?」
「はい」
「今週中には、下の階は引き払ってきます。」
「ん?ちょいと待てよ」
蓮は疑問が湧いてきた。
「それって告白ですか?」
「もう・・言わせないください。」
ミユは照れながらも言ってしまった。
「オレもあなたといたいです」
そして一週間後、二人でミユの部屋で過ごすことになった。
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