57 / 121
生活
しおりを挟む
「165番の中村様」
木曜日の平日、ミユはいつものように受付の仕事をしていた。
「こちらに、サインを」
と相手に指示をしていた。
「次の167番の山内様」
「ん?山内?」
気付くと、山内透吾は目の前に座っていた。
「今は透吾でいいんですよね?」
「はい。」
今日は、かしこまった格好をしていてた。
灰色のスーツをまとっていて、唯一ネクタイはしていなかった。
「今日は、どこか行かれるんですか?」
「ええ。今から博物館へ行きます。」
「催し物はなんですか?」
「まだそこまでは見てませんが、知り合いが博物館で働いてるもので」
「ふうん。」ミユはどこかヤキモチな感覚になっていた。
「彼女さんとか?ですか?」
「いないですよ。親戚というか難しい間柄なもので」
「それで今日は、口座カードの積立をその相手名義でしたいのですが」
「どうしてその方の名義にされるんですか?」
「お世話になったとしか言えないです。」
「その方の証明書と指紋認証カードはお持ちですか?」
「はい、持ってきました。」
準備が早いとミユは思った。
「これで大丈夫です」
一仕事が終わると
「ありがとう。それじゃまた」
透吾は、ロビーまで向かっていた。
受付の机に、証明書が置きっぱなしになっていてたので追いかけていた。
「お客様!」
外に出るともういなかった。
「あれ?」
まるで、一瞬にして消えたようにどこにもいなかった。
17時に仕事が終わると、商店街をくぐり抜けて、アパートの前のスーパーで足りない食料を買っていた。
また彼に会いたいと心の中で思ってしまう。
ミステリアスな彼と話すことが、今のミユにとって心地よいと思ってしまう。
歩いていると、アパートに向かう間の坂道に彼が立っていた。
山内透吾が。
「偶然ですね」
ミユが言うと
「帰りなんですね。自分もこの近くに住んでいるもので」
「どこなんですか?」
「ここから見える、あそこのアパートです」
「え!」
「私もここに住んでいて。」
その時、ミユは気付いてしまっていた。
新しいスーツのジャケットの肩から少し破れかかっている箇所があることを。
「あの~、良かったらご飯ご一緒どうですか?」
ミユは彼といたい一心で、言った。
「いや、ご迷惑かけると思うので、大丈夫ですよ」
「それにそこ」ミユは指指すと
「破れてますよ。裁縫しますから是非!」
「ああ・・・」
透吾は、頭をかきながら、素直に来てくれた。
「302号なんですね」
「透吾さんはどの階なんですか?」
「1階に住んでいます。」
指をセンサーにあてると「カシャ」と鳴らし、部屋にご招待した。
休日の掃除をしたかいもあり、お客さんが来ても良いようにキレイにしていた。
あらためて、自分の完璧さに褒めていた。
「へえー、いがいにキレイにされているんですね」
「意外と?」
「あっいや別にいい意味で」
「こう見えても、私完璧主義ですよ。」
冗談を込めた話をすると、笑ってくれていた。
「ぷっ・・・」
「あっ笑いましたね。やっと笑ってくれたというか」
「ジャケット貸してください。裁縫しますから」
「あ、ありがとう」
ジャケットを手にすると、引き出しから裁縫キットを出して縫い始めた。
「どうなったら、ここまで破れるんですか?それになにか臭い!」
動物園にでも行ったのだろうか。動物のニオイが臭っていた。
「ああ、そうそう、動物園に行ったもので」
なにかを隠すような言い方に聞こえた。
「ほんとにー?」
なんか慌ててる彼を見てかわいいと思った。
裁縫終わると「これで大丈夫!今日はジャケットお預かりしておきますから、洗濯しなきゃ!」
「いいですよ!そこまでしなくて一回切りのスーツだから」
「いいえ。また使うかもしれないですよ」
「とりあえず、こういうのはきっちりしないと」
ミユはすっかり奥さん気分になっていた。
「今日は、食べていってください。」
「そこまでは」
「私って以外に一人なれしてるようにみえて寂しいんですよ」
「じゃあ、おかまいなくお邪魔します」透吾は言った。
「日本語になってないですよ・・・」
ミユはチャカしてみた。
それからミユは何度も透吾と一緒に過ごすことが増えていった。
仕事終わるとすぐに買い出しをして、ご飯の準備をする、毎日の工程になっていた。
「蓮さん、今日は豚の生姜焼きですよ」
蓮と呼ぶようになったのは、透吾は別にいるから蓮と呼んでくれと言うようになっていた。
「いつもすみません」
「だって、蓮さんの冷蔵庫何も入ってないんですもん」
「私がちゃんと作りますから」
毎日が、ミユにとって幸せなことだった。
ある日の夜に、二人でご飯を食べているときに蓮が言ってきた。「もしよかったら、でいいんだけど。一緒に住みませんか。」
「え?」
「実は、管理人にも言ってきました。」
「早いですね・・・」
「いや、だったらあの・・また戻ります」
「え。。私は、一緒にいたいです」
「いいんですか?」
「はい」
「今週中には、下の階は引き払ってきます。」
「ん?ちょいと待てよ」
蓮は疑問が湧いてきた。
「それって告白ですか?」
「もう・・言わせないください。」
ミユは照れながらも言ってしまった。
「オレもあなたといたいです」
そして一週間後、二人でミユの部屋で過ごすことになった。
木曜日の平日、ミユはいつものように受付の仕事をしていた。
「こちらに、サインを」
と相手に指示をしていた。
「次の167番の山内様」
「ん?山内?」
気付くと、山内透吾は目の前に座っていた。
「今は透吾でいいんですよね?」
「はい。」
今日は、かしこまった格好をしていてた。
灰色のスーツをまとっていて、唯一ネクタイはしていなかった。
「今日は、どこか行かれるんですか?」
「ええ。今から博物館へ行きます。」
「催し物はなんですか?」
「まだそこまでは見てませんが、知り合いが博物館で働いてるもので」
「ふうん。」ミユはどこかヤキモチな感覚になっていた。
「彼女さんとか?ですか?」
「いないですよ。親戚というか難しい間柄なもので」
「それで今日は、口座カードの積立をその相手名義でしたいのですが」
「どうしてその方の名義にされるんですか?」
「お世話になったとしか言えないです。」
「その方の証明書と指紋認証カードはお持ちですか?」
「はい、持ってきました。」
準備が早いとミユは思った。
「これで大丈夫です」
一仕事が終わると
「ありがとう。それじゃまた」
透吾は、ロビーまで向かっていた。
受付の机に、証明書が置きっぱなしになっていてたので追いかけていた。
「お客様!」
外に出るともういなかった。
「あれ?」
まるで、一瞬にして消えたようにどこにもいなかった。
17時に仕事が終わると、商店街をくぐり抜けて、アパートの前のスーパーで足りない食料を買っていた。
また彼に会いたいと心の中で思ってしまう。
ミステリアスな彼と話すことが、今のミユにとって心地よいと思ってしまう。
歩いていると、アパートに向かう間の坂道に彼が立っていた。
山内透吾が。
「偶然ですね」
ミユが言うと
「帰りなんですね。自分もこの近くに住んでいるもので」
「どこなんですか?」
「ここから見える、あそこのアパートです」
「え!」
「私もここに住んでいて。」
その時、ミユは気付いてしまっていた。
新しいスーツのジャケットの肩から少し破れかかっている箇所があることを。
「あの~、良かったらご飯ご一緒どうですか?」
ミユは彼といたい一心で、言った。
「いや、ご迷惑かけると思うので、大丈夫ですよ」
「それにそこ」ミユは指指すと
「破れてますよ。裁縫しますから是非!」
「ああ・・・」
透吾は、頭をかきながら、素直に来てくれた。
「302号なんですね」
「透吾さんはどの階なんですか?」
「1階に住んでいます。」
指をセンサーにあてると「カシャ」と鳴らし、部屋にご招待した。
休日の掃除をしたかいもあり、お客さんが来ても良いようにキレイにしていた。
あらためて、自分の完璧さに褒めていた。
「へえー、いがいにキレイにされているんですね」
「意外と?」
「あっいや別にいい意味で」
「こう見えても、私完璧主義ですよ。」
冗談を込めた話をすると、笑ってくれていた。
「ぷっ・・・」
「あっ笑いましたね。やっと笑ってくれたというか」
「ジャケット貸してください。裁縫しますから」
「あ、ありがとう」
ジャケットを手にすると、引き出しから裁縫キットを出して縫い始めた。
「どうなったら、ここまで破れるんですか?それになにか臭い!」
動物園にでも行ったのだろうか。動物のニオイが臭っていた。
「ああ、そうそう、動物園に行ったもので」
なにかを隠すような言い方に聞こえた。
「ほんとにー?」
なんか慌ててる彼を見てかわいいと思った。
裁縫終わると「これで大丈夫!今日はジャケットお預かりしておきますから、洗濯しなきゃ!」
「いいですよ!そこまでしなくて一回切りのスーツだから」
「いいえ。また使うかもしれないですよ」
「とりあえず、こういうのはきっちりしないと」
ミユはすっかり奥さん気分になっていた。
「今日は、食べていってください。」
「そこまでは」
「私って以外に一人なれしてるようにみえて寂しいんですよ」
「じゃあ、おかまいなくお邪魔します」透吾は言った。
「日本語になってないですよ・・・」
ミユはチャカしてみた。
それからミユは何度も透吾と一緒に過ごすことが増えていった。
仕事終わるとすぐに買い出しをして、ご飯の準備をする、毎日の工程になっていた。
「蓮さん、今日は豚の生姜焼きですよ」
蓮と呼ぶようになったのは、透吾は別にいるから蓮と呼んでくれと言うようになっていた。
「いつもすみません」
「だって、蓮さんの冷蔵庫何も入ってないんですもん」
「私がちゃんと作りますから」
毎日が、ミユにとって幸せなことだった。
ある日の夜に、二人でご飯を食べているときに蓮が言ってきた。「もしよかったら、でいいんだけど。一緒に住みませんか。」
「え?」
「実は、管理人にも言ってきました。」
「早いですね・・・」
「いや、だったらあの・・また戻ります」
「え。。私は、一緒にいたいです」
「いいんですか?」
「はい」
「今週中には、下の階は引き払ってきます。」
「ん?ちょいと待てよ」
蓮は疑問が湧いてきた。
「それって告白ですか?」
「もう・・言わせないください。」
ミユは照れながらも言ってしまった。
「オレもあなたといたいです」
そして一週間後、二人でミユの部屋で過ごすことになった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる