遠い記憶、遠い未来。

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絶望

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サキは考えていた。蓮が行きそうな所を。

看護師にも聞いてみるが蓮に関する情報が何も見つからなかった。
「一体何があったんですか?」若い看護師は、困った顔をしてサキを見た。

「自分たちもわからないんだ。なあ蓮が行きそうなところはわかるか?テツ、カオル!」

「・・・」
テツは少し思い当たるところがあった。いや、絶対にあそこだ!
「おそらく、父親の会社だよ」


サキは、背筋から冷たいものが感じるほどの感覚を覚えた。
「ま、まさか・・・」


心の中で願う

「あの場所は、絶対にいかせてはならない!」


「なあ!テツ、カオル!お前らは会社に戻ってろ!」


「サキ!父親の会社にいくのかよ。オレたちも連れてってくれ」

「だめだ!」

サキは、彼らには見せてはならない!あの部屋を!
蓮の唯一の友達である二人を。


病院の玄関まで降りると、人工AIタクシーを捕まえた。

「HASUMI本社まで!」と指示すると走りはじめた。

新宿の街並みを通り過ぎていくと、ビルの4階ぐらいの高さを飛ぶ影が見えた。

蓮だ!Air boardに乗って街中を潜り抜けてく。

「ちくしょー!蓮!あの部屋にだけは行かないでくれよ!」

本社ビルまであと一キロ。

タクシーのスピードが蓮について行けず、遠く離れてゆく。

その蓮のボードの速さは、ここまですごいのか!と改めて思った。

やっと本社ビルに近づいていくと、蓮の姿は捉えたが、ボードを片手に50階の社長室までエレベーターで上がっていく姿が見えた。。
サキは、遅れてエレベーターまで来ると

「ちくしょー。蓮、余計なことするなよ。」

右側のエレベーターのドアが開くと50階を押した。
サキは、落ち着かない身体を落ち着かせようとするが、出来なかった。

「蓮、俺はお前を悲しませたくはないんだ。あんな父親にも、悲しませることだけは。。」

両手を握りながら祈っていた。

エレベーターの開く音がすると社長室まで走っていく。

息が切れそうになるほど。

突然のことだった。
社長室から花瓶の割れる音が聞こえてきた。

サキは、勢いよく入ると
「蓮!!」


「俺の頭になにをしたんだよ!オヤジ!!」

羽角康太は、無言のまま蓮を見ていた。

「ずっと頭の中で誰かが叫んでるんだ」
顔に両手を被せながら、震えていた。

「頭が、軋む・・・」
手を頭に抱えながらさらに顔がゆがんでゆく

「蓮・・・」

「サキ!なんでここに?」
驚く表情になると

「もう。いいだろ。帰るぞ!」
サキは、手を差し伸ばそうとするが、振り払われた。

「サキも、隠してるんだろ。今の顔見ればわかる!」
睨むようにサキを見ていた。

サキは、なにも言えなかった。

「馬鹿だなあー。」背後から聞こえてきた。

羽角康太は、恐ろしい笑顔になり人を欺くような表情をしていた。

「蓮よ。我が息子よ。お前はただの・・・」

「やめろ!!」サキは止めるが。

蓮の頭痛はさらにビジョンを何度も見せようとしている

「いっつ・・・・・」

「呼んでいる!そのなにかが。」

「蓮!」サキは叫ぶが届かない。

社長室から蓮は出るとよろけながら、自分がそのなにかに誘われるように長く細い廊下の先に、研究室に導かれてるのが分かった。

「もういい!帰ろう!蓮」サキは、腕を掴んだ。

「うるさい!!!!」

サキの手を払った。

その先にある研究室を見たい!その先はなにがある!蓮は、朦朧とした身体を振るいだしながら一歩、さらに一歩。研究室に近づいてゆく。

サキの手はもう届かない。

ドアノブに手をかけてひねる。

開くとそこには・・・






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