遠い記憶、遠い未来。

haco.

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ビジョン

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蓮は、朝早く必ず頭痛から目覚めることが最近多くなっていた。
今日の朝もそうだった。


「いてて…」

掛け時計を見ると7時10分になってたことに気付く。

最近は特に激しさを増すこともあった。
そんな痛さを仕事で紛らわすように仕事着を飾る
カジュアルに、無地の綿シャツに、黒ジャケットを羽織ると鏡を見ながら身だしなみを揃えると、徒歩10分の距離「有限会社REN」まで歩きながら行った。

自社である「有限会社REN」はサキが開いてるBARの横にスペースを空けてくれて事務所を建てる事ができた。
サキ曰く、「まあ、BAR自体も儲かってないけどな。でもまあ、商品ついでに立ち寄ってくれると助かる」と言った。

新しい企業と言うことがあり、蓮社長のデスクをサキが購入してくれてた。
「まあ、プレゼントだよ。でもその分儲かったら返してくれや」
と言ってくれた。

サキがいてくれてよかった。とありがたみが分かってくる。

「おいおい!カオル!ここ違うって言ってるだろ!」テツは後輩に怒鳴りつけていた。あの中学の頃の内田カオルに。
カオルは、中学を卒業後、高校と大学と進んで建設業の会社を1年間続けていた。

カオルもテツと変わらず、すぐに飽き性になってしまう性格なので、こちらとしては不安だった。

「なあ、蓮どう思うよ。コイツさあ、勝手に営業記録にケチつけるんだぜ」とカオルは言う。

「オレのドコがケチだよ!」と突っかかるテツ。

「やれやれ」なんて蓮は心の中で呆れていた。

奥のBARからサキは蓮を呼んだ。
「おい!蓮。ちょっとこっちへ」

賑やかな事務所から逃げるようにカウンターに座る

「最近、大丈夫かよ?顔色が悪いように見えるんだが」

「なんかね。最近よく頭痛がするんだ。風邪かと思ったんだけど。全然頭痛以外はないんだよね」

「あんま、無理するなよ。」

心配していたその時

グラスが落ちると蓮の意識も突然に落ちた。

「あっ!蓮!蓮!」サキの声は微かな声は聞こえたが、意識は朦朧としていた。

深く沈んでゆく感覚がある。。

深い闇がどこまでも広がり続けていた。
ここは何処なんだろう。。

かすかに聞こえてくる

「セイカ・・・」

「え、誰だ・・・」蓮は誰かは知らないが男の声でかすかに
蓮に伝えてるように聞こえる。


「君のいる世界は、幸せになれたかい?」
また聞こえてくる。
まだ、若く優しい声をしていた。なぜか蓮は泣いていた。

暗闇は、光へと変わり、何処か遠い場所にいた。
地球なのか別の何処かなのかわからない。

草原と空しかない場所、「ここはどこ?」

「ここだよ。おいで!」

遠くから、聞こえてきた。
後ろを振り返ると、知らないはずなのに、どこかであったことのような男が立っていた。サキと歳は変わらないぐらいの顔立ちだった。

その男と手を繋ぐと自分の小ささに気付いた。蓮の手は、まだ10歳にもままならない幼児な手をしていた。

「一緒に帰ろう!ママが待ってるよ」

引っ張る手が突然、止まると見ていた景色が変わっていた。

今度は、日本ではあるが、目の前の二人は私を睨むように座っている。
1人の顔には見覚えがあった。「中田先生」だ。
でもどこか違うが似ている。おそらく先生の家系であることは間違いない。

真剣な顔で見つめてくるもう1人の中田は、
「一緒に、頑張りましょう!」と力強く、喋っている

手を握っているが、また目の前のビジョンが変わっていた。

なぜかもうなにも存在していなかった。

ただ、白い世界に立たされていただけだった。

遠くから聞こえてくる声が

「蓮!」

「え!」

意識の中から目覚めるとそこは病院の一室だった。

「良かったあ~!」
サキが目の前での心配した顔を見せていた。
ベッドの横でテツとカオルも安堵感に満ちていた。

「いったい何が起きたんだ。オレに」蓮は自身に驚いていた。

「社長は予想してたよ。こうなることを」サキは言った。

「どういうこと?」と言うとまた頭痛がした。

一瞬、他のどこかの研究室内だろうか。チューブに繋がれた自分が研究室のベッドで寝ているビジョンが見えた。

「なにかが頭に邪魔されてるような気がする・・・」

「とりあえず今日は、ここで休むんだ。蓮!」
「テツ、カオル帰るぞ!」

サキは二人を連れて病院から離れていった。

蓮は、ベッドにもう一度寝ると天井を見上げた。

父はオレになにかをしたのか?それとも、別のなにかがそうさせたのか。考えていた。

幻想の中で見てきた人達は、オレの幸せを知っていた。

それを知り得るのはどう考えても父しかいないのかもしれない。

頭痛と怒りは、父へとぶつけていた。



そしてその朝、蓮は病院から消え去っていた。
サキ達が来た頃にはすでにいなかった。


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