遠い記憶、遠い未来。

haco.

文字の大きさ
上 下
33 / 121

哀しき反抗

しおりを挟む
羽角蓮が電気メーカーで知られている「HASUMIグループ」で生まれて、すでに10年の歳月が流れた。

小学校の4年生の頃には社長である父は、「後継者」の言葉をよく口癖のように言っていた。

心の内では、いつもため息をついていた。
学校での生活は周りの子達から、白い目で蓮を見てくるが、「若社長」という肩書きに周りから茶化されることもよくあった。

学校生活は、居心地の良いものではなかった。
友達もいないし、作ろうとも思わない。
また、茶化されるだけだ、と思っていた。


蓮はいつも孤独を感じていた。


ある日学校の帰宅中、街の中心にある若者達が集うビルが所狭しと並んでいる、あるビルに目を向けた。
ビルの外壁に設置してあるテレビから父の姿が映し出されている。

記者発表をしている父がどこか仮面を被ってるような表情で答えていた
「HASUMIグループの拡大に向けて新たな取り組みを行っております。新しい家電となる。家事用ロボットの導入を日本のみ関わらず世界に向けて勧めていきたいと思っております。」

「今後のグループの発展としてどのようなロボットを作られてゆくのか、詳しく教えてくれますか?」

記者に答えている父は、誇らしげに話しかけた。

「これはまだサンプル段階ではあるが、人工知能のアップデートとともに、もっと人間らしい感情を持てる媒体を今は勧めている段階でございます」

普段の子供なら理解しにくい説明だが、蓮にはなぜか理解するのに早かった。
そんな父を見るのが嫌だ。
歩きながら思いふけているとオレンジ色に染まる街並みを歩きながら、高層ビルに着いた。
家と呼ぶには程遠い会社の中の蓮の部屋だ。

夕食は、いつも最上階である55階のレストランで食事をしていた。
父とは今までも食事をしたことがない、創業当時から携わっているシェフの立花タケルだけが蓮の話し相手になってくれた。

「レンさん、学校はどうでしたか?」

「今日もね。数学の問題でね。わからない所があったんだ。」

「また教えますよ。レンさん」

「さんはとっていいよ。立花さんの方が年上なんだし」

「ですが、社長の息子さんなので、敬意は払わないといけません」

またか。と蓮はいつもの調子にさせられた。

「もう、夜が近くなってきましたね。」
ベランダを下ろして、全ての街並みを眺められる景色をすべてを塞いでしまった。

いつものように、教材を開くと
「さてと」と立花は合いの手をいれた。


時間を許す限り、教えてくれた。
蓮の心は立花がいるだけで安心感を感じていた。

それから14年後、立花は75という歳で、レストランのシェフ業を辞めて老人ホームに入った。

蓮は、14歳になっていた。

この歳になるまでも父は、1年に一度しかあわない。
父はほんとうに愛しているのだろうか。

「お父さんはなぜ、自分と話しないんだ」
「今は忙しいんだ。後でにしてくれ」

そんな話を会えば必ず反発するようになった。
その頃から父親を憎むようになっていた。


どうして僕なんかを生んだんだ。

14歳にしてこの会社から、独り立ちするように。

新しい道へと歩いていった。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~

ふゆ
ファンタジー
 私は死んだ。  はずだったんだけど、 「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」  神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。  なんと幼女になっちゃいました。  まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!  エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか? *不定期更新になります *誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください! *ところどころほのぼのしてます( ^ω^ ) *小説家になろう様にも投稿させていただいています

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

処理中です...