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伝え続けて
しおりを挟む「ねえ。お兄さん、江戸時代ってどんな世界だった?」
「坂本龍馬とあったことある?」
小学6年生の廉は、透吾に言った。
「質問攻めだね。」と困った顔しながら答えた。
「ねぇねぇ。」
まだ質問は続く。
「困ってるじゃない。透吾さん。ごめんなさいね。」
とお茶を置きながら由美子は言った。
「でも、言われてみれば、どんな時代だったかと言うと、波乱な人生だったかなあ。今の学校の勉強ではどんな風に教えてもらってるの?」
「えっとね。年号とどんなことが起きたかとか。お偉いさんの人を覚えるとか。」
「大雑把だね。」と私は言った。
「そうだね。自分が知っている江戸は、特に反乱も多かった時代でもあるかな。その頃は佐賀藩の警備として努めていたよ。」
「警備?警備って警察みたいなもの?」
「まあ、職業的には近いかな。警備でも海外と結ぶ為の窓口みたいなもので、特にオランダや中国の配送の警備をしていたよ。」
「へええ。どんなものを運んでたの?」
「今なら言えるけど、武装武器だったり、海外の情勢をいち早く察知し、幕末には、諸藩に先駆けて科学技術を導入していたりとね。」と私は言った。
あの頃のことはいろんなことがあった。
徳川家が天下統一を治めていた時代。
警備に就くまでには、安土桃山時代には戦の動乱中は、農民として過ごしていて、戦中の戦地として建てた家が焼かれたこともあった。
村人達も無惨に死にゆく中、私はいくら刺されても死ねない身体だったから、どこに行っても化け物扱いされていた。
安土桃山から江戸の徳川の時代になるともに。
道中で出会った喜平というお侍さんと江戸時代まで共に過ごしていた。喜平は佐賀藩に属することで私も招きいれてくれたが、
喜平は自分より年上で40ぐらいだったかもしれない。
年齢を重ねることに、私の身との対象差が離れていくのがわかっていた。
一言の事で、喜平は私から去っていった。
「君はなぜ、老けないのだ?私はもう皺だらけなのに。」
それからも私は幕末の動乱が終息するまで、自分の身を隠すように日本中を旅してまわった。
「お兄さん、聞いてる?」
振り向くと廉が目の前で、ずっと私を見ていた。
「すまない!考えごとしてたよ」と私が言うと
「もっともっと教えてほしいなあ。歴史のこと。」
次から次へと質問攻めだった。
「もう、自分の部屋に戻りなさい!困ってるでしょ!」
と由美子は言った。
「いやいや、言いですよ。」と私。
中田はずっと考えごとをしていた。
「透吾さん。私ね、思ったんだけど。あなたをサポートするためにも一緒にここに住みませんか?すぐにとは言いません。」
「あなた。。」と由美子は言った。
「それはご迷惑かと。さすがに。でもなぜに私をそんなにしてくれるんですか?」
「透吾さんと会うまでは、人生を捨てたようなものでした。エリートという肩書きを捨ててまで、こんな探偵ごっこをしてる。しかも不倫調査だったり。毎日が、そんなことの毎日。でも見せてくれたあなたの過去を観て、自分のちっぽけさに気付かされた。
私は透吾さんがこの世にいなければこの世界はなかったと思っている。あなたがこの世界を作ってくれたのであれば、感謝しないといけない。。だからなんです。今後は私が透吾さんの支えになりたいんです。自分の生きがいでもあるので」
と中田が言うと私は
「今の時代まで私は天涯孤独な人生でした。でも中田夫妻にあえたことでなにか抱えてきたものが、取れそうなやっと今日言えたような気がします。私のよき理解者としてお願いできますか?」
と返した。
「私も私の父もそう願っていると思ってます」と由美子が言った。
象二郎さんの言葉を思い出した。
「生きてくれ」と。
運命は変わってゆくもの。これからの自分も終わりのない道を
ずっと生きていくんだ。
どんな運命が待ち受けようと。
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