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第6章 沢田くんと夏の恋花火
沢田くんと新しい扉
しおりを挟むそれから。
嬉しさのあまり立ったまま気絶しかけていた沢田くんの意識を回復させた後、私と沢田くんは二人で川沿いに並んだ屋台を巡って、沢田くんの念願だったりんご飴を買った。
無言で、無表情にりんご飴をなめる沢田くん。
【イケメンの兄ちゃん、俺の渾身のりんご飴……そんなに不味そうな顔して食べないでくれ~~!!】
屋台のおじさんが涙で見守っているけど、ご安心ください。沢田くんはちゃんと喜んでますよ。
【おいし~~(●´ω`●)ほっぺた落ちそうだよ~~!!】
ほらね。
ああ、心の声が復活してくれて本当に嬉しい!
恋の砂に似たさっきの花火の効果なのか、沢田くんのバックハグ効果なのか分からないけど、私の耳が元に戻って本当に良かった。
おかげで、沢田くんのこんな声も聞ける。
【佐藤さん……浴衣可愛い(੭ु´͈ ᐜ `͈)੭ु⁾⁾♡ りんご飴で真っ赤になった唇、甘そうで可愛い(੭ु ›ω‹ )੭ु⁾⁾♡ あああ、さっきのこと思い出しちゃうよ!! あかん、鼻の下が伸びて人外の顔になっちゃう。まだ槍を持つ前の背中丸まった二足歩行の猿みたいな顔になっちゃう。いや待て、落ち着け!! 佐藤さんの隣で急に退化したら佐藤さんびっくりするよ! ここは落ち着くために、いったんりんご飴を食べる佐藤さんから目を逸らし、りんご飴の屋台のおじさんのりんご飴製造過程のドキュメントでも想像するんだ! 美味しいりんご飴を作るために、おじさんはまず青森に行って、りんごを大量購入し──】
沢田くんは急に屋台のおじさんの顔をジーッと眺め始める。
おじさんはドキッとしながらその視線を受け止める。
【な、なんだ……俺のことを熱い視線で見つめてくる少年よ! そんなに見つめられると、おじさんドキドキしちゃうよ! 妻も子供もいるのに胸がキュンとしちゃうんだけど! やめて! あたいにそっちの扉を開けさせないで~!!(*´Д`*)】
「さ、沢田くん! あっちで金魚すくいやってるから行こ!」
なんだか危ない雰囲気になりそうだったから、私は沢田くんの手を握って引っ張った。すると。
「あ……うん【あああああああああああ~~(*´Д`*) 佐藤さんのお手手が自然な感じで俺の手を握ってくる~~! どうしよう、ドキドキして顔が退化しちゃうよ!! よし、ここは落ち着くために、金魚すくいの屋台のおじさんの金魚集め奮闘記ドキュメントを想像して──】」
って、いろんなところでいろんな人の新しい扉を開こうとしないでよ沢田くん!!
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