123 / 160
第6章 沢田くんと夏の恋花火
沢田くんと背後霊
しおりを挟む沢田くん、と普通に声をかけようとして、私は踏みとどまった。
せっかくの二人きりだから、ちょっと驚かせてみたい。
そろりそろりと近づいて、暑さでフラフラしている沢田くんに後ろから目隠しをして、
「だーれだ?」
「⁉︎【あっ……この可愛い声はまさか、佐藤さんっ?】」
……みたいなことをやってみたい。
私は足音を立てないようにそーっとそーっと沢田くんの背後に近づいた。すると何かを察したのか、沢田くんの肩がビクッと震えた。
【い、今……俺の後ろで、何か怪しい物音がしたような……いや、まさかな。そんなバカなことがあるわけがない! こ、こ、こ、ここは学校だよ? 真昼間だし! お化けなんて出るわけがないだろ! お前の気のせいだよ、沢田空! でも、気のせいじゃなかったら……? ひょっとして屋上から飛び降り自殺をした生徒の怨霊がいて、そいつが無類のおはぎ好きで、俺のおはぎの匂いに辛抱たまらず出てきてしまい、俺を殺しておはぎを奪い取ろうとしているのでは……((((;゚Д゚)))))))!!!】
どこまで想像力逞しいのよ沢田くん。あと、おはぎ言い過ぎ。
【怨霊さん!! お、おはぎならいくらでもあげるのでどうか命だけはお助けを……っ!。゚(゚´ω`゚)゚。もうすぐ佐藤さんと花火まつりに行く約束をしているんです!! それまでは死にたくないんです~~!!】
可愛すぎるよ沢田くん。
声を出さないように必死でこらえたけど、結局引き笑いの「ヒッヒッヒ」っていう魔法使いのおばあさんみたいな声が出てしまった。
【あああおばあさんの怨霊さんでしたか!!((((;゚Д゚)))))))やっぱりお年寄りはおはぎが大好きですもんね! こだわりのあんこをこしらえそうですもんね! でもごめんなさい、うちのおはぎはそこまでこだわってないと思いますよ。なにしろ俺の母ちゃんが作ったやつなんで、クオリティーは低いです! しかも作ったのは昨日なので、もう賞味期限ギリギリですし、餅米がちょっと硬いですよ! 入れ歯とか欠けませんか? 大丈夫です? えっ? 幽霊だから入れ歯なんてない? それもそうですよねあははははは! いやああああ、怖いよ~~っ。゚(゚´Д`゚)゚。】
沢田くんはビビリ度MAXでわけのわからないことを言っている。
面白いけどもうそろそろホッとさせてあげよう。
「だーれだっ?」
私は沢田くんの両目を塞ごうと、左右から手を差し出そうとした。
【ぎゃあああああ~~!!!((((;゚Д゚)))))))】
その瞬間、びびった沢田くんが肩をすくめて頭を低くしてしまったので、私は勢い余って沢田くんに覆い被さるようなバックハグをしてしまった。
「えっ……えっ⁉︎【背中に感じるこの感触は、まさか……!】」
きゃああああ~~!! ごめん!! これは事故だよ、沢田くん!!
恥ずかしくてどうしたらいいのかパニック状態の私に、沢田くんは。
【もしや、実体のある背後霊⁉︎ ((((;゚Д゚)))))))】
って、まだビビってるんかい!
霊から一旦離れて、沢田くんっ!!
0
お気に入りに追加
159
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
窓を開くと
とさか
青春
17才の車椅子少女ー
『生と死の狭間で、彼女は何を思うのか。』
人間1度は訪れる道。
海辺の家から、
今の想いを手紙に書きます。
※小説家になろう、カクヨムと同時投稿しています。
☆イラスト(大空めとろ様)
○ブログ→ https://ozorametoronoblog.com/
○YouTube→ https://www.youtube.com/channel/UC6-9Cjmsy3wv04Iha0VkSWg
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
アルファちゃんと秘密の海岸 第1話 根も葉もない話
たいら一番
青春
少女ミチと、謎の少女アルファちゃん達の徒然なるお喋り。7000字程度の短いストーリーなので、暇な時に、暇つぶし、話しのタネになるかも。女の子たちがあーだこーだ話してるだけ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる