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第5章 沢田くんと愛の告白
沢田くんと悪魔の取引③
しおりを挟む「……裸は面白くないからやめた。次が本当の取引だ」
森島くんは悔しそうにそう言った。
【良かった。森島くんはやっぱりいい人だな。俺の嫌がる顔を見てやめてくれたんだ……(*´Д`*)】
沢田くんは誤解している。
森島くんの心の声は沢田くんへの嫉妬でグツグツのドロドロの溶岩シチューみたいになっているよ。
私はハラハラしながら聞き耳を立てた。すると、
「土下座しろよ、沢田」
森島くんがいきなり本性を見せた!! 今度こそ本気を出したみたいだ。
さすがの沢田くんもここまでストレートに言われたら、森島くんの悪意に気づいただろう。
「土下座……」
「そうだ。『佐藤さんと隣の席にさせてください。お願いします』って言いながら土下座しろ。そうしたら沢田の男気に応じて佐藤さんと席を隣り合わせにしてやるよ」
私は悔しくて拳を固めた。
森島くん、調子に乗りすぎだよ!
沢田くん、断っていいよ! こんなやつに頭を下げる必要なんて──。
【なーんだ、土下座か。心の中でいつもしてるからあんまり抵抗ない(・∀・)】
ちょっと待って沢田くーーーーーん!!! 脳ミソゆるふわすぎるよっ!!
「どうしたの? 景子ちゃん。泣きそうな顔して」
その時、廊下で横から声をかけられた。
振り向くと、杏里ちゃんが立っていた。
「あ、杏里ちゃん! 大変なの、森島くんが沢田くんに土下座を迫ってて──」
杏里ちゃんは眉根に皺を寄せ、すぐにドアをガラッと開けた。
教室の中の二人が驚いたように振り向く。
森島くんは机に片ケツを乗せた状態でスマホを沢田くんに向けていて、沢田くんはその足元で今まさに手をつこうとしているところだった。
「何やってんの? 森島」
「あっ……。こ、これは……【なんで杏里ちゃんが((((;゚Д゚)))))))】」
杏里ちゃんはキリンのような長い足で森島くんのところへ一直線に向かい、彼の胸ぐらを掴んだ。私も慌てて現場へ駆けつける。
「沢田に何してんの? って聞いてるんだけど」
綺麗な顔の女子が怒ると怖い。
バンッと机を叩いた杏里ちゃんに、森島くんはびびってスマホを床に落とした。
「ご、ごめんなさい……。調子に乗ってました……」
「あたしじゃなくて、沢田に謝るんだろ?」
「……はい」
沢田くんが弾かれたように立ち上がった。
情けない顔をした森島くんと、凛々しい顔をした杏里ちゃんの視線が沢田くんに向けられる。
私も沢田くんを見た。
沢田くんは驚くほど澄んだ目をして言った。
「……待って。森島くんは悪くない。森島くんは、ただ俺のわがままを聞いてくれようとしただけだから」
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