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第5章 沢田くんと愛の告白
沢田くんとXデー パート2
しおりを挟む遊園地デートから数日たったある日のことだ。
【Xデーが近い……!!】
またもやなんだかデジャブなんだけど、隣の席で沢田くんがそんなことを心の中で呟いている。
いったい、今度は何だろう?
ドッジボール大会ことスポーツフェスティバルも無事終了し、次の学校行事と言えば夏休み前の期末テストが待っているくらいだ。テストはXデーと言えないこともないけど、沢田くんの場合はちょっと普通と違うからなあ。
ちなみにスポフェス、うちのクラスの森島くん率いるAチームは3位という輝かしい結果に終わっていた。森島くんはそれで自尊心を満足させたようで、しばらくの間沢田くんに自慢げな態度をとっていた。
もちろん沢田くんはマウント取られていることに全く気づかなかったけど。
「森島くん、ナツミと映画館でデートしたんだって! ナツミに自慢されちゃった~、悔しい~~!【くそナツミのブス! 本当は私が森島くんとデートに行くはずだったのに!】」
「へえ、そうなんだ~」
麻由香ちゃんの愚痴を聞きながら、私はチラッと沢田くんに視線を送る。
私と沢田くんがデートしちゃったことは、まだ誰にも言っていなかった。多分この先もずっと二人だけの秘密になるような気がする。
テストが明けて夏休みが来たら、枇杷島公園花火まつりに沢田くんと二人で行くって約束してあることも──。
ほっぺがニヤニヤしちゃいそうになるのを指で隠していると、麻由香ちゃんが言った。
「そういえば、景子ちゃんと沢田くんがデートするらしいって噂が一部で広まっていたけど、本当なの?【まさかだよねー】」
ドキッ。
【ぎくっ】
沢田くんの背中が一瞬震えたのが分かった。
【はわわわわわ~(〃ω〃) そんな噂が一部で広まっていたなんて!! そういえば、森島くんに壁ドンして「佐藤さんとデートに行くのは俺だ」みたいなこと言っちゃったんだっけ! ああ、なんであんなイケイケなことしちゃったんだろう。俺、そんなキャラじゃないのに! 隠キャのぼっちのコミュ障でみんなの嫌われ者なのに~!!】
いえいえ、クールなイケメン、イケボで隠れファンが多いみんなの憧れの人ですけど……。
そしてあの壁ドン以来、ワイルドで強引でカッコいいっていう文言も加わり、人気がさらに急上昇中だということを沢田くんは知らない。
麻由香ちゃんの問いには「さあ、どうかなあ?」とはぐらかし、私はまたこっそりとニヤニヤした。
沢田くんの実像とみんなのイメージがどんどん離れていくのが面白い。
本当の沢田くんを知っているのは私だけなんだと思うと、つい優越感に浸ってしまう。
でも、そんな楽しい日常がXデーと共に終わりを告げようとしていることに──私はまだ気づいていなかった。
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