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第3章 沢田くんと炎のドッジボール
沢田くんと戦線離脱
しおりを挟む「一人で戦わないで、沢田くん!」
私の声が届いたのだろうか。沢田くんの『おんみつ』が解けて、1メートルほど離れた場所に砂煙と共にフッと沢田くんが現れた。
【さ……佐藤さん……⁉︎】
沢田くんが驚いたように私を見つめている。
私の頬がホッとして緩んだ。
「沢田くんはひとりじゃないよ。私たちがついてる。だからそんなに強がらないで。沢田くんのピンチの時は、私たちが守ってあげるから……!」
「佐藤……さん……」
「一緒に戦おうよ、沢田くん」
沢田くんを孤独から救うために、私は沢田くんに手を伸ばした。
【佐藤さん……。゚(゚´ω`゚)゚。 俺……ぼっちじゃ……ないの?】
沢田くんの瞳がみるみるウルッとし始めた。
その時だった。
完全に『おんみつ』が解けた沢田くんに向かって、森島くんが不意打ちのボールを投げようとしたのは。
【今だ! 死ね、沢田!!】
「あ、危ない! 沢田くん!!」
私は無我夢中で沢田くんの前に飛び出した。
すぐにドカッと背中へボールが当たる感触がして、私は顔を歪めた。
やられた……!
「佐藤さん!!」
フラついていた私を、正面にいた沢田くんが素早く手を伸ばして抱き止める。
抱き……。
え、ちょ、まっ、抱き……⁉︎ 抱き止めた⁉︎
えっ、待ってきゃあああああああああっ!!!
人一倍動いていたはずなのに汗ひとつかいていない沢田くんの爽やかな香りとぬくもりが私を包んでうぎゃああああ!!!
やばいやばいやばいやばい、死ぬーーー!!!
「佐藤さん、しっかり……!【佐藤さんが俺をかばってくれた……! 俺を守って倒れるなんて……うっ(´;ω;`)なんて優しいんだああああ!! 俺がぼっちじゃないってことを身をもって教えてくれたんだね、佐藤さんっ!!!】」
いや、今それどころじゃないでしょ。
死ぬよ!!
沢田くんの腕の中で私、シャレにならんくらい体温上昇してるんですけどーーー!!!
【チッ、佐藤さんに当たったか。千載一遇のチャンスだったのに】
森島くんも今、それどころじゃない!
【森島くん……あんなに仲良さそうだったのに、佐藤さんになんて冷たい目を向けているんだ……! 友達じゃなかったのか⁉︎ 許せない!!】
いや、だから沢田くんも少年マンガ風に盛り上がってるとこ悪いけど、今はそのノリじゃない!!
こっちは胸キュン学園モノの青春ジャンルでピュアラブ部門に飛び込みエントリーしたいくらいのドキドキハートなんだってばーーっ!!!
「さ、沢田くん……あの……」
「……分かってる【佐藤さんの仇は、俺が討つ!】」
沢田くんは凛々しい顔で私をギュッと抱きしめてトドメを刺した。
うん、もう試合とかどうでもいいや。
私はカクッと首を垂らして気絶した。
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