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第3章 沢田くんと炎のドッジボール
沢田くんと絶体絶命
しおりを挟む「しっかりして、沢田くん!」
倒れてしまった沢田くんに、私は必死で声をかけた。
余計なことをしちゃった。
まさか、カッコ良かったと言っただけで倒れちゃうなんて……。
【カッコヨカッタってたしか東南アジアあたりの国の首都の名前だよね。ココナッツとか有名だよね】
沢田くん、それ多分ジャカルタ。タしか合ってないよ。
これは当分起き上がれそうにないかも。
「ハーッハッハ! 今頃俺の球が効いてきたようだな、沢田! 俺のパワーを思い知ったか!【大丈夫ー?(´・ω・`)手加減すれば良かった】」
小野田くんのせいじゃないのに、小野田くんは複雑そうに高笑い。
Bチームのみんなも心配そうに沢田くんを見ている。
「沢田くん、頑張って~!」
「だめだ、完全にやられてる」
「やっぱり相手が小野田くんじゃね……」
「小野田くん、強すぎ!」
ごめんなさい。トドメ刺したの、私なんです……。
こうなったら、沢田くんの代わりに私がボールを投げるしかない。
私は沢田くんが抱えていたボールをなんとかしてもぎ取ると、油断している小野田くんに向かって不意打ち攻撃した。
「えいっ!」
「ぎゃっ!」
ボールは小野田くんの顔面に当たった。
やった!! と思った時、ピピーッと審判の笛が鳴る。
「顔面はセーフ!」
そんな……! せっかく沢田くんが掴み取ってくれたチャンスが水の泡になっちゃった!!
「チクショウ、よくもやったな……!【あぶねー!!:(;゙゚'ω゚'): 顔面で良かった。完全に油断してたぜ!】」
小野田くんは赤くなった顔をこすりながら私を睨む。
どうしよう。小野田くんを怒らせちゃったみたい。もう絶体絶命!
「邪魔だ、消えろ!【悪いけどこれも勝負だから!】」
小野田くんが私に向かって投げる姿勢を取る。
「きゃあああ!」
私は思わず悲鳴を上げた。その時だ。
「待て……!!」
背後で沢田くんの声がした。振り向くと、沢田くんが生まれたての仔馬のようにフラフラしながら立ち上がるところだった。
「佐藤さんには手を出すな……。その代わり、俺を好きにしろ──」
顔を上げた沢田くんの瞳がキラキラと輝く。
少し弱りながらも懸命に小野田くんに向かっていく姿にもズキュンとしちゃう。
「沢田くん……」
かっ……と言いかけて、私は口を塞いだ。
やばいやばい。また沢田くんが倒れちゃう。
沢田くんは中央ラインの手前まで歩いて行った。
正面には小野田くん。その距離は五メートルもない。
誰もが固唾を飲んで沢田くんたちを見ていた。
すると、澄んだ目をした沢田くんが小野田くんへとわずかに微笑みかけた。
「やれよ、小野田」
その時だ──思いがけない奇跡が起きたのは。
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