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第1章 沢田くんと恋の予感
沢田くんとトラウマ
しおりを挟む「どうした、沢田。早く号令をかけろ」
担任の福田先生が怪訝な顔つきになる。
名指しされた沢田くんはその時、こんなことを考えていた。
【やっベー! めったに声なんか出さないから、ボリューム感が分からない! めっちゃ大きい声が出たらどうしよう⁉︎ その声がめっちゃおっさんみたいな声だったらどうしよう⁉︎ これだから日直は嫌なんだよなー! ああ、昔のトラウマが蘇る。そう、あれは俺がまだ小三だった頃……】
ええええ~~! このタイミングで回想入るのーーー⁉︎
福田先生がもうイライラしてるんですけど⁉︎
【そう、あれは小三だった頃……あれ? 小四だったっけ?】
そこ、どっちでもいいーー!!
【まあいいや、小三だったってことにしよう。小二だったような気もするけどまあいいや、小三で。「きりーつ!」っていうところの「つ」がうっかり「ん」になっちゃって、思い切り「キリーン!」って叫んじゃって、「サファリパークかよ」って突っ込まれて大笑いされたんだっけ……】
おい、長々と回想したわりにはエピソード弱いな!
【でもあの時サファリパークかよって突っ込んだ大西くんの将来の夢がまさかの飼育員だったことには笑ったけど】
知らんわ、もうええわ!
「起立!」
私の号令でみんなが立ち上がり、「礼!」でみんなが頭を下げた。
みんなが着席した頃、ようやく沢田くんはハッと気づいて立ち上がろうとしたらしく、ぴょこんと一瞬だけ頭が上下した。
【ああああ、しまった。佐藤さんに号令を言わせてしまった! 何で俺はこんな時に大西くんのこと思い出したりするんだよ】
本当に、何でよ。
【佐藤さん……怒ってないかな?】
沢田くんが私を見ているような気がしたので、私もチラッと彼に目を向けて怒ってないよと微笑んでみる。
【うわああああ! 俺、ヘタレでごめんね佐藤さーん!!!。゚(゚´Д`゚)゚。 次こそはきっとちゃんとやるよーっ! 佐藤さんに幻滅されないように頑張るよーーっ!!!】
沢田くんは申し訳なさそうにペコッと頭を下げて、正面を向いた。
号令くらい、なんてことない仕事なのに。
でも沢田くんにはトラウマがあるのだ。私にとっては低いハードルでも、彼にとってはそうじゃないのだ。
頑張って、乗り越えてほしい。
沢田くんならきっと出来るって、私は信じてる。
【そうだがんばれ、沢田空! おじさんも応援してるぞっ】
うわっ、いいシーンだったのに最後沢田くんの脳内劇場の土下座おじさんに全部持ってかれた。
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