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第四話
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モニカが泣いている頃、モニカの婚約者であったディオールは窮地に立たされていた。
あの後夜会では、ディオールは友人から文字通り袋叩きに合い、顔の一部は未だ赤みを帯びていた。
そして、それだけで終わるはずもなく……ディオールと向き合う二人。
父である、メインサーリオ公爵、モニカの父であるベディラリーヌ侯爵が穏やかではない顔をして座っている。
ディオールとモニカの婚約はこの二人によるもの。
しかし、ディオールにはその意志がないことが証明され、テーブルには一枚の用紙が置かれていた。
「さて、ディオールくん。こちらが、婚約破棄の手続きの書類だ。サインをしてくれるかな?」
ベディラリーヌ侯爵は笑っていない目をして、ペンを渡しているがディオールはそれを取ることができなかった。
ただ震えるばかりで、頭の中ではこんなはずじゃなかったと……今更になって後悔をしていた。
「どうした? お前がいい出したことなんだろう?」
「でで、ですが……」
「君がどうであれ、私の娘を多くの人の前で侮辱したという事実は変わらないのだよ」
テーブルを叩きつけると、持っていたペンが折れ床に転がる。
「その意味ぐらいわかっているだろ?」
ディオールは小さく「はい」と答える。しかし、ディオールは本気で婚約破棄をするつもりはなかった。
幼い頃から一緒で、何をするのも、どこへ行くのも一緒。
隣りにいるのが当たり前に育ってきた二人には……両親の薦めもあり八歳の頃に婚約する。
だが……思い合っている二人は、これまで多くの喧嘩をしてきた。
どれもこれもが些細なもので、今回のような大事になったことはない。
ディオールは学園の卒業パーティーで思いをぶつけるつもりでいた。しかし、モニカが本当に自分のことを好きでいてくれるのかが分からなかった。
それで、たまたま見た恋愛小説に出来事を実行することで、モニカが思いをぶつけてくれるのではないかと、そんな浅はかな考えから始まったことだ。
「ほらディオール。しっかり持て、サインするのだ」
父親に無理やりペンを握らされ、腕を掴み書類へと運ばれる。
強制的とも言える状況で、書きたくもない書類にサインさせられようとしていた。
「お、お待ち下さい。これには深いわけがあるのです」
「何を待てというのかな? 私は君の意思を汲み取って、わざわざこちらへと出向いたのだよ?」
「何をしている? ベディラリーヌ侯爵がお前の意見を受け取ってくれたのだ。ディオール、早く書面にサインをしろ」
両家の二人を前にして、ディオールはもう何を言ってもダメなのかと……泣きそうな顔をしてもこの二人が許してくれるはずもない。
助けを求めて脇に控えていた執事に視線を送るが、ただ首を横に振るだけでディオールの味方がこの部屋にいるはずもない。
一文字一文字、書き進めて、ディオールの目からは涙がこぼれていた。
最後の文字を書き終えると、父親に殴り飛ばされる。
「お前は許可を出すまで、部屋でじっとしていろ!」
サインを書き終えたディオールは虚ろな目をして、執事に付き添われ部屋から出ていく。
何もかも終わったと、涙が溢れて止まらなかった。
あんなことがなければと……自分のしたことの情けなさに絶望をしていた。
こんなことなら……あの日、ちゃんと伝えるべきだったと……。
そんな事がぐるぐると頭の中を回っていた。
用意してあった、小さな箱を取り出し窓の外へ放り投げる。
力なく床に仰向けになり呆然と天井を見上げていた。
「モニカ……」
あの後夜会では、ディオールは友人から文字通り袋叩きに合い、顔の一部は未だ赤みを帯びていた。
そして、それだけで終わるはずもなく……ディオールと向き合う二人。
父である、メインサーリオ公爵、モニカの父であるベディラリーヌ侯爵が穏やかではない顔をして座っている。
ディオールとモニカの婚約はこの二人によるもの。
しかし、ディオールにはその意志がないことが証明され、テーブルには一枚の用紙が置かれていた。
「さて、ディオールくん。こちらが、婚約破棄の手続きの書類だ。サインをしてくれるかな?」
ベディラリーヌ侯爵は笑っていない目をして、ペンを渡しているがディオールはそれを取ることができなかった。
ただ震えるばかりで、頭の中ではこんなはずじゃなかったと……今更になって後悔をしていた。
「どうした? お前がいい出したことなんだろう?」
「でで、ですが……」
「君がどうであれ、私の娘を多くの人の前で侮辱したという事実は変わらないのだよ」
テーブルを叩きつけると、持っていたペンが折れ床に転がる。
「その意味ぐらいわかっているだろ?」
ディオールは小さく「はい」と答える。しかし、ディオールは本気で婚約破棄をするつもりはなかった。
幼い頃から一緒で、何をするのも、どこへ行くのも一緒。
隣りにいるのが当たり前に育ってきた二人には……両親の薦めもあり八歳の頃に婚約する。
だが……思い合っている二人は、これまで多くの喧嘩をしてきた。
どれもこれもが些細なもので、今回のような大事になったことはない。
ディオールは学園の卒業パーティーで思いをぶつけるつもりでいた。しかし、モニカが本当に自分のことを好きでいてくれるのかが分からなかった。
それで、たまたま見た恋愛小説に出来事を実行することで、モニカが思いをぶつけてくれるのではないかと、そんな浅はかな考えから始まったことだ。
「ほらディオール。しっかり持て、サインするのだ」
父親に無理やりペンを握らされ、腕を掴み書類へと運ばれる。
強制的とも言える状況で、書きたくもない書類にサインさせられようとしていた。
「お、お待ち下さい。これには深いわけがあるのです」
「何を待てというのかな? 私は君の意思を汲み取って、わざわざこちらへと出向いたのだよ?」
「何をしている? ベディラリーヌ侯爵がお前の意見を受け取ってくれたのだ。ディオール、早く書面にサインをしろ」
両家の二人を前にして、ディオールはもう何を言ってもダメなのかと……泣きそうな顔をしてもこの二人が許してくれるはずもない。
助けを求めて脇に控えていた執事に視線を送るが、ただ首を横に振るだけでディオールの味方がこの部屋にいるはずもない。
一文字一文字、書き進めて、ディオールの目からは涙がこぼれていた。
最後の文字を書き終えると、父親に殴り飛ばされる。
「お前は許可を出すまで、部屋でじっとしていろ!」
サインを書き終えたディオールは虚ろな目をして、執事に付き添われ部屋から出ていく。
何もかも終わったと、涙が溢れて止まらなかった。
あんなことがなければと……自分のしたことの情けなさに絶望をしていた。
こんなことなら……あの日、ちゃんと伝えるべきだったと……。
そんな事がぐるぐると頭の中を回っていた。
用意してあった、小さな箱を取り出し窓の外へ放り投げる。
力なく床に仰向けになり呆然と天井を見上げていた。
「モニカ……」
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