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第一話
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多くの人がその夜会を楽しみ、男性は凛々しく女性は優雅なドレスを着飾っていた。
貴族平民関係なく、ここに居る多くの若者は学園の卒業生たち。
毎年学園から贈られる最後のパーティーに、羽目を外すものも少なくはない。
会場は喧騒により賑わっておかしくもないが静寂に包まれていた。
「モニカ・ベディラリーヌ侯爵令嬢。お前との婚約を破棄させてもらう!」
彼が発した言葉によって、会場に居る誰もが動きを止めていた。メイルサーリオ公爵家のディオール。
触らぬ神に祟りなしと、この日に限って婚約者であるはずのモニカにエスコートをしていなかったことで周囲からは遠巻きにされていた人物。
なにより、彼の隣には真紅のドレスに身を包んだ女性がいて、さも見せつけるかのように腰に手を当てている。
「聞いているのか!」
指を差され、そんな事をされてただ黙っているはずもない女性に周囲が注目していた。
モニカは手に持っていたワイングラスをグイっと一気に飲み干し、大きな音を立てることもなく静かにテーブルに置く。
彼女が一歩、また一歩と彼に近づき、参加していた誰もが固唾を飲み、彼女の行動に釘付けだった。
モニカは、スカートの両端を広げ膝をついた。その動作にディオールは満面の笑みを浮かべる。
まるで、勝ち誇るような顔をしていたディオールだったが、モニカから向けられた満面の笑みに動揺を隠せないでいた。
「婚約破棄……ですか。誠にありがとうございます」
モニカはそう言い放ち、ディオールに背を向けて歩き出す。
給仕をしていた男性からワインボトルを奪い、あろうことかそのまま口をつけゴクゴクを飲み、ワインは口から溢れる。
プハッと吐息を漏らすと、ディオールを睨みつける。
「お幸せに!」
モニカは口元を拭い去ることもなく、パーティーから姿を消した。
乱暴に開け放たれた音だけが会場に響いていた。
貴族平民関係なく、ここに居る多くの若者は学園の卒業生たち。
毎年学園から贈られる最後のパーティーに、羽目を外すものも少なくはない。
会場は喧騒により賑わっておかしくもないが静寂に包まれていた。
「モニカ・ベディラリーヌ侯爵令嬢。お前との婚約を破棄させてもらう!」
彼が発した言葉によって、会場に居る誰もが動きを止めていた。メイルサーリオ公爵家のディオール。
触らぬ神に祟りなしと、この日に限って婚約者であるはずのモニカにエスコートをしていなかったことで周囲からは遠巻きにされていた人物。
なにより、彼の隣には真紅のドレスに身を包んだ女性がいて、さも見せつけるかのように腰に手を当てている。
「聞いているのか!」
指を差され、そんな事をされてただ黙っているはずもない女性に周囲が注目していた。
モニカは手に持っていたワイングラスをグイっと一気に飲み干し、大きな音を立てることもなく静かにテーブルに置く。
彼女が一歩、また一歩と彼に近づき、参加していた誰もが固唾を飲み、彼女の行動に釘付けだった。
モニカは、スカートの両端を広げ膝をついた。その動作にディオールは満面の笑みを浮かべる。
まるで、勝ち誇るような顔をしていたディオールだったが、モニカから向けられた満面の笑みに動揺を隠せないでいた。
「婚約破棄……ですか。誠にありがとうございます」
モニカはそう言い放ち、ディオールに背を向けて歩き出す。
給仕をしていた男性からワインボトルを奪い、あろうことかそのまま口をつけゴクゴクを飲み、ワインは口から溢れる。
プハッと吐息を漏らすと、ディオールを睨みつける。
「お幸せに!」
モニカは口元を拭い去ることもなく、パーティーから姿を消した。
乱暴に開け放たれた音だけが会場に響いていた。
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