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強者討伐 失われた武器

263 強者アスモ 1

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 魔物の数は下へ進むたびに、次第に増えていた。
 未だ強者と遭遇していない事が救いでしかない。

 迷路ということもあり通路はかなり狭く、五人並ぶ程度しか幅がないため、もし現れたとして逃げようにも、この場所は迷路になっている。
 場合によっては逃げ道が簡単に断たれる可能性がある。
 索敵をしているとはいえ、迷路を全て把握できるはずもないし、現状ですらこの有様だ。

「この場合、また最下層だといいんだけどな。今で四階層か?」

 魔物の変化もなく、迷路ということもあって、マップの全体が覚えづらく現時点で自分が何階層にいるのかすら判断が難しい。
 そして、魔物も大した事はないが、魔物に向けて風球を飛ばす。これまでと違ってはっきり言って順路を考えて飛ばす必要があるため億劫になる。
 
 索敵で地形がわかるのに、階段表示をなんとか出来ないものか?
 ここが解消されればこれから先のダンジョン攻略も楽になってくるはず。
 ゲームのように、階段マークのアイコンなんて便利なものはないし、自分が探索済みだとわかるようなこともできない。

「ここは行ったか? いや、こっちだったか?」

 小部屋すら無いために、目印にできるような位置付けもないので、ここの階層だけでも何時間もかかっている。
 今更ながら、本当に今更だったが、紙を取り出し迷路の構成を書き上げていく。今までのダンジョンであれば、ギミックを除いて特に問題なく理解できていた。

 だから、迷路だろうと問題ないと思っていたのだけどな……階層が下へ行くにつれて広くなっていると想像してなかった。三階層までは運良く階段を見つけたことで、多少の時間がかかった程度で済んだ。
 袋小路に辿り着くと、バツの印をつけていく。

「なんで最初からこれをしなかったのだろうか」

 それから、何日も時間が過ぎていき、ようやく最下層に辿り着いた。
 強者がいるダンジョンはどこも複雑すぎないか? いや、ベルフェゴルはそうでもなかったか……強者のアスモが上空から出迎えてくれていた。
 アスモとは違い翼もなしに浮いているのなら、俺と同じように浮遊魔法を使っているということか?

「だけどな……俺が疲れていると思ったら大間違いだからな」

 アスタロトの時は、ギミックに気を取られ休憩を疎かにしていた。あの時のこともあって、下へ降りる前にきちんと休息をとっていた。
 強者を倒す度に、倒れてばかりもいられない。以前よりもレベルは上がっているし、魔法効果も確実に上がっている。
 そして、未だ扱いづらいドゥームブレイドを使わないと思っていたこと。
 弱点を克服していく俺に、死角はない!

「ニンゲン ヒヒッ ニンゲン」

 ただのおまけボスにもかからわずアイツラは一体何なんだ? どいつもこいつもやたらと人間を連呼しているが、何の関係がある?
 ネタでしかないあの武器が、失われた武器なんて大層な呼ばれ方をしている。

 それを集めて何が起こる?
 だけど、アイツラ強者を野放しにすれば、多くの民が殺され貴族たちが何処まで対抗できるか分からない。

「アスモか……お前のことはあまり覚えていないな」

 随分時間が経っているから、忘れているということはあるのだが……強者を倒せば討伐報酬としてアイテムが手に入る。
 攻撃力だけは一見有効そうだけど、実際は全ての武器に何かしらのデメリットが有る。

 アスモから手に入る武器は、聖剣エクスカリバー。
 RPGでは定番とも言える武器で攻撃力も高く、ステータスも上昇する一級品。
 しかしデメリットが大きすぎて、まるで使い物にならない。

 武器よりも、アスモはどうだったか……アスモと戦えるのは終盤あたりになるので、この頃になるとそれなりに装備が揃ってくる。
 確か……対応していなくても倒せるほどに、アスモ自体あまり強く無かった気がする。

 攻略情報でも最弱と書かれていた……と思う。

 しかし、この世界の強者は随分と変わっている。
 最初の出会うあのベルフェゴルですら、あの強さだった。
 それに、今のように声を発することも当然なかったし、最下層で待ち構えることもなかった。強者は必ず索敵コマンドをしないと出現することはない。

 この世界では、強者のいるダンジョンは眷属が居て、アスタロトやアスモのように最下層で待っていることもない。
 やはり、ゲームと現実の違いというわけか?

「今そんな事を考えていた所であまり意味はない……よな?」
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