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強者討伐 失われた武器

261 迷路の危険性 1

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 父上からの思いがけない言葉に、一瞬何を言ったのか理解できなかった。

「魔人?」

「英気を養いすぎて呆けているのかな? 緑色をした魔物が出現したらしい。君が言っていた話によく似ているよね?」

 緑? 強者の眷属は色分けをされているけど……。
 そんな設定無かったから、どの強者なのか分からないな。
 今度はどんな特殊能力を持っているのか……考えただけでげんなりしてくるな。
 魔法無効に、防御魔法無効。
 今度は一体何なんだ?

「アレス? 聴いているのかアレス!」

「すみません。少し考え事をしていました。それで場所は何処ですか?」

 ローバン南部にある、メルトと名前がつけられたダンジョン。
 その名前に覚えがある。
 そのダンジョンの近くに街があって、そこへ行けるようになるのはゲームであればかなり後半になる。

 今は二年の夏になるんだよな……九月からは行き先が大量に増えて困りはしたけど、そこは三年の時に行く所だったか?
 思い出そうにも、そういう細かな所はだんだんと薄れているので、なかなか思い出すことが出来ない。

 行った覚えはあると思う。
 かなり良い装備だったか、経験値稼ぎが目的だったのか……。

「アレスは英気も十二分に、養えているのだから何も問題はないよね?」

「そ、そうですね。明日にでも出立します」

「おや。私はてっきり今から行くものだと思っていたよ」

 いくら何でも、アレだけこき使われたのに、今からダンジョンに行けっていうのかよ。
 この屋敷には俺を擁護してくれる人間は居ないのかよ!

「もちろん冗談だけどね。ミーア嬢たちには私から説明しておくよ。彼女たちのことは安心していいけど……」

「なんですか?」

「いや、何でも無いよ。ニックには、伝えておくから君はもう休みなさい」

 なんだろうあの含みは……絶対ろくでもないことだろうけど。
 また強者が相手か、分かっていることとは言え、やはり一人だとかなりつらいな。とはいえ、強者から得られる武器はかなりの有効性もある。
 ミーアたちにとって、今後を左右する武器だと良いな。

 朝になると食堂のテーブルには、ニック達によって大量に作られた料理が木箱に納められていた。
 皆に感謝をしながら収納していく。
 しかし、いくら何でも夜通しでこんな事をさせる父上が悪いな。これだけの料理を作っていたことで、へとへとになっているメイド達。
 でも、昨日みたいに怒られることもないが……あの、メイド長さんなんでしょうか?

「アレス様」

「は、はい」

「あまりご無理をなさらないようにしてくださいね」

「あ、ああ。それは分かっているつもりだ」

「それと、食べ過ぎはダメですよ。良いですね?」

 い、いや子供じゃないんだからさ、腰に手を当てて人差し指を出さなくてもいいだろ。
 そういや昔、こんなふうにメイルからされた気がする。

「分かっている。皆ありがとう。それじゃ行ってくるよ」

「お気をつけて」

 そんな彼女の姿を見て思い出したけど、アレってメイルに怒られた時か。
 あんな事は最初で最後だよな。
 この世界のことを知らず、子供の時の話だ。セドラをからかうためにテーブルの下に隠れていたまでは良かった。

 頃合いを見て、その場から出ようとしたのだが……たまたま、そのテーブルのシーツを変えるために来ていた、メイルのスカートの中に突入したんだよな。
 あの時も今のようにして、こっぴどく怒られたものだ。さっきのような優しい感じは皆無だったけどな。

「それじゃ、アレス。気をつけていくんだよ」

「これは……兄上が持っていた」

「貸してあげるよ。だから、ちゃんと返しに来るんだ」

 兄上が普段から使っている剣。この剣で何度も色々とやられていたよな。
 それにしても、そんな事を言われると死亡フラグにしか思えない。出来ることなら、丁重にお断りをしたいところだが、そんな雰囲気でもないよな。

「分かりました。ですが、俺の場合また折れるかもしれませんよ」

「そうなったとしても別に構わないよ。その剣が折れたことで、アレスが無事だったらそれで良いんだ」

「兄上……では、お借りします」

 剣を受け取り、空に向かって上昇する。
 母上と姉上がテラスから手を振っている。俺も手を振り返し、エアシールドを展開して目的地へ速度を上げて飛んでいく。
 今日が曇りで良かった。昨日みたいな晴れの日だとつらい。

「ここだな……中に入ってみれば分かるか」
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