141 / 310
ラカトリア学園 高等部
140 英雄の末路 1
しおりを挟む
「お、お待ち下さい。我々は貴方様と争うつもりはございません」
ダンジョンの周りにこれだけの冒険者が待ち構えていたことに、俺は敵意を顕にしていた。
しかし、俺に対しての物言いからして、何処かの私兵なのか?
父上の私兵ではないようだけど……どうなっているんだ?
「油断させるというのなら、俺には通用しないぞ?」
声を掛けてきた人は、冒険者のような格好をしていたが、あの時のような私兵とは違い高圧的な態度はなかった。しかし、俺のことを知っている時点で、ここに居る兵士を信用できるとも思えない。シールドを展開し、剣を構える。
彼等は両手を上げて何度も首を振っていた。
「私達は、バセルトンに所属している冒険者です。貴方様をお迎えに上がるようにと、公爵様より依頼されたのです」
「公爵様? それは、バセルトン公爵か?」
俺の言葉に首を何度も縦に振っている。
バセルトン公爵と言ったら、ハルトの父親ってことだよな?
そんな人が、何でわざわざ俺の帰りを待っていた?
考えられるのは俺を始末するということか?
だとするのなら、この程度の人数で俺とやり合うつもりなのか?
「これだけの数で俺を待ち伏せていたんだ。身構えるぐらい当然だろう? 中には剣を構えようとしているものも居る。この場合俺はどうすればいいんだ?」
そういうと、俺に話しかけた人は慌ててここにいる人達の武装を解除して、俺の前に膝をつく。
大剣を解除するが、シールドまで解除するつもりはない。
「はぁ、ありがとうございます?」
「それで? 俺を待っていたというのはどういうことなんだ?」
「はい、ご説明します」
この場所は父上から行くように言われた場所だ。
兵士の話では、俺がダンジョンに籠もっている間にあの事件は解決したらしい。
この場所は、上位アンデッドが居るということで、バセルトン公爵によって応援に来ていたというのだ。
この人達が言っていることが本当なら、ハルトの父親は白というわけか?
用意されていた馬車に一人で乗せられ、しばらく揺られていると馬車はドリアン男爵の屋敷で止まる。
到着早々に兄上からは、今すぐに風呂に入るように言われる。
無理やり風呂に入らされ、用意されていた服を着て身綺麗に整えられたのだが……一体何のつもりなんだ?
「あ、兄上?」
兄上に、肩を掴まれると下へと力を込められる。身綺麗にし、正装をしている俺が、なぜか三人の前で正座を強要される。
椅子があるというのに、ここでの最も功績を上げているのに、それに命令を全て達成した俺に何で?
前方には父上。右側には母上、反対には兄上が立ち、身動きの一つもできなかった。
「ガドール。後ろを固めてくれないかな?」
「良いだろう」
ガドール……どことなくハルトに似ていなくもない。
だけど、ハルトよりもでかい体が俺の後ろに立ち、腕を組んで俺を見下ろしている。
理由はよくわからないが……かなりご立腹なご様子というのだけは理解できた。
「あ、あの……」
俺は左手を小さく上げ発言を求めた。
「なんだい?」
「その、お話をしたいのは山々なんですが……」
「この状況で言えるものなら言ってごらん。アレス君?」
あ、これなんかヤバいやつだ。
この状況から逃げたいから、疲れているから寝たいなんて……絶対に言ったら殺さる。兄上は剣から手を離そうとしていない。
二人からは、静かな殺気をずっと当てられている。
つまり、何時でも殺れるというサインだろう。
俺がこの世界に来た頃は……兄上はもっと優しくて、こういう場合はすぐに庇ってくれた。
父上も母上も、俺が頑張る姿を何時も応援してくれた。何時からこんな事になったのだろうか?
父上は、俺に対して敢えて『君』付けをしているのだから、恐らく今までにないほどの絶対にやばいやつだ。
しかし、どういうことなんだ?
俺は言われた通りに父上の指示に従った。三つのダンジョンを攻略している。
褒められはしても、怒られるようなことはしていない。
それとも、予想以上に時間が経っていたから怒られるのか? 例えそうだとしてもだ、ダンジョン攻略は貴族にとっても褒められるもののはず。と、思いたい所だけど……現実はあまりにも無情すぎる。
「おや、言えないのかな? それとも何でこんな事になっているのか分からないの?」
「考えられるのは一つだけ……」
「いいよ。話して」
「攻略に時間がかかり過ぎてすみませんでした!」
素直に謝ることにした。
俺はそのまま頭を下げると、兄上がその頭に足を置いた。体重を掛けてこなかったが、俺の発言は何かが違うらしい。
重くはないのだけどグリグリはせめて止めてください。
「えっと、えっと……そうだった。こ、これを、ダンジョン攻略のアイテムです」
「何かしらこれは?」
さっき拾ったドクロの指輪を差し出すと、今度は母上からその手を踏みつけられる。指輪は床に転がり、ドクロが俺と目が合うように転がる。その目のくぼみはあざ笑っているかのようだった。
もしかして、この指輪の呪いじゃないのか?
兄上ならまだしも、あの母上ですらこんな事をするはずがない。
というか、何で母上がここに居るんだ? 俺が入って、というよりもこの屋敷から出て、何日経っているのだろうか?
十日は無いよな? 二週間?
「貴方という子は……何処で何を間違えたというのかしら」
え? 何? 俺の人格批判なの?
何時になったら足をどけてくれると言うんだ?
母上、あのですね。俺的にはそういう趣味がなくて絶対に体重を乗せないでね。それは、踏むじゃなくて刺さるだから……どうせなら、つま先でも対して変わらないか?
「ところで、もう無いのかな?」
「え……」
「本当にこれでいいの? それと、いつも言っているよね。目を見て話そうねって」
「はい……」
この状況を見て何を言っているんだよ!
えっと、何が他にある?
ダンジョンの周りにこれだけの冒険者が待ち構えていたことに、俺は敵意を顕にしていた。
しかし、俺に対しての物言いからして、何処かの私兵なのか?
父上の私兵ではないようだけど……どうなっているんだ?
「油断させるというのなら、俺には通用しないぞ?」
声を掛けてきた人は、冒険者のような格好をしていたが、あの時のような私兵とは違い高圧的な態度はなかった。しかし、俺のことを知っている時点で、ここに居る兵士を信用できるとも思えない。シールドを展開し、剣を構える。
彼等は両手を上げて何度も首を振っていた。
「私達は、バセルトンに所属している冒険者です。貴方様をお迎えに上がるようにと、公爵様より依頼されたのです」
「公爵様? それは、バセルトン公爵か?」
俺の言葉に首を何度も縦に振っている。
バセルトン公爵と言ったら、ハルトの父親ってことだよな?
そんな人が、何でわざわざ俺の帰りを待っていた?
考えられるのは俺を始末するということか?
だとするのなら、この程度の人数で俺とやり合うつもりなのか?
「これだけの数で俺を待ち伏せていたんだ。身構えるぐらい当然だろう? 中には剣を構えようとしているものも居る。この場合俺はどうすればいいんだ?」
そういうと、俺に話しかけた人は慌ててここにいる人達の武装を解除して、俺の前に膝をつく。
大剣を解除するが、シールドまで解除するつもりはない。
「はぁ、ありがとうございます?」
「それで? 俺を待っていたというのはどういうことなんだ?」
「はい、ご説明します」
この場所は父上から行くように言われた場所だ。
兵士の話では、俺がダンジョンに籠もっている間にあの事件は解決したらしい。
この場所は、上位アンデッドが居るということで、バセルトン公爵によって応援に来ていたというのだ。
この人達が言っていることが本当なら、ハルトの父親は白というわけか?
用意されていた馬車に一人で乗せられ、しばらく揺られていると馬車はドリアン男爵の屋敷で止まる。
到着早々に兄上からは、今すぐに風呂に入るように言われる。
無理やり風呂に入らされ、用意されていた服を着て身綺麗に整えられたのだが……一体何のつもりなんだ?
「あ、兄上?」
兄上に、肩を掴まれると下へと力を込められる。身綺麗にし、正装をしている俺が、なぜか三人の前で正座を強要される。
椅子があるというのに、ここでの最も功績を上げているのに、それに命令を全て達成した俺に何で?
前方には父上。右側には母上、反対には兄上が立ち、身動きの一つもできなかった。
「ガドール。後ろを固めてくれないかな?」
「良いだろう」
ガドール……どことなくハルトに似ていなくもない。
だけど、ハルトよりもでかい体が俺の後ろに立ち、腕を組んで俺を見下ろしている。
理由はよくわからないが……かなりご立腹なご様子というのだけは理解できた。
「あ、あの……」
俺は左手を小さく上げ発言を求めた。
「なんだい?」
「その、お話をしたいのは山々なんですが……」
「この状況で言えるものなら言ってごらん。アレス君?」
あ、これなんかヤバいやつだ。
この状況から逃げたいから、疲れているから寝たいなんて……絶対に言ったら殺さる。兄上は剣から手を離そうとしていない。
二人からは、静かな殺気をずっと当てられている。
つまり、何時でも殺れるというサインだろう。
俺がこの世界に来た頃は……兄上はもっと優しくて、こういう場合はすぐに庇ってくれた。
父上も母上も、俺が頑張る姿を何時も応援してくれた。何時からこんな事になったのだろうか?
父上は、俺に対して敢えて『君』付けをしているのだから、恐らく今までにないほどの絶対にやばいやつだ。
しかし、どういうことなんだ?
俺は言われた通りに父上の指示に従った。三つのダンジョンを攻略している。
褒められはしても、怒られるようなことはしていない。
それとも、予想以上に時間が経っていたから怒られるのか? 例えそうだとしてもだ、ダンジョン攻略は貴族にとっても褒められるもののはず。と、思いたい所だけど……現実はあまりにも無情すぎる。
「おや、言えないのかな? それとも何でこんな事になっているのか分からないの?」
「考えられるのは一つだけ……」
「いいよ。話して」
「攻略に時間がかかり過ぎてすみませんでした!」
素直に謝ることにした。
俺はそのまま頭を下げると、兄上がその頭に足を置いた。体重を掛けてこなかったが、俺の発言は何かが違うらしい。
重くはないのだけどグリグリはせめて止めてください。
「えっと、えっと……そうだった。こ、これを、ダンジョン攻略のアイテムです」
「何かしらこれは?」
さっき拾ったドクロの指輪を差し出すと、今度は母上からその手を踏みつけられる。指輪は床に転がり、ドクロが俺と目が合うように転がる。その目のくぼみはあざ笑っているかのようだった。
もしかして、この指輪の呪いじゃないのか?
兄上ならまだしも、あの母上ですらこんな事をするはずがない。
というか、何で母上がここに居るんだ? 俺が入って、というよりもこの屋敷から出て、何日経っているのだろうか?
十日は無いよな? 二週間?
「貴方という子は……何処で何を間違えたというのかしら」
え? 何? 俺の人格批判なの?
何時になったら足をどけてくれると言うんだ?
母上、あのですね。俺的にはそういう趣味がなくて絶対に体重を乗せないでね。それは、踏むじゃなくて刺さるだから……どうせなら、つま先でも対して変わらないか?
「ところで、もう無いのかな?」
「え……」
「本当にこれでいいの? それと、いつも言っているよね。目を見て話そうねって」
「はい……」
この状況を見て何を言っているんだよ!
えっと、何が他にある?
0
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。
八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。
彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。
しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。
――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。
その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
よい異世界召喚に巻き込まれましたが、殺された後でした。
克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。
猫屋敷翔平は鍼灸整骨院を自営していたが、身勝手な母と弟と伯母に騙されて借金を肩代わりさせられた上に、陰で悪い評判を流されて鍼灸整骨院を廃業した。人間不信となり破産宣告をして田舎を捨てて地方都市に移住し、大政党を支配下に置く新興宗教組織に入信して政党と新興宗教の会費を払い、政党新聞と新興宗教新聞を購入する事、更には新興宗教幹部が経営するワンルームマンションに入居する事を条件に、生活保護申請を政党地方議員に代行してもらう。
人間不信の対人恐怖症となり、保護猫サクラと引き籠り生活をしていたが、老猫サクラが衰弱したので、急いで動物病院に行こうとしたところを反社に脅迫されていたところ、愛猫サクラが主人を助けようと爪を立てた。
ケガさせられた反社は激高してサクラを蹴り殺し、猫屋敷翔平にも殴りけるの暴行を繰り返していたところを、古武術の大会のために長野県から出てきていた四人の学生が助けている所に異世界召喚される。
勇気ある学生達は魔物被害に苦しんでいた異世界に召喚され、猫屋敷とサクラも一緒に召喚された。
学生達は異世界召喚特典で強くなるが、死んで身体と幽体が分離していた猫屋敷とサクラはとんでもない特典を手に入れていた。
だが人間不信で対人恐怖症になっている猫屋敷は、それを隠して安全な場所での隠棲を希望する。
人のいい学生達と国王は、罪滅ぼしに魔物は出ないが生活するのが苦しい極寒の北方に領地と支援を与えて移住させてくれるが、サクラの暴走と慈愛、孤児院の子供達を見捨てられない母性によって人助けを始める。
特に自滅願望の古代氷竜アリステアに、猫屋敷とサクラが同時に憑依した事で、魂が猫の自由人気質に染まり、た人間嫌いと対人恐怖症が改善され、陰から恩人の学生徒達と孤児達、更には難民まで助けるようになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる