108 / 310
ラカトリア学園 高等部
107 ルーヴィア令嬢 1
しおりを挟む
八月も半ばが過ぎ、俺はようやく子爵の屋敷まできていた。
上空から、街を見下ろし、今すぐにでも、この門を破壊し手入れの行き届いた屋敷さえも破壊の衝動にかられていた。
だが、ここの門を守る兵士も、懸命に中で働いている使用人もまた民であり、父上の名を汚さないためにも必死で湧き上がってくる怒りを抑え込んでいた。
最初から偵察に来るつもりだった。
夜になってこっそりと忍び込み、何かの情報がないかと考えていた。
しかし……俺はそんな事をする余裕が、無くなってしまった。
「なんだ!?」
突然現れた俺に向かって、剣を抜く兵士。
「ローバン公爵家。アレス・ローバンだ。ルーヴィア子爵に会わせろ。会うつもりがないのであれば、このまま強行する」
風魔法を使い、兵士が向けている剣が切り落とされる。
もう一人は剣を抜くのをやめ、俺に近づいてくる。
「ローバン公爵家!? 只今、子爵様にお伝えいたします。何卒お待ち下さい」
門番が屋敷に入るのを見届け、しばらく待っていると、屋敷から一人の見覚えのある女性の姿が現れた。
上空からこいつの姿は見えていた。
お前は知っていたというのか? 知っていても、平然とそんな格好をしていられるというのか?
お前は……そういう人間なのか?
「俺は子爵に会わせろと言ったんだ。お前に用はない」
「なっ、一体どういうつもり?」
間近で見るレフリアの姿を見て、身なりは学園にいた時と変わらず綺麗であり、始めて見た彼女の美しいドレス姿に殺意さえ抱く。
彼女は子爵令嬢であり、その父親はこのあたりの街を管理する子爵の娘。
お前が来ている物、お前が生きる全ての金は、何処から来ているのかを分かっているのか?
分かっていて……分かっていながら……?
「門番には、子爵に会わせろと言ったはずだが?」
「いきなりお父様にだなんて、一体何があったというのよ」
「話が通じないのであれば、強行するとも伝えた」
両手に氷の剣を作り出し、レフリアへと視線を合わせていくとみるみる青ざめていた。
俺の強さを知っているのだから当然とも言える。
「立ち塞がるな。分かっているだろ? この俺を、お前程度の力でどうこうできる相手ではないと」
「なんで、こんな事を……なんで……」
「そこをどけ。どかないのなら……」
レフリアに剣を向けると、氷の剣に一撃の剣撃を放たれる。
しかし、あの程度の剣では攻撃してきた剣身は砕けるのは当たり前だ。
折れた剣を構え、レフリアとの間に執事が割って入ってきた。
「お嬢様、お逃げください。貴方様は、私めの命で留めて頂きたい」
「執事なら、俺のことを聞いていたんだろ? これ以上俺を怒らせるなよ。いい加減子爵を出せ、お前達に用はないと言っている!」
上空に巨大な槍が作り出し、今はまだ当たらないように、地面へと深く突き刺さる。
「くっ、ふぅぅぅうう」
怒りでどうにかなりそうだ……魔力をぶつけ、その巨大な槍が粉々に砕け散る。
レフリアは、腰を落としたまま俺を震えながら見ている。
「一体……どうしたのと言うの? アンタがこんな事を……なんで!?」
「ふうぅぅ。黙れ! 良いから黙ってろ!」
怒りを堪え続けるのも正直限界に近い。索敵を展開し屋敷の全て見渡す。
探していると、視線を感じた先には窓からこちらの様子を伺っている。
なるほどな、向こうからは出向くつもりはないらしいな……。
俺と目が会うと、律儀にも礼をしていた。
「お嬢様。さ、早く」
「子爵は見つけた、中に入らせてもらうぞ」
剣を解除して、屋敷の中へと足を踏み入れた。庭と同様に手入れも行き届き、豪華な装飾も飾られている。そして、男爵の屋敷を思い出す。
階段を飛び越え、子爵の居た部屋のドアを蹴り飛ばして開け放つ。
「お前がルーヴィア子爵だな」
上空から、街を見下ろし、今すぐにでも、この門を破壊し手入れの行き届いた屋敷さえも破壊の衝動にかられていた。
だが、ここの門を守る兵士も、懸命に中で働いている使用人もまた民であり、父上の名を汚さないためにも必死で湧き上がってくる怒りを抑え込んでいた。
最初から偵察に来るつもりだった。
夜になってこっそりと忍び込み、何かの情報がないかと考えていた。
しかし……俺はそんな事をする余裕が、無くなってしまった。
「なんだ!?」
突然現れた俺に向かって、剣を抜く兵士。
「ローバン公爵家。アレス・ローバンだ。ルーヴィア子爵に会わせろ。会うつもりがないのであれば、このまま強行する」
風魔法を使い、兵士が向けている剣が切り落とされる。
もう一人は剣を抜くのをやめ、俺に近づいてくる。
「ローバン公爵家!? 只今、子爵様にお伝えいたします。何卒お待ち下さい」
門番が屋敷に入るのを見届け、しばらく待っていると、屋敷から一人の見覚えのある女性の姿が現れた。
上空からこいつの姿は見えていた。
お前は知っていたというのか? 知っていても、平然とそんな格好をしていられるというのか?
お前は……そういう人間なのか?
「俺は子爵に会わせろと言ったんだ。お前に用はない」
「なっ、一体どういうつもり?」
間近で見るレフリアの姿を見て、身なりは学園にいた時と変わらず綺麗であり、始めて見た彼女の美しいドレス姿に殺意さえ抱く。
彼女は子爵令嬢であり、その父親はこのあたりの街を管理する子爵の娘。
お前が来ている物、お前が生きる全ての金は、何処から来ているのかを分かっているのか?
分かっていて……分かっていながら……?
「門番には、子爵に会わせろと言ったはずだが?」
「いきなりお父様にだなんて、一体何があったというのよ」
「話が通じないのであれば、強行するとも伝えた」
両手に氷の剣を作り出し、レフリアへと視線を合わせていくとみるみる青ざめていた。
俺の強さを知っているのだから当然とも言える。
「立ち塞がるな。分かっているだろ? この俺を、お前程度の力でどうこうできる相手ではないと」
「なんで、こんな事を……なんで……」
「そこをどけ。どかないのなら……」
レフリアに剣を向けると、氷の剣に一撃の剣撃を放たれる。
しかし、あの程度の剣では攻撃してきた剣身は砕けるのは当たり前だ。
折れた剣を構え、レフリアとの間に執事が割って入ってきた。
「お嬢様、お逃げください。貴方様は、私めの命で留めて頂きたい」
「執事なら、俺のことを聞いていたんだろ? これ以上俺を怒らせるなよ。いい加減子爵を出せ、お前達に用はないと言っている!」
上空に巨大な槍が作り出し、今はまだ当たらないように、地面へと深く突き刺さる。
「くっ、ふぅぅぅうう」
怒りでどうにかなりそうだ……魔力をぶつけ、その巨大な槍が粉々に砕け散る。
レフリアは、腰を落としたまま俺を震えながら見ている。
「一体……どうしたのと言うの? アンタがこんな事を……なんで!?」
「ふうぅぅ。黙れ! 良いから黙ってろ!」
怒りを堪え続けるのも正直限界に近い。索敵を展開し屋敷の全て見渡す。
探していると、視線を感じた先には窓からこちらの様子を伺っている。
なるほどな、向こうからは出向くつもりはないらしいな……。
俺と目が会うと、律儀にも礼をしていた。
「お嬢様。さ、早く」
「子爵は見つけた、中に入らせてもらうぞ」
剣を解除して、屋敷の中へと足を踏み入れた。庭と同様に手入れも行き届き、豪華な装飾も飾られている。そして、男爵の屋敷を思い出す。
階段を飛び越え、子爵の居た部屋のドアを蹴り飛ばして開け放つ。
「お前がルーヴィア子爵だな」
0
お気に入りに追加
552
あなたにおすすめの小説
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。
八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。
彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。
しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。
――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。
その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
よい異世界召喚に巻き込まれましたが、殺された後でした。
克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。
猫屋敷翔平は鍼灸整骨院を自営していたが、身勝手な母と弟と伯母に騙されて借金を肩代わりさせられた上に、陰で悪い評判を流されて鍼灸整骨院を廃業した。人間不信となり破産宣告をして田舎を捨てて地方都市に移住し、大政党を支配下に置く新興宗教組織に入信して政党と新興宗教の会費を払い、政党新聞と新興宗教新聞を購入する事、更には新興宗教幹部が経営するワンルームマンションに入居する事を条件に、生活保護申請を政党地方議員に代行してもらう。
人間不信の対人恐怖症となり、保護猫サクラと引き籠り生活をしていたが、老猫サクラが衰弱したので、急いで動物病院に行こうとしたところを反社に脅迫されていたところ、愛猫サクラが主人を助けようと爪を立てた。
ケガさせられた反社は激高してサクラを蹴り殺し、猫屋敷翔平にも殴りけるの暴行を繰り返していたところを、古武術の大会のために長野県から出てきていた四人の学生が助けている所に異世界召喚される。
勇気ある学生達は魔物被害に苦しんでいた異世界に召喚され、猫屋敷とサクラも一緒に召喚された。
学生達は異世界召喚特典で強くなるが、死んで身体と幽体が分離していた猫屋敷とサクラはとんでもない特典を手に入れていた。
だが人間不信で対人恐怖症になっている猫屋敷は、それを隠して安全な場所での隠棲を希望する。
人のいい学生達と国王は、罪滅ぼしに魔物は出ないが生活するのが苦しい極寒の北方に領地と支援を与えて移住させてくれるが、サクラの暴走と慈愛、孤児院の子供達を見捨てられない母性によって人助けを始める。
特に自滅願望の古代氷竜アリステアに、猫屋敷とサクラが同時に憑依した事で、魂が猫の自由人気質に染まり、た人間嫌いと対人恐怖症が改善され、陰から恩人の学生徒達と孤児達、更には難民まで助けるようになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる