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転生した異世界の生活
12 ダンジョンと冒険者 1
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屋敷の外から怒号が響きその声によって、俺は起こされていた。
寝ぼけ眼をこすり、ベッドの上に立ち窓の外をぼんやりと眺める。玄関の周りには数台の馬車と、多くの人が屋敷に押しかけているようにも見えていた。
今までに無いその異様な光景に、欠伸をする前に意識が急速にはっきりとしていった。
一瞬は野党かと思ってしまったが、ローバン公爵家には多くの私兵もいて、屋敷を取り囲む大きな門、街の警備等にも対応している。
それを飛び越えてこんな事になるとは到底思えない。
しかし、今いる人達は周りにいる私兵とは違い、統一感もない服装でありながら、各々が武器を携えていた。
隠すこともない武器を前にして、門番が彼らを通しているということになる。
よくよく見てみると、集団の中心には父上の姿が僅かに見えていた。
「あれは父上? やっぱり父上にしか見えない」
窓を何とか少しだけ開けると、言葉が大きく聞こえてくるが……公爵である父上に対しても、低姿勢であるものの言葉遣いは少し乱暴でもある。
その程度のことを、あの父上が声を荒げて指摘するとは思えない。しかし、そんな彼らに対して何時もとは明らかに違う口調で、庭に集まっている人たちに命令を下している。
温厚そのものであるのに、一体何があったというのだろうか?
「え? 今なんて言ったんだ?」
かろうじて聞き取れた声の中に『ダンジョン』という単語が何度も飛び交っていた。
まさかと何度も、頭を振って湧き上がろうとするのを何とか留めていた。
異世界で、ダンジョンとは……俺はそんな時期に訪れることもなく過ごしてきた。だから、今更そんな事に振り回されることもないはずだ。
「おや、お目覚めになられましたか?」
「おはよう、セドラ。父上達が何か慌てているみたいだけど何かあったの?」
「おはようございます。なるほど、あの者たちの声にびっくりされたのですね」」
様子を見に来ていた、セドラは別の窓を開け放ちその様子を一緒に見ていた。
父上が馬に飛び乗ると、次々と馬車に乗り込みその後へと続いて行く。
「あの様子からしてただ事ではないと思うのだけど……それにダンジョンって一体何なの?」
ここは異世界というのは理解している。だけど、ゲームのようなモンスターの話なんて聞いたこともない。
あの人達は誰もが武器を持っていた、剣、槍、斧。
そういった武器が何のために必要なのか? 何と戦おうとしているのか?
何がそれほどまでに慌てふためくことになるのか?
しかし、好奇心ではなく、貴族の息子として知る必要があると思っていた。
「アレス様には、そろそろお話をしてもよろしいかもしれません。東方の山間に、ダンジョンが出現したようなのです」
「ダンジョンが出現?」
ダンジョンは洞窟ということだよな? 発見されたではなくて出現とセドラは言った。
この世界ではそれが当たり前なのか?
そんな事を考えていると、セドラは俺を抱えて床へと降ろす。いつものように着替えをさせられるのだろうけど、腰を折り俺の目線に合わせていた。
「せっかくなので、朝食を頂きましたら、今日はダンジョンの説明から始めましょう」
「いいの?」
「もちろんでございます。アレス様はローバン家のご子息。知っておくのも当然のことなのです」
セドラは俺の先生として、この世界のことを色々教えてくれた。とはいえ、今までは貴族として必要なマナーや礼儀作法に言葉遣い。
だからこそ俺は、そう言った類の物が存在しない世界だと勘違いをしていた。
俺が過ごしてきた時間の中で、今日のように父上が慌てるようなこともなく外出をして、平穏な毎日の中過ごしてきた。
「アレス様。今日の授業はこれまでとは違い、気分を害する可能性もあります。具合が悪くなりましたら何時でも申してくださいませ」
「わかったよ……」
セドラが最初にそう言った意味が、すぐにも理解できるほどに血腥い話が多かった。
この世界においての、ダンジョンというものの存在は俺がよく知る物に近い。
RPGなどのゲームでは定番であって、物語を進めるのに避けては通れない。
しかし、この世界のダンジョンには、魔物の種類や系統と数多くの魔物が確認されている。また、地上にいる野生の獣たちとは違い、ダンジョンの魔物は倒すと塵になって消える。
「ダンジョンが出現と言っていたけど、元からあるものじゃないのか?」
「言葉通り、出現するのです。何もない所でも突然現れるのです。そして……ダンジョンに住む魔物は時間と共にその数を増し、最後にはこの地上にその姿を現すのです」
なぜ父上たちが、あれ程にまで慌てていたのか?
その意味がようやくここで理解することが出来た。ダンジョンは人知れず出現をしている。ダンジョンを発見したとしても、出現した時期が不明であるのならどれだけの魔物が潜んでいるのかを把握することは出来ない。
それだけではなく、長い間ダンジョンが放置され魔物の数が一定数を超えてしまったら、その周辺に住む人達が溢れ出した魔物によって襲撃される。
この現象を魔物の暴走というらしい。
寝ぼけ眼をこすり、ベッドの上に立ち窓の外をぼんやりと眺める。玄関の周りには数台の馬車と、多くの人が屋敷に押しかけているようにも見えていた。
今までに無いその異様な光景に、欠伸をする前に意識が急速にはっきりとしていった。
一瞬は野党かと思ってしまったが、ローバン公爵家には多くの私兵もいて、屋敷を取り囲む大きな門、街の警備等にも対応している。
それを飛び越えてこんな事になるとは到底思えない。
しかし、今いる人達は周りにいる私兵とは違い、統一感もない服装でありながら、各々が武器を携えていた。
隠すこともない武器を前にして、門番が彼らを通しているということになる。
よくよく見てみると、集団の中心には父上の姿が僅かに見えていた。
「あれは父上? やっぱり父上にしか見えない」
窓を何とか少しだけ開けると、言葉が大きく聞こえてくるが……公爵である父上に対しても、低姿勢であるものの言葉遣いは少し乱暴でもある。
その程度のことを、あの父上が声を荒げて指摘するとは思えない。しかし、そんな彼らに対して何時もとは明らかに違う口調で、庭に集まっている人たちに命令を下している。
温厚そのものであるのに、一体何があったというのだろうか?
「え? 今なんて言ったんだ?」
かろうじて聞き取れた声の中に『ダンジョン』という単語が何度も飛び交っていた。
まさかと何度も、頭を振って湧き上がろうとするのを何とか留めていた。
異世界で、ダンジョンとは……俺はそんな時期に訪れることもなく過ごしてきた。だから、今更そんな事に振り回されることもないはずだ。
「おや、お目覚めになられましたか?」
「おはよう、セドラ。父上達が何か慌てているみたいだけど何かあったの?」
「おはようございます。なるほど、あの者たちの声にびっくりされたのですね」」
様子を見に来ていた、セドラは別の窓を開け放ちその様子を一緒に見ていた。
父上が馬に飛び乗ると、次々と馬車に乗り込みその後へと続いて行く。
「あの様子からしてただ事ではないと思うのだけど……それにダンジョンって一体何なの?」
ここは異世界というのは理解している。だけど、ゲームのようなモンスターの話なんて聞いたこともない。
あの人達は誰もが武器を持っていた、剣、槍、斧。
そういった武器が何のために必要なのか? 何と戦おうとしているのか?
何がそれほどまでに慌てふためくことになるのか?
しかし、好奇心ではなく、貴族の息子として知る必要があると思っていた。
「アレス様には、そろそろお話をしてもよろしいかもしれません。東方の山間に、ダンジョンが出現したようなのです」
「ダンジョンが出現?」
ダンジョンは洞窟ということだよな? 発見されたではなくて出現とセドラは言った。
この世界ではそれが当たり前なのか?
そんな事を考えていると、セドラは俺を抱えて床へと降ろす。いつものように着替えをさせられるのだろうけど、腰を折り俺の目線に合わせていた。
「せっかくなので、朝食を頂きましたら、今日はダンジョンの説明から始めましょう」
「いいの?」
「もちろんでございます。アレス様はローバン家のご子息。知っておくのも当然のことなのです」
セドラは俺の先生として、この世界のことを色々教えてくれた。とはいえ、今までは貴族として必要なマナーや礼儀作法に言葉遣い。
だからこそ俺は、そう言った類の物が存在しない世界だと勘違いをしていた。
俺が過ごしてきた時間の中で、今日のように父上が慌てるようなこともなく外出をして、平穏な毎日の中過ごしてきた。
「アレス様。今日の授業はこれまでとは違い、気分を害する可能性もあります。具合が悪くなりましたら何時でも申してくださいませ」
「わかったよ……」
セドラが最初にそう言った意味が、すぐにも理解できるほどに血腥い話が多かった。
この世界においての、ダンジョンというものの存在は俺がよく知る物に近い。
RPGなどのゲームでは定番であって、物語を進めるのに避けては通れない。
しかし、この世界のダンジョンには、魔物の種類や系統と数多くの魔物が確認されている。また、地上にいる野生の獣たちとは違い、ダンジョンの魔物は倒すと塵になって消える。
「ダンジョンが出現と言っていたけど、元からあるものじゃないのか?」
「言葉通り、出現するのです。何もない所でも突然現れるのです。そして……ダンジョンに住む魔物は時間と共にその数を増し、最後にはこの地上にその姿を現すのです」
なぜ父上たちが、あれ程にまで慌てていたのか?
その意味がようやくここで理解することが出来た。ダンジョンは人知れず出現をしている。ダンジョンを発見したとしても、出現した時期が不明であるのならどれだけの魔物が潜んでいるのかを把握することは出来ない。
それだけではなく、長い間ダンジョンが放置され魔物の数が一定数を超えてしまったら、その周辺に住む人達が溢れ出した魔物によって襲撃される。
この現象を魔物の暴走というらしい。
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