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強者討伐 失われた武器
281 アレスと婚約者 2
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父上からも魔法は使うなと言われているし……ミーアの言うことに素直に従っておくべきなんだろうな。
「言いたいことは、なんとなく理解した。でも、それほど遠い距離でもないのだから来てくれるといいのに」
「私だけでは、ご不満でしたか?」
決してそんなことはないのだけど、あの二人が残っている意図がわからない。
というか、悲しそうな顔をして言うなよ。
誰か一人だけ来るよりも、三人が押しかけてくるのが今までのことからすれば当然だと思っていたのだけどな。
「そんなわけ無いだろ?」
俺はベルを鳴らし、ミーアに何か飲み物を用意させる。
「アレス様! いかがなされましたか!?」
あのな、かなり回復しているのを知っているというのに……ミーアに続きセドラの攻撃により、扉の金具はまたしても耐えきれなかったようだった。
ベルを使うたびこれだったら、扉は無い方がいいんじゃないのか?
「もう少し静かにしてくれ。ミーアと俺の分のお茶を頼む」
「かしこまりました。このセドラ、誠心誠意。若奥様のためにご用意いたしますぞ」
突然そんな事を言われ、ミーアは頬に手を当てて恥ずかしそうに俺の方を見ている。
俺にどうしろっていうんだ?
セドラに奴は余計なことを言って俺たちをからかっているのか?
「ミーア、そんな所に立っていないで、こっちに座らないのか?」
ミーアを俺に隣へ座らせ、戻ってきたセドラはかなりご機嫌な表情を浮かべていた。
結婚すればそう呼ばれるのだろうけど、姉上様は何でこの呼ばれ方をしていないんだ?
俺はローバン家を継ぐことはないのにセドラがからかっているだけなのか?
* * *
「ミーアは今頃うまくやっているのかな?」
「大丈夫ですわよ。アレス様のお心にあるのはミーア様唯一人。わたくし達が押しかけるよりも、そのほうが後々出番も回ってきますわ」
ミーアが一人で、アレスの元へと向かわせたのはメアリの提案によるものだった。
あの日アレスはミーアだけを連れ出して、夜空へと逃げる。
その様子をしたから見ていたことで、三人の中で優劣を決めるのが如何に馬鹿げていたのかを思い知らされる。
「最初から分かっていたことなんだけど。私は相手にされていないようで、ちょっと嫌な気持ちになってくる」
パメラは外を眺めふてくされる。
メアリの言ったことは理解していても、気持ちまでもそうなるとは限らない。
屋敷を抜け出しても、アレスの元へと向かいたい気持ちはどうしても胸に残る。
「何を仰っているのですか? アレス様はどれだけご尽力していたのか、パメラ様にはお分かりではないと?」
メアリの殺気立つ声に、パメラは窓に反射しているパメラを見ている。
婚約者にするためにと縁談の為にヘーバイン家に訪れ、ストラーデを解体しパメラの今がある。
しかし、メアリに対してアレスがこれと言って何かをしたわけでもなく、むしろ成り行きでしか無かった。
ルーヴィア家はレフリアとハルトの二人でなんとかなるものの、ロンダリア家はそうは行かなかった。
メアリをどうするかという話に、バセルトン公爵が名乗り出なければここにいることすら叶わなかった。
「ミーア様やわたくしとは違い、貴方はアレス様のご意思で婚約者となられたのですよ?」
「ご、ごめん」
バセルトン公爵家にとって、アレスとの繋がりは放置できないものとなってしまい、メアリは丁度いい手駒として白羽の矢が立てられる。
なによりメアリ自身がアレスに好意があり、それさえも利用されたが何もかも無くしたメアリにとって、バセルトンの養女としてアレスの婚約者になるということは選ばざるを得ない。
「それとも、パメラ様はヘーバイン公爵様の言われるようにミーア様よりも先に事を及ぼすおつもりなのですか?」
「ちが……」
「なるほど、それは一大事ですね。ミーア様が戻られましたら、じっくりと今後の話し合いが必要みたいですね」
「言いたいことは、なんとなく理解した。でも、それほど遠い距離でもないのだから来てくれるといいのに」
「私だけでは、ご不満でしたか?」
決してそんなことはないのだけど、あの二人が残っている意図がわからない。
というか、悲しそうな顔をして言うなよ。
誰か一人だけ来るよりも、三人が押しかけてくるのが今までのことからすれば当然だと思っていたのだけどな。
「そんなわけ無いだろ?」
俺はベルを鳴らし、ミーアに何か飲み物を用意させる。
「アレス様! いかがなされましたか!?」
あのな、かなり回復しているのを知っているというのに……ミーアに続きセドラの攻撃により、扉の金具はまたしても耐えきれなかったようだった。
ベルを使うたびこれだったら、扉は無い方がいいんじゃないのか?
「もう少し静かにしてくれ。ミーアと俺の分のお茶を頼む」
「かしこまりました。このセドラ、誠心誠意。若奥様のためにご用意いたしますぞ」
突然そんな事を言われ、ミーアは頬に手を当てて恥ずかしそうに俺の方を見ている。
俺にどうしろっていうんだ?
セドラに奴は余計なことを言って俺たちをからかっているのか?
「ミーア、そんな所に立っていないで、こっちに座らないのか?」
ミーアを俺に隣へ座らせ、戻ってきたセドラはかなりご機嫌な表情を浮かべていた。
結婚すればそう呼ばれるのだろうけど、姉上様は何でこの呼ばれ方をしていないんだ?
俺はローバン家を継ぐことはないのにセドラがからかっているだけなのか?
* * *
「ミーアは今頃うまくやっているのかな?」
「大丈夫ですわよ。アレス様のお心にあるのはミーア様唯一人。わたくし達が押しかけるよりも、そのほうが後々出番も回ってきますわ」
ミーアが一人で、アレスの元へと向かわせたのはメアリの提案によるものだった。
あの日アレスはミーアだけを連れ出して、夜空へと逃げる。
その様子をしたから見ていたことで、三人の中で優劣を決めるのが如何に馬鹿げていたのかを思い知らされる。
「最初から分かっていたことなんだけど。私は相手にされていないようで、ちょっと嫌な気持ちになってくる」
パメラは外を眺めふてくされる。
メアリの言ったことは理解していても、気持ちまでもそうなるとは限らない。
屋敷を抜け出しても、アレスの元へと向かいたい気持ちはどうしても胸に残る。
「何を仰っているのですか? アレス様はどれだけご尽力していたのか、パメラ様にはお分かりではないと?」
メアリの殺気立つ声に、パメラは窓に反射しているパメラを見ている。
婚約者にするためにと縁談の為にヘーバイン家に訪れ、ストラーデを解体しパメラの今がある。
しかし、メアリに対してアレスがこれと言って何かをしたわけでもなく、むしろ成り行きでしか無かった。
ルーヴィア家はレフリアとハルトの二人でなんとかなるものの、ロンダリア家はそうは行かなかった。
メアリをどうするかという話に、バセルトン公爵が名乗り出なければここにいることすら叶わなかった。
「ミーア様やわたくしとは違い、貴方はアレス様のご意思で婚約者となられたのですよ?」
「ご、ごめん」
バセルトン公爵家にとって、アレスとの繋がりは放置できないものとなってしまい、メアリは丁度いい手駒として白羽の矢が立てられる。
なによりメアリ自身がアレスに好意があり、それさえも利用されたが何もかも無くしたメアリにとって、バセルトンの養女としてアレスの婚約者になるということは選ばざるを得ない。
「それとも、パメラ様はヘーバイン公爵様の言われるようにミーア様よりも先に事を及ぼすおつもりなのですか?」
「ちが……」
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