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強者討伐 失われた武器

213 強者アスタロト 2

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 吹き飛ばされた衝撃によって、壁に正面から叩きつけられる。
 そのまま地面を転がり眼の前には、アスタロトの姿が見え、再度シールドを展開し風の反動を利用して距離を取るが俺の周りには異様な光景が広がっていた。

「な、何なんだ?」

 まさか……召喚を使ったというわけか?
 しかし、どう見ても召喚なんて優しいものではなく、俺が攻撃していたアスタロトの他に、別のアスタロトが出現していた。

「殺すまし。殺すます」

 ダメージを受け、傷だらけになったアスタロトを中心に無傷のアスタロトが四体。
 まるで庇うように陣形をとっている。

「おいおい、冗談だろ?」

 攻撃していたアスタロトは、依然傷を負ったままになっている。
 つまり、分身か分体を使うというわけか?
 索敵を展開すると、悍ましい程の魔力反応に目眩すら感じる。

 五体いる全てのアスタロトの魔力量は同等であり、定番の分身でも分体でも、オリジナルと同じだけの魔力なんて普通はない。
 大体のゲームであれば、分身なら何分の一になり、分体ならその数の分だけ均等になるのが常識だよな……というよりもだ、こんなのはゲームですら無かった。

「お前これだと、まるでチーターじゃねぇかよ」

 腹や背中は、吹き飛ばされたことで痛みが残っている。ただでさえ太っているこの俺を蹴り飛ばすなんて、どんな脚力しているんだ……見るからにそれだけの筋肉は有しているか。

 強化シールドを貼り直し、バーストロンドで手当り次第攻撃をくりだしていく。
 減るどころか、相手の数は増える一方でかなりやばい状況に変わる。
 現状からしてどれが本体なのか探すこともできそうにない。

「「「殺すまし!」」」

 やばい!

 クリムゾンブレイドを具現化して、襲いかかるアスタロトの攻撃を受け流していく。
 アスタロトは自らの拳で攻撃をしてくるため、シールドで防げないが剣で攻撃を弾いていると、向こうには傷が残った。その様子から、物理攻撃が無効でないことが分かった。

「はぁはぁ。いきなり三体で来るとか……馬鹿じゃねぇのか?」

 傷の様子からしても、アイツラは分体と考えたほうがいいようだな。
 しかし、あまりの攻撃の多さに全てに対処できるはずもない。
 しまった……一体いない!

「ぐはっ。なんだと?」

 後ろに回られて攻撃を受けてしまう。
 全方位のシールドを展開していたはずだと言うのに、その攻撃を弾くこともなく俺は攻撃を受けてしまった。
 俺は急いで距離を取りつつ、無数のエアスラッシュを作り出し応戦していく。
 クリムゾンから氷の巨大剣へと変化させ、一気に薙ぎ払う。当たりはしないが、牽制程度にはなった。
 この調子ならまた攻撃を繰り出してくるだろうな。

「はぁはぁ。一体どうしたものか……これなら一度階段へと戻るか?」

 一体だけならまだしも、例えドゥームブレイドだとしても、この数相手に何時まで耐えられるのかわからない。
 あの時エクスプロードが打てたのなら、状況は変わっていたのかもしれない。
 こうなってしまったからにはそう簡単に打たせてはくれないよな。

「強者は最悪な敵だな……」

 アスタロトは、ただ殴ってきただけだと言うのに、シールドは何故か効果がない。
 氷の壁を設置するしか無いか?
 いや、ベルフェゴルのように追いかけてくるのなら、狭い通路で戦ったほうがマシなのか?

「あまり考えている時間もないし……なにより、飛ばされたことで階段はかなり遠いな」

 バーストロンドを放ち、一体のアスタロトが俺の近くへと、爆炎を喰らいつつ向かってくる。
 二重にシールドを展開してその攻撃を正面から防げるはずだった。

「ぐほっ。だりゃ」

 クリムゾンブレイドで薙ぎ払うも、回避をされる。
 今のことから考えると、アイツの特性は防御無効の可能性がある。 
 つまりアレか?
 当たらなければどうということはないってやつか?

「まじかよ……それは絶対に……無理だぞ?」

 全てのアスタロトは、両手を掲げなにかの魔法を作り出そうとしていた。
 防御無視というのなら、あの魔法も恐らく……シールドでは防げないということもありえる。
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