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強者討伐 失われた武器
201 ローバン流 2
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兄上が言っているのは、俺が魔法を使わなかったことを差しているんだろう。
俺は自分の力を試すためには、剣だけで挑むしか無かった。
それは、父上にとっては幼い子供を相手しているのに等しいもので、俺にとっても無謀でしかない行動だ。
剣術の才能はまるでない。俺は教えて貰った剣じゃなくて、皆にはただ打ち込まれただけでしか無い。
「アトラスのおかげかな? 以前よりは少しだけ上達しているよ」
そういって、親指と人差指でほんの僅かだけ開いている。
それってどう見ても一センチもないんですがね。
「褒められている気がしませんよ」
転がっていた剣を取り、シールドを展開し、木剣に氷をまとわせ氷の大剣へ作り変えていく。
左手には、灼熱の剣クリムゾンブレイドを具現化して、全能力を上げるブレイブオーラ。
これだけあれば、二人に立ち向うことができる。
いや、ここまでしてようやくある程度まで戦える。
剣だけの話なら、それだけ俺たちの差は大きい。
「アトラス。剣を持ってきなさい」
「いいだろう、アレス」
ちょっとまって?
なんか戦うことになっていない?
俺にはそんなつもりはなかったんだけど……二人は剣を構え、目つきが変わる。
一人ならまだしも……この二人相手とか最悪でしか無い。
「それじゃ、始めようか」
兄上は背後から、父上は正面から剣を繰り出すが、二人の攻撃を回避することもなく剣で受け止める。
風を使い二人を吹き飛ばし、兄上に攻撃を仕掛ける。
剣術の型もなく殆どがむしゃらな動きは、どれも簡単にかわされる。
強化魔法を使ったとしても、防ぐのがやっとだ。
「無駄だよ。それじゃ当たらない」
「ちっ」
余裕を見せていたため、捉えたはずの剣は空を切り、シールドが兄上の剣を弾く。
俺達の戦いは極めて簡単なもの。
俺は相手の持っている剣を切り落とすか、俺が疲れて動けなくなるかだ。
しかし、後何年経てば勝てるかもわからない。だけど、魔法を使うわけにはいかない。
「私も忘れないようにね」
「次から次と、くっ」
「おっと、そんなのが当たると思っているの?」
もちろん、二人は全然本気を出していない。
それだけの実力差があるから、俺では相手にすらならない。
使ってもいい魔法はさっきの吹き飛ばすだけの魔法。距離を広げるだけにしか使えず二人の速度だとまるで効果はない。
とはいえ、俺の剣は当たれば致命的で、当然魔法を放てば二人には勝機はない。
これは俺達の中で決められたルール。
「くそっ! はっ!」
二人に弄ばれるように俺の繰り出す攻撃は次々とかわされていく。
十分、二十分と時間が過ぎ、俺一人だけが息を切らせ、大量の汗をかいていた。
二人は涼しげな顔をしているし、二人同時に手招きすらしている。
「くっそ、二人して誂うとか卑怯な」
「僕はそんな事していないだろ? ほらほら、おいでおいで」
兄上は、しゃがみこんで両手で音を立てている。歩いたばかりの子供を呼ぶように……お望み通りに兄上のもとへと仕掛ける。
「ぐはっ」
俺は足をもつれさせ、床に転げる。
あまりにも惨めだった。
相手にもされず、ただ俺だけががむしゃらに戦っているだけ。
「アレス。今日も君の負けだよ」
「全く、父上は甘いですよ。後一時間はやらせるべきです」
相変わらず情け容赦ない。というか、俺なんでこんな事をしているんだ?
ただ魔法を展開しただけで、訓練に付き合わされ、というよりも俺だけが訓練させられていたなあれは……。
「少しは落ち着いたかい?」
「後少しは休ませて欲しい、かな」
「そっちじゃないよ。ここの方だよ」
そう言って、俺の胸を二回軽く叩かれた。
あれで励ましていたつもりなのか?
ただ二人して楽しんでいただけだろ……?
「はぁ」
こんなんでも、ローバン家の一員なのか?
だいぶスッキリとしていやがる。
やっぱり父親なだけはあるよ。
「それじゃ、休憩は終わりだよ?」
まだ二分も経っていないんですけど?
俺がそんな事を聞く前に、兄上の強烈な蹴りを食らわされる。
「ふげっ」
俺は自分の力を試すためには、剣だけで挑むしか無かった。
それは、父上にとっては幼い子供を相手しているのに等しいもので、俺にとっても無謀でしかない行動だ。
剣術の才能はまるでない。俺は教えて貰った剣じゃなくて、皆にはただ打ち込まれただけでしか無い。
「アトラスのおかげかな? 以前よりは少しだけ上達しているよ」
そういって、親指と人差指でほんの僅かだけ開いている。
それってどう見ても一センチもないんですがね。
「褒められている気がしませんよ」
転がっていた剣を取り、シールドを展開し、木剣に氷をまとわせ氷の大剣へ作り変えていく。
左手には、灼熱の剣クリムゾンブレイドを具現化して、全能力を上げるブレイブオーラ。
これだけあれば、二人に立ち向うことができる。
いや、ここまでしてようやくある程度まで戦える。
剣だけの話なら、それだけ俺たちの差は大きい。
「アトラス。剣を持ってきなさい」
「いいだろう、アレス」
ちょっとまって?
なんか戦うことになっていない?
俺にはそんなつもりはなかったんだけど……二人は剣を構え、目つきが変わる。
一人ならまだしも……この二人相手とか最悪でしか無い。
「それじゃ、始めようか」
兄上は背後から、父上は正面から剣を繰り出すが、二人の攻撃を回避することもなく剣で受け止める。
風を使い二人を吹き飛ばし、兄上に攻撃を仕掛ける。
剣術の型もなく殆どがむしゃらな動きは、どれも簡単にかわされる。
強化魔法を使ったとしても、防ぐのがやっとだ。
「無駄だよ。それじゃ当たらない」
「ちっ」
余裕を見せていたため、捉えたはずの剣は空を切り、シールドが兄上の剣を弾く。
俺達の戦いは極めて簡単なもの。
俺は相手の持っている剣を切り落とすか、俺が疲れて動けなくなるかだ。
しかし、後何年経てば勝てるかもわからない。だけど、魔法を使うわけにはいかない。
「私も忘れないようにね」
「次から次と、くっ」
「おっと、そんなのが当たると思っているの?」
もちろん、二人は全然本気を出していない。
それだけの実力差があるから、俺では相手にすらならない。
使ってもいい魔法はさっきの吹き飛ばすだけの魔法。距離を広げるだけにしか使えず二人の速度だとまるで効果はない。
とはいえ、俺の剣は当たれば致命的で、当然魔法を放てば二人には勝機はない。
これは俺達の中で決められたルール。
「くそっ! はっ!」
二人に弄ばれるように俺の繰り出す攻撃は次々とかわされていく。
十分、二十分と時間が過ぎ、俺一人だけが息を切らせ、大量の汗をかいていた。
二人は涼しげな顔をしているし、二人同時に手招きすらしている。
「くっそ、二人して誂うとか卑怯な」
「僕はそんな事していないだろ? ほらほら、おいでおいで」
兄上は、しゃがみこんで両手で音を立てている。歩いたばかりの子供を呼ぶように……お望み通りに兄上のもとへと仕掛ける。
「ぐはっ」
俺は足をもつれさせ、床に転げる。
あまりにも惨めだった。
相手にもされず、ただ俺だけががむしゃらに戦っているだけ。
「アレス。今日も君の負けだよ」
「全く、父上は甘いですよ。後一時間はやらせるべきです」
相変わらず情け容赦ない。というか、俺なんでこんな事をしているんだ?
ただ魔法を展開しただけで、訓練に付き合わされ、というよりも俺だけが訓練させられていたなあれは……。
「少しは落ち着いたかい?」
「後少しは休ませて欲しい、かな」
「そっちじゃないよ。ここの方だよ」
そう言って、俺の胸を二回軽く叩かれた。
あれで励ましていたつもりなのか?
ただ二人して楽しんでいただけだろ……?
「はぁ」
こんなんでも、ローバン家の一員なのか?
だいぶスッキリとしていやがる。
やっぱり父親なだけはあるよ。
「それじゃ、休憩は終わりだよ?」
まだ二分も経っていないんですけど?
俺がそんな事を聞く前に、兄上の強烈な蹴りを食らわされる。
「ふげっ」
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