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聖女編
182 お嬢様と聖女の妹
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「あっははは。メルが聖女! 聖女様!! それもそうよね、なんたってゲームのヒロインなんだから……当然よねー、ひぃひい。お腹痛い」
明日から始まる聖女の儀式を前に、二人は私の屋敷に来ていた。
それで、クレアたちから話があるということだったのだけど……ゲームのヒロインであるメルティアは、聖女の儀式によって聖女と認定される。
「お、お姉さま。イクミ様は何も悪気が合ってということでは……」
「それで片付けていいものなの?」
ゲームの話は、ここから始まる。
聖女の力を制御するためだったり、他者に利用される彼女を守ったりすることで、攻略対象者との中を深めハッピーエンドを迎える。
「せーじょ、あっははは」
何度思い出しても笑いがこみ上げてくる。
私の中にある想像していた聖女像に、メルが似つかわしくない。かなり深刻な話だと言うのに、どうしても面白い話になってしまう。
「ひぃーふぅー、ひひっ」
「いい加減にしてよね、イクミちゃん。私が似合わないのは分かるけど」
机に突っ伏し、お腹を擦りつつもメルが聖女という響きにまだ慣れそうにもない。
王族であるライオットは婚約者がいるにも関わらず、メルティアと結婚エンドがある。王族としても聖女であるメルティアに、利用価値があると見ていたのかわからない。
今のライオからして、クレアとの仲は良好で二人の仲を裂くような出来事はそうそう起こらないと思う。
メルもクレア兄といい、あの両親からも気に入られているからこの二人の間も多分大丈夫だと思う。
「いやー、笑った笑った。まさかメルが聖女とはね。ふへへっ」
「イクミ様。お姉さまをこれ以上馬鹿にするのでしたら、イクミ様でも容赦しませんよ?」
クレアはテーブルの上においてあったりんごを手に取り、たった三本の指で粉砕している。
こうしてやろうかと、私を睨みつけていた。圧力としては申し分なかった。
だけど、そこはせめて握りつぶしておいたほうが、まだ……人としての枠組みの中に収まるのではないのと思ってしまう。
メルの元へと行き、クレアを鎮めるためにも私は土下座をしていた。
笑ったことは確かに悪いと反省しよう。メルがそういうキャラでないことを馬鹿にしたのも反省するべき点だ。
しかし、クレアはあのままでいいのだろうか?
どう考えても、ご令嬢とは程遠い所へと行き過ぎているように思える。
「メル。ごめんなさい、だからどうか、貴方の妹を止めて」
「そんな事をしなくてもいいわよ。正直私も出来ることなら、聖女なんてなりたくもないからね」
メル自身も聖女には興味がないみたいで、あれだけ笑っていた私に対して怒る素振りを見せていなかった。
それにしても……クレアは本当に大丈夫なの?
これ以上先に行けば戻ってこれなくなるかもしれない。隣で少し青ざめているライオの様子も察してあげてよね。
私から言うよりも、メルからのほうが効果があると思うけど、クレアはまだまだ強くなったりしないわよね?
「クレア、私なら大丈夫よ。イクミちゃんが笑うのも当然だから、気にすることはないよ」
「本当にごめんね」
メルを誂うとクレアがこんなにも怒るとは思わなかったよ。
今となっては、出会った頃のクレアが懐かしく思えてくるわね。まだ一年程度でしか無いのだけど……いや、違うわね。飼っていた猫が帰ってきていないというのが一番の問題だったわ。
「仮に、メルが聖女だとして、王国としてはどうなのかしら? その力を利用しようと考えたりする?」
「それはどうでしょうか。聖女と言っても得られる力は様々です。それに、破滅の聖女のような力であれば、利用する前にこちらが消されてしまいますから」
帝国に現れた聖女のことね。その力は、一撃の魔法で城を全て破壊する。
そんな力を放たれると、荒野しか残らないわね。その力があれば間違いなく戦争に使われるだろうけど、危険すぎる話よね。
私であれば、真っ先に近寄ってきた国を狙うわね。
ライオが考えているのもここが問題になるでしょうね。その力は強大だけど、必ずしも自分たちにとっていいものとは限らない。
「今日はこのまま泊まらせてもらうけどいい?」
「私は別に構わないけど……クレアはどうするのって聞くだけ無駄よね」
クレア達は入浴した後そのまま寝るらしい。ライオはこちらで用意した馬車で戻っていき、見送った私は一人執務室に残っていた。
聖女の儀式は、明日から一週間を使って各地から人達が集まり、儀式が進行するから夜の外出は控えるようになっている。
メルのことを笑ってはいたが、もし本当に聖女として選ばれるのなら、笑っている場合でなくなる。聖女として利用するために、狙われる可能性が出てくるかもしれない。
ゲームの話からしても、メルティアが特別に庇護を受けていたという話は出てこなかった。
学園の生徒で、寮に住んでいたから?
それはゲームとして考えた話であって、そんな所に聖女を放置するなんて普通は考えないわよね。
そうなると、王都にある公爵家の屋敷よりも、安全を考えるのならここに住まわせるのは可能なのかしら?
明日から始まる聖女の儀式を前に、二人は私の屋敷に来ていた。
それで、クレアたちから話があるということだったのだけど……ゲームのヒロインであるメルティアは、聖女の儀式によって聖女と認定される。
「お、お姉さま。イクミ様は何も悪気が合ってということでは……」
「それで片付けていいものなの?」
ゲームの話は、ここから始まる。
聖女の力を制御するためだったり、他者に利用される彼女を守ったりすることで、攻略対象者との中を深めハッピーエンドを迎える。
「せーじょ、あっははは」
何度思い出しても笑いがこみ上げてくる。
私の中にある想像していた聖女像に、メルが似つかわしくない。かなり深刻な話だと言うのに、どうしても面白い話になってしまう。
「ひぃーふぅー、ひひっ」
「いい加減にしてよね、イクミちゃん。私が似合わないのは分かるけど」
机に突っ伏し、お腹を擦りつつもメルが聖女という響きにまだ慣れそうにもない。
王族であるライオットは婚約者がいるにも関わらず、メルティアと結婚エンドがある。王族としても聖女であるメルティアに、利用価値があると見ていたのかわからない。
今のライオからして、クレアとの仲は良好で二人の仲を裂くような出来事はそうそう起こらないと思う。
メルもクレア兄といい、あの両親からも気に入られているからこの二人の間も多分大丈夫だと思う。
「いやー、笑った笑った。まさかメルが聖女とはね。ふへへっ」
「イクミ様。お姉さまをこれ以上馬鹿にするのでしたら、イクミ様でも容赦しませんよ?」
クレアはテーブルの上においてあったりんごを手に取り、たった三本の指で粉砕している。
こうしてやろうかと、私を睨みつけていた。圧力としては申し分なかった。
だけど、そこはせめて握りつぶしておいたほうが、まだ……人としての枠組みの中に収まるのではないのと思ってしまう。
メルの元へと行き、クレアを鎮めるためにも私は土下座をしていた。
笑ったことは確かに悪いと反省しよう。メルがそういうキャラでないことを馬鹿にしたのも反省するべき点だ。
しかし、クレアはあのままでいいのだろうか?
どう考えても、ご令嬢とは程遠い所へと行き過ぎているように思える。
「メル。ごめんなさい、だからどうか、貴方の妹を止めて」
「そんな事をしなくてもいいわよ。正直私も出来ることなら、聖女なんてなりたくもないからね」
メル自身も聖女には興味がないみたいで、あれだけ笑っていた私に対して怒る素振りを見せていなかった。
それにしても……クレアは本当に大丈夫なの?
これ以上先に行けば戻ってこれなくなるかもしれない。隣で少し青ざめているライオの様子も察してあげてよね。
私から言うよりも、メルからのほうが効果があると思うけど、クレアはまだまだ強くなったりしないわよね?
「クレア、私なら大丈夫よ。イクミちゃんが笑うのも当然だから、気にすることはないよ」
「本当にごめんね」
メルを誂うとクレアがこんなにも怒るとは思わなかったよ。
今となっては、出会った頃のクレアが懐かしく思えてくるわね。まだ一年程度でしか無いのだけど……いや、違うわね。飼っていた猫が帰ってきていないというのが一番の問題だったわ。
「仮に、メルが聖女だとして、王国としてはどうなのかしら? その力を利用しようと考えたりする?」
「それはどうでしょうか。聖女と言っても得られる力は様々です。それに、破滅の聖女のような力であれば、利用する前にこちらが消されてしまいますから」
帝国に現れた聖女のことね。その力は、一撃の魔法で城を全て破壊する。
そんな力を放たれると、荒野しか残らないわね。その力があれば間違いなく戦争に使われるだろうけど、危険すぎる話よね。
私であれば、真っ先に近寄ってきた国を狙うわね。
ライオが考えているのもここが問題になるでしょうね。その力は強大だけど、必ずしも自分たちにとっていいものとは限らない。
「今日はこのまま泊まらせてもらうけどいい?」
「私は別に構わないけど……クレアはどうするのって聞くだけ無駄よね」
クレア達は入浴した後そのまま寝るらしい。ライオはこちらで用意した馬車で戻っていき、見送った私は一人執務室に残っていた。
聖女の儀式は、明日から一週間を使って各地から人達が集まり、儀式が進行するから夜の外出は控えるようになっている。
メルのことを笑ってはいたが、もし本当に聖女として選ばれるのなら、笑っている場合でなくなる。聖女として利用するために、狙われる可能性が出てくるかもしれない。
ゲームの話からしても、メルティアが特別に庇護を受けていたという話は出てこなかった。
学園の生徒で、寮に住んでいたから?
それはゲームとして考えた話であって、そんな所に聖女を放置するなんて普通は考えないわよね。
そうなると、王都にある公爵家の屋敷よりも、安全を考えるのならここに住まわせるのは可能なのかしら?
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