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聖女編
172 お嬢様はお金に困る
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こんな大金私にどうしろと?
そもそも、ルルに耳打ちまでなんてことを言わせるのよ。将来は不安になってくるでしょ。
メルの誕生日だと言うのに、こんな形にしてしまってよかったのかしらね。
そう言えば、私は何もプレゼントとか用意していなかったわね。
いっそこのお金を使って、メルに何かしらのものを用意しようかしら?
何とかルルに嫌われることもなく終わったが、部屋へと戻るとベッドの上に仰向けになるように倒れ込む。
「だはっー。なんか疲れたわね。私は悪い顔なんてしていないのに!」
「お嬢様、そのようにベッドに倒れ込まないでください」
あ、そう言えばドレスのままだったわね。
寝間着へと着替えが終わり、再びベッドに倒れ込む。
ルビーとさっきまで着ていたドレスを、クローゼットに戻すものの……私的には二度と着ることがないと思うわよ。
金貨というだけでも、高額だというのに、それが五百枚。
あの金額をどう使えばいいのと言うのかしらね?
何をするにしても、多すぎる。
「私は別にお金に困っていないのにさ。バナン達のおかげでお金ならまだまだ余裕があるのに」
バナンとドゥルグ。この二人の部隊が何ともおかしいのだ。
よく分からないあのS級冒険者というのは、今までとは比べ物にならないほどの金額を稼いでいる。かなり危険な仕事をしている割には、どれも完璧以上だけでなく被害が出ていないのが不思議でしか無い。
「起こった出来事が問題ですから、この場合は仕方がないのではありませんか?」
私を狙う者を発見することができず、招いたという形になればそうかも知れないけど。とはいえ、ソルティアーノ公爵家が全て悪いという話にはならない。
「私の落ち度を、無視しているようなものよ? 私があの時にホイホイとついて行かなかったら……あ、いや、ごめんなさい」
二人の表情を察し、私はそれから続く言葉を止めた。
ルビーは、ああ言う場に、侍女が隣りにいるものではないらしく私から離れて手伝いに回ったこと。
ルキアは、あの馬車を他の者達に見られないようにと一人馬車に残ったこと。
冒険部隊は、この場所に留まれないということで、魔物の討伐に出かけてたこと。
そして、場所がこのソルティアーノ公爵家。夏に、何日も滞在していたこともあって、誰もが気を緩めていたから、今回の出来事はタイミングが悪いとしか言いようがなかった。
それでも、私が悪いとは誰も言わないし、そうなってしまったことに自分たちの責任だと受け取ってしまう。
「お嬢様?」
「あー、いやいや。お金をどうしようかなって思っていただけよ。いっそ奴隷たちにあげようかしら?」
「本気で受け取ると思っているのでしたら、見当違いも甚だしいです」
「だ、だよねー」
ルビーの言い分もよく分かっている。
奴隷たちがお金を使っていることなんて本当に少ないのよね。筆頭のバナンがアレだしね。
収支のバランスがおかしくて、お金は貯まる一方。
『お嬢! これでご期待に答えられただろうか?』
『嬢ちゃん、足りねぇってんなら、俺たちはまだまだ行けるぜ!』
装備を一式新調すれば、跳ね上がった金額に頭を抱えたこともあったのよね。
お金を使えばそれをすぐに取り戻そうと、あのバカ二人は絶対に張り切る。
SランクのSってなんなのよ。
「はぁ……使い所が難しいわね」
「無理に使われる必要がないのでは?」
そうは言うけど、これは一応税金なのよ?
貴族たちが持っている富からすれば、この金額は大した事がないのかもしれないけど、元を辿れば全てではないにしろ領民からの税によって支払われている。
そんな物を私が溜め込んでいて、どうするっていうのよ。何かに使うってことは、それを提供してくれた人が潤う。
公爵様が使用するお金の流れを、私が止めているに等しい。
だからお金を渡されても、正直使い道に困る。
「お嬢様はそろそろお休みになられますか?」
「色々と考えたいから、今は一人になれると嬉しいのだけど?」
「ご心配には及びません。お嬢様が何をなされようとも、おやすみになるまで見守るのが私共の努めです」
夜ふかしオッケーだけど、監視付きというのも視線が辛いよ。
そんな中で私にどうしろと?
「大人しく寝ます」
「かしこまりました。おやすみなさいませ、お嬢様」
ベッドの中へと潜り込み、お金の使い道を考えるものの浮かぶものはどれも皆が納得してくれそうにない。
自分のために使おうにも、何を買えばいいのかがわからない。必要なものは全て揃っている状態で、ドレスとかは私ではなくトパーズが変わりに手配をしている。
高価なものと言ったらそれぐらいなのだろうけど、私はそもそも欲しくはないのよね。
「あ、そうだ。良いことを考えた」
ベッドから降り、私はドアの前まで行くのだけどルキアが行く手を遮る。
動かそうとしても、私の力ではどうすることも出来ない。
「少し公爵様とお話がしたいのだけど」
「なりません」
「本当に少しだから」
「そのようなお姿で、部屋の外に出ることは許されません」
朝は普通にこのまま部屋から出されたわよ?
なんで今はだめなの?
「お話でしたら、明日の朝でよろしいかと思われます」
「忘れたら困るから今言いたいのだけど」
「それでしたら、紙に書いておけばよろしいのではないですか?」
翌々考えたら、そうなるということね。
嫁入り前の生娘のすることではないと、そう言いたいわけよね。
公爵様とそういう関係とか本当におぞましい話でしかないのだけど。
それにしても、未だ後妻を取らないということは、クレアのお母さんを大切にしているのかもしれないわね。
クレアにとっては辛かったのかもしれないわね。もし、ゲームにそんな設定があったというのなら、きっと色々と手を尽くしてきたはず。
それでも、結局は……
そもそも、ルルに耳打ちまでなんてことを言わせるのよ。将来は不安になってくるでしょ。
メルの誕生日だと言うのに、こんな形にしてしまってよかったのかしらね。
そう言えば、私は何もプレゼントとか用意していなかったわね。
いっそこのお金を使って、メルに何かしらのものを用意しようかしら?
何とかルルに嫌われることもなく終わったが、部屋へと戻るとベッドの上に仰向けになるように倒れ込む。
「だはっー。なんか疲れたわね。私は悪い顔なんてしていないのに!」
「お嬢様、そのようにベッドに倒れ込まないでください」
あ、そう言えばドレスのままだったわね。
寝間着へと着替えが終わり、再びベッドに倒れ込む。
ルビーとさっきまで着ていたドレスを、クローゼットに戻すものの……私的には二度と着ることがないと思うわよ。
金貨というだけでも、高額だというのに、それが五百枚。
あの金額をどう使えばいいのと言うのかしらね?
何をするにしても、多すぎる。
「私は別にお金に困っていないのにさ。バナン達のおかげでお金ならまだまだ余裕があるのに」
バナンとドゥルグ。この二人の部隊が何ともおかしいのだ。
よく分からないあのS級冒険者というのは、今までとは比べ物にならないほどの金額を稼いでいる。かなり危険な仕事をしている割には、どれも完璧以上だけでなく被害が出ていないのが不思議でしか無い。
「起こった出来事が問題ですから、この場合は仕方がないのではありませんか?」
私を狙う者を発見することができず、招いたという形になればそうかも知れないけど。とはいえ、ソルティアーノ公爵家が全て悪いという話にはならない。
「私の落ち度を、無視しているようなものよ? 私があの時にホイホイとついて行かなかったら……あ、いや、ごめんなさい」
二人の表情を察し、私はそれから続く言葉を止めた。
ルビーは、ああ言う場に、侍女が隣りにいるものではないらしく私から離れて手伝いに回ったこと。
ルキアは、あの馬車を他の者達に見られないようにと一人馬車に残ったこと。
冒険部隊は、この場所に留まれないということで、魔物の討伐に出かけてたこと。
そして、場所がこのソルティアーノ公爵家。夏に、何日も滞在していたこともあって、誰もが気を緩めていたから、今回の出来事はタイミングが悪いとしか言いようがなかった。
それでも、私が悪いとは誰も言わないし、そうなってしまったことに自分たちの責任だと受け取ってしまう。
「お嬢様?」
「あー、いやいや。お金をどうしようかなって思っていただけよ。いっそ奴隷たちにあげようかしら?」
「本気で受け取ると思っているのでしたら、見当違いも甚だしいです」
「だ、だよねー」
ルビーの言い分もよく分かっている。
奴隷たちがお金を使っていることなんて本当に少ないのよね。筆頭のバナンがアレだしね。
収支のバランスがおかしくて、お金は貯まる一方。
『お嬢! これでご期待に答えられただろうか?』
『嬢ちゃん、足りねぇってんなら、俺たちはまだまだ行けるぜ!』
装備を一式新調すれば、跳ね上がった金額に頭を抱えたこともあったのよね。
お金を使えばそれをすぐに取り戻そうと、あのバカ二人は絶対に張り切る。
SランクのSってなんなのよ。
「はぁ……使い所が難しいわね」
「無理に使われる必要がないのでは?」
そうは言うけど、これは一応税金なのよ?
貴族たちが持っている富からすれば、この金額は大した事がないのかもしれないけど、元を辿れば全てではないにしろ領民からの税によって支払われている。
そんな物を私が溜め込んでいて、どうするっていうのよ。何かに使うってことは、それを提供してくれた人が潤う。
公爵様が使用するお金の流れを、私が止めているに等しい。
だからお金を渡されても、正直使い道に困る。
「お嬢様はそろそろお休みになられますか?」
「色々と考えたいから、今は一人になれると嬉しいのだけど?」
「ご心配には及びません。お嬢様が何をなされようとも、おやすみになるまで見守るのが私共の努めです」
夜ふかしオッケーだけど、監視付きというのも視線が辛いよ。
そんな中で私にどうしろと?
「大人しく寝ます」
「かしこまりました。おやすみなさいませ、お嬢様」
ベッドの中へと潜り込み、お金の使い道を考えるものの浮かぶものはどれも皆が納得してくれそうにない。
自分のために使おうにも、何を買えばいいのかがわからない。必要なものは全て揃っている状態で、ドレスとかは私ではなくトパーズが変わりに手配をしている。
高価なものと言ったらそれぐらいなのだろうけど、私はそもそも欲しくはないのよね。
「あ、そうだ。良いことを考えた」
ベッドから降り、私はドアの前まで行くのだけどルキアが行く手を遮る。
動かそうとしても、私の力ではどうすることも出来ない。
「少し公爵様とお話がしたいのだけど」
「なりません」
「本当に少しだから」
「そのようなお姿で、部屋の外に出ることは許されません」
朝は普通にこのまま部屋から出されたわよ?
なんで今はだめなの?
「お話でしたら、明日の朝でよろしいかと思われます」
「忘れたら困るから今言いたいのだけど」
「それでしたら、紙に書いておけばよろしいのではないですか?」
翌々考えたら、そうなるということね。
嫁入り前の生娘のすることではないと、そう言いたいわけよね。
公爵様とそういう関係とか本当におぞましい話でしかないのだけど。
それにしても、未だ後妻を取らないということは、クレアのお母さんを大切にしているのかもしれないわね。
クレアにとっては辛かったのかもしれないわね。もし、ゲームにそんな設定があったというのなら、きっと色々と手を尽くしてきたはず。
それでも、結局は……
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