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聖女編
158 お嬢様、大盛況ですよ
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「やっぱりそうなのね。公爵様には一度謝る必要があるかもしれないわね」
いくら公爵様であろうとも、あの子に太刀打ちできない。きつく言った所で、反省しているのなら、今のクレアにはなっていなかったでしょうね。
それに、クロとの一戦のように見て見ぬ振りをしているかもしれないわね。
胃潰瘍とかにならないことを祈るしか無いわね。
朝になれば、町の外で待機していた冒険者部隊と合流し、ソルティアーノへと向かう。
私は窓の外を眺めつつ、クレアが残していた手紙のことを考えていた。
こんな内容なのに、なんで私が出向かないと思われたのか?
関係がないと言えば確かにそうなのだけど……現状では友人なのだから、そう言うわけにもいかない。
それとも、私のことを見透かされているのかもしれないわね。
「信用されていないのかしらね」
「お嬢様? どうかされましたか?」
「この手紙のことよ。私が行かないなんて普通は思わないでしょ? それなのに、なんでこんな事をされたのかなって、皆が私のことをどう思っているのか少し不安に思ってね」
ルビーは何も答えず、視線を窓の外に向けている。
何かあるのかと私も外を見てみるが、これと言って変わった様子はない。
ルビーも楽しむだけ楽しんだのか、少しは罪悪感があるのかもしれないわね。
「これからは私も気をつけるから、今後はこんな事をしないでね」
「そうですか……それは少し残念です」
これは前言撤回ね。
お願いだから、こんな事でそんな悲しい顔をされても困るのだけど?
ルビーたちからすれば、今回のことはかなり楽しかったみたいだけど、私としては本当に怖かったのだから二度とやらないで欲しいわね。
何の説明もなく飛び降りるなんて怖すぎるわよ。
「まあいいわ。それにしても、あのメルが……ね」
「お嬢様はお喜びにならないのですか?」
「素直に嬉しいわよ。ただ、思っていたよりかなり早いなってね」
私達がソルティアーノへと向かう理由。
それは、正式にメルとクレア兄の婚約が決まり、そのお披露目のためにパーティの招待状だった。
どう考えても、これにお呼ばれすれば行かないわけがない。
なぜこんな事をされたのか……未だに納得はできない。
今後こんな事にならないように、少しはトワロの言うことに耳を傾けたほうがいいのかしらね?
ソルティアーノ公爵家に辿り着いた私達。
屋敷の周りには数多くの馬車が並び、二人を祝福するために集まっているのだと思う。
数人残っている御者からは、私はやはり好奇な目を向けられる。
その理由は色違いがこんな所へとやってくるのが、不思議に思っているのでしょうね。
「イクミ殿、私は馬を預けてきます。ご不安でしたら、このままお待ちいただいても」
「クレアの屋敷だから大丈夫よ。後はお願いね」
これだけ多くの人間が集まるのなら、護衛が居なくても多分問題にはならないと思う。
そもそも、ここにいるのは大半が貴族たちで、いくらなんでも公爵家で何かの揉め事を起こすとは思えない。
玄関は開放されていて、広間ではクレアが訪れた方々に挨拶をしている。私を見つけると、対応していた人の挨拶を済ませ私の所までやってくる。
こんなに人が多いというのに、スカートを持ち上げて走るものではないわよ。
「お待ちしておりました、イクミ・グセナーレ様」
クレアはこれだけの面前にも関わらず、私より低い姿勢をとっていた。
そして、本来であれば私から声をかけるにも関わらず、どういうつもりなの?
この場が公爵家であり、私達は招かれた客人だとしてもこの対応はおかしい。後からやって来た公爵様も膝を折らないものの、深く頭を下げている。
「この度は、おめでとうございます。それで、クレアローズ・ソルティアーノ様……なんで私の所に来たのかしら?」
完全に注目の的になっている。
公爵様が頭を下げるものの、私が頭を下げないことで周囲からどう見られているか、これは少し話し合う必要がありそうね。
「それは勿論、おめかしの準備をするからです」
クレアの言葉に足が後ろへと下がるが、私の両肩を掴み逃げようとさせない。
ちゃんと見ている? ほら、今日はかなりきれいなドレスだよ?
ルビーだってこれでいいと言っていたのよ?
「おめかしですよ」
公爵様と目が合うものの、首を横に振るだけで助けるつもりはない。
このドレスの説明をした所で、クレアの様子からして無駄な話よね。
こうなるのはなんとなく予想をしていた。こういうお祝いの場にしては、私の服装が不釣り合いなのだから。
「お、お手柔らかにお願いをしてもいいかしら?」
「大丈夫です。そんなことは致しませんから」
相変わらずこういうことになると、会話が噛み合っていないわよね? それとも、私が言っていることを理解しての回答とは到底思えないのだけど。
クレアも私が着替えるときには目を輝かせていたし、メイド達と何ら変わりなさそうね。
「イクミ様には、盛大に祝って欲しいとお姉さまも仰ってました」
メルも同じくそっち側についている。これはもう、これは諦めるしかなさそうね。
それに、今日はメルのためなんだから、我慢は必要なのかもね。
クレアからそう言われ、私も覚悟を決めて、先に進むクレアの後を追いかけた。
屋敷の上へと階段を登る時に、とある場所に多くの人だかりができているのが見えた。
ご婦人を集め何かの説明をしているのだが……あの場所は確か?
この世界だと画期的ではあるよね。水さえ流せばいいだけなのだから、あのバスタブと比べると興味を持たれるわよね。
浴場がこの世界で浸透するのかはわからないけど、そういえば前に言った公衆浴場の話はどうなったのかしらね。
「イクミ様。そのような所で何かありましたか」
「ごめんね、少し見ていただけよ」
「ああ、あれですか。私達もイクミ様を見習って、使用人たちも使うように言っているのですよ」
私がそうしてもらうように伝えていたものの、クレアの場合ただ単に自分たちだけが使用する事に、抵抗感があるからだけなんじゃないの?
貴族相手であれば、綺麗になるとか言えば、それ相応な値段だとしても買ってくれるかもしれないわね。そもそも魔法石を使うからそんな簡単な話で済むことでもないか。
魔法石でなくても、木を燃やせば似たようなこともできるけど、森が無くなってしまうわね。
メルだって多分理解はしてくれていると思うけど、そういう事を考える馬鹿な貴族が現れないことに期待するしかないわね。
尤も、あの二人のことだから、そういうことになる前にもっと良いものを作りそうでもあるけどね。
いくら公爵様であろうとも、あの子に太刀打ちできない。きつく言った所で、反省しているのなら、今のクレアにはなっていなかったでしょうね。
それに、クロとの一戦のように見て見ぬ振りをしているかもしれないわね。
胃潰瘍とかにならないことを祈るしか無いわね。
朝になれば、町の外で待機していた冒険者部隊と合流し、ソルティアーノへと向かう。
私は窓の外を眺めつつ、クレアが残していた手紙のことを考えていた。
こんな内容なのに、なんで私が出向かないと思われたのか?
関係がないと言えば確かにそうなのだけど……現状では友人なのだから、そう言うわけにもいかない。
それとも、私のことを見透かされているのかもしれないわね。
「信用されていないのかしらね」
「お嬢様? どうかされましたか?」
「この手紙のことよ。私が行かないなんて普通は思わないでしょ? それなのに、なんでこんな事をされたのかなって、皆が私のことをどう思っているのか少し不安に思ってね」
ルビーは何も答えず、視線を窓の外に向けている。
何かあるのかと私も外を見てみるが、これと言って変わった様子はない。
ルビーも楽しむだけ楽しんだのか、少しは罪悪感があるのかもしれないわね。
「これからは私も気をつけるから、今後はこんな事をしないでね」
「そうですか……それは少し残念です」
これは前言撤回ね。
お願いだから、こんな事でそんな悲しい顔をされても困るのだけど?
ルビーたちからすれば、今回のことはかなり楽しかったみたいだけど、私としては本当に怖かったのだから二度とやらないで欲しいわね。
何の説明もなく飛び降りるなんて怖すぎるわよ。
「まあいいわ。それにしても、あのメルが……ね」
「お嬢様はお喜びにならないのですか?」
「素直に嬉しいわよ。ただ、思っていたよりかなり早いなってね」
私達がソルティアーノへと向かう理由。
それは、正式にメルとクレア兄の婚約が決まり、そのお披露目のためにパーティの招待状だった。
どう考えても、これにお呼ばれすれば行かないわけがない。
なぜこんな事をされたのか……未だに納得はできない。
今後こんな事にならないように、少しはトワロの言うことに耳を傾けたほうがいいのかしらね?
ソルティアーノ公爵家に辿り着いた私達。
屋敷の周りには数多くの馬車が並び、二人を祝福するために集まっているのだと思う。
数人残っている御者からは、私はやはり好奇な目を向けられる。
その理由は色違いがこんな所へとやってくるのが、不思議に思っているのでしょうね。
「イクミ殿、私は馬を預けてきます。ご不安でしたら、このままお待ちいただいても」
「クレアの屋敷だから大丈夫よ。後はお願いね」
これだけ多くの人間が集まるのなら、護衛が居なくても多分問題にはならないと思う。
そもそも、ここにいるのは大半が貴族たちで、いくらなんでも公爵家で何かの揉め事を起こすとは思えない。
玄関は開放されていて、広間ではクレアが訪れた方々に挨拶をしている。私を見つけると、対応していた人の挨拶を済ませ私の所までやってくる。
こんなに人が多いというのに、スカートを持ち上げて走るものではないわよ。
「お待ちしておりました、イクミ・グセナーレ様」
クレアはこれだけの面前にも関わらず、私より低い姿勢をとっていた。
そして、本来であれば私から声をかけるにも関わらず、どういうつもりなの?
この場が公爵家であり、私達は招かれた客人だとしてもこの対応はおかしい。後からやって来た公爵様も膝を折らないものの、深く頭を下げている。
「この度は、おめでとうございます。それで、クレアローズ・ソルティアーノ様……なんで私の所に来たのかしら?」
完全に注目の的になっている。
公爵様が頭を下げるものの、私が頭を下げないことで周囲からどう見られているか、これは少し話し合う必要がありそうね。
「それは勿論、おめかしの準備をするからです」
クレアの言葉に足が後ろへと下がるが、私の両肩を掴み逃げようとさせない。
ちゃんと見ている? ほら、今日はかなりきれいなドレスだよ?
ルビーだってこれでいいと言っていたのよ?
「おめかしですよ」
公爵様と目が合うものの、首を横に振るだけで助けるつもりはない。
このドレスの説明をした所で、クレアの様子からして無駄な話よね。
こうなるのはなんとなく予想をしていた。こういうお祝いの場にしては、私の服装が不釣り合いなのだから。
「お、お手柔らかにお願いをしてもいいかしら?」
「大丈夫です。そんなことは致しませんから」
相変わらずこういうことになると、会話が噛み合っていないわよね? それとも、私が言っていることを理解しての回答とは到底思えないのだけど。
クレアも私が着替えるときには目を輝かせていたし、メイド達と何ら変わりなさそうね。
「イクミ様には、盛大に祝って欲しいとお姉さまも仰ってました」
メルも同じくそっち側についている。これはもう、これは諦めるしかなさそうね。
それに、今日はメルのためなんだから、我慢は必要なのかもね。
クレアからそう言われ、私も覚悟を決めて、先に進むクレアの後を追いかけた。
屋敷の上へと階段を登る時に、とある場所に多くの人だかりができているのが見えた。
ご婦人を集め何かの説明をしているのだが……あの場所は確か?
この世界だと画期的ではあるよね。水さえ流せばいいだけなのだから、あのバスタブと比べると興味を持たれるわよね。
浴場がこの世界で浸透するのかはわからないけど、そういえば前に言った公衆浴場の話はどうなったのかしらね。
「イクミ様。そのような所で何かありましたか」
「ごめんね、少し見ていただけよ」
「ああ、あれですか。私達もイクミ様を見習って、使用人たちも使うように言っているのですよ」
私がそうしてもらうように伝えていたものの、クレアの場合ただ単に自分たちだけが使用する事に、抵抗感があるからだけなんじゃないの?
貴族相手であれば、綺麗になるとか言えば、それ相応な値段だとしても買ってくれるかもしれないわね。そもそも魔法石を使うからそんな簡単な話で済むことでもないか。
魔法石でなくても、木を燃やせば似たようなこともできるけど、森が無くなってしまうわね。
メルだって多分理解はしてくれていると思うけど、そういう事を考える馬鹿な貴族が現れないことに期待するしかないわね。
尤も、あの二人のことだから、そういうことになる前にもっと良いものを作りそうでもあるけどね。
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