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学園編
123 お嬢様の小旅行
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「イクミ様! 私の領地に行きませんか!?」
私は突然やって来たクレアが、挨拶するまもなく机を叩かれたことで、昨日の事を怒られるとビクビクしていた。
あまりの大きな音に、名前を呼ばれたあとに何を言っていたのかをうまく聞き取れないでいた。
「く、クレアどうしたのよ」
「ですから、ソルティアーノ公爵領に行ってみませんか?」
ルビーの視線をずらすと、一度だけ頷いている。
いやいや、それは一体どういう意味なの?
行って良いってこと?
「分かった。でもクレアが実家に帰るのは分かるけど、なんで私も一緒な……そういうことね」
「な、何よ」
少しだけ目を細めて彼女に見たことで、気まずそうにしている。
あの後なにか良い事でもあったみたいね。そして、クレアからの申し出から考えると、私を出しにするつもりみたいね。
「そうね。メルティアも来てくれるのなら考えてもいいかもしれないわね。ルルも当然連れて行くわよ」
「いえ、メルティア様は強制連行です」
クレア、あなた随分と人が変わったわね。
少し前まではもっとお上品なお嬢様が、今では腹黒さが見え隠れしているわよ。
不敵に笑う彼女の頭の中には、メルティアとクレア兄のことを考えているようね。
しかしながら、これを兄思いと捉えていいものか疑問に思うところよね。
「ルビー、何時なら出られそうかしら?」
「ソルティアーノ公爵家ですか……それでしたら、三日ほど頂ければ可能です」
「余裕を持って、五日後ならいいわね。二人はどうかしら?」
そこまでは時間はかからないとは思うけど、旅以外の準備をしておきたい。
それと、五日もあれば私一人で食事が取れるようになれば良いのだけどね。
「私なら大丈夫です」
メルも問題はなさそうね。今の様子からだと、私達の声は届いていなさそうだけど……今から緊張してどうするのよ。
思っていたメルの印象とは違い、かなり押しに弱いのかな?
人のタイプはそれぞれよね。
「聞きたいのだけど……クレアと私は別々の馬車よね?」
「それはなぜですか? ご一緒は嫌なのですか?」
「あ、そうだ」
「私もクレアとイクミちゃんと一緒の馬車だからね!」
私のひらめきを察したようね。
メルの意見には同意見なのだけど……本当に警戒をしているわね。クレアからどれだけ誂われたのかしらね。
メルの名前を聞いて逃げ出していたあの頃が、懐かしいとさえ思えてくるよ。
「私には専用の馬車があるから、二人にもそれを使わせてもらえればとね。クレアのお兄さんはできれば一人で先行して実家に行って欲しいかな」
ルビーのことだから、絶対に乗せるようなことはないね。
ライオにですら搭乗拒否を平然といいそうよね。
「先行ですか? 確かに、近い場所ではありませんが、同行でもよろしいのではないのかと」
「それだけと、色々と面倒なのよ」
「イクミちゃんは何を企んでいるの?」
「人聞きが悪い。私はクレアと違って何も企んでいないから。私個人的なものよ」
私がそれだけの遠出をするというのなら、何が待ち受けているのかは理解できる。
二人は多分いろんな事に動じないと思うから、私といるのが良いと思う。
道中はほぼ安全が確約されたようなものだしね。
私が遠出することが決まり、屋敷ではメイドたちだけではなく冒険部隊もバタバタと慌ただしくなる。
応接室は会議の場となり、トパーズを中心に会議が進められていく。
私は当然参加する必要がないらしいのは、以前と変わらない理由なのだろう。
口出しをした所で聞き入れてくれるはずもないので、好きにさせるしかない。
「イクミちゃん。少しいいかな?」
「どうしたの?」
「ルルに着せてあげられる服がないの」
それは盲点だったわね。
私のことでなら、当然のように用意されているのが当たり前だけど、メルとルルにはその配慮が行き届いていないのは、私が客人としてもてなさないように言ったためよね。
ベルを振りやってきたメイドに、トワロを呼ぶように頼む。
「トワロ、これからメル達と街に行って、彼女たちの服を用意しなさい」
「かしこまりました。ですが、私のような老いぼれなどではなく、他の者がよろしいのではないでしょうか?」
「他の人を連れて行くのは構わないけど、メルは今後ソルティアーノ公爵家のご子息と婚約者になるかもしれない人よ? まだ確約はないけど、それを踏まえなさい」
「なんと、かしこまりました。グセナーレ家はメルティア様の後ろ盾となられるのですね」
そんな大層な話ではないけど、友人として出来ることをして上げたいだけにしか過ぎない。
少しぐらいは、着飾っておくのもいいわよね。
「イクミちゃん。それはいくら何でも……」
否定したくなるのも無理はないのだけど、トワロからの圧力に勝てればいいのだけどね。
その人結構しつこいからね。
「お嬢様をご行為を、貴方様は無になされるおつもりでしょうか?」
「そ、そうではなくて……そこまでして頂かなくても。妹の服だけあればいいので」
うるさくなりそうだったので、もう一度ベルを使い強制的にメルを退出させる。
テラスから、様子を見ていると抵抗する気が失せたのかおとなしく馬車に乗り込む。一方ルルの方は楽しそうね。あの様子からして、ルルを使われるとさすがのメルも太刀打ちはできないよね。
さてと、こちらも必要な物の相談に行きますか。
納得してくれるといいのだけどね。
私は突然やって来たクレアが、挨拶するまもなく机を叩かれたことで、昨日の事を怒られるとビクビクしていた。
あまりの大きな音に、名前を呼ばれたあとに何を言っていたのかをうまく聞き取れないでいた。
「く、クレアどうしたのよ」
「ですから、ソルティアーノ公爵領に行ってみませんか?」
ルビーの視線をずらすと、一度だけ頷いている。
いやいや、それは一体どういう意味なの?
行って良いってこと?
「分かった。でもクレアが実家に帰るのは分かるけど、なんで私も一緒な……そういうことね」
「な、何よ」
少しだけ目を細めて彼女に見たことで、気まずそうにしている。
あの後なにか良い事でもあったみたいね。そして、クレアからの申し出から考えると、私を出しにするつもりみたいね。
「そうね。メルティアも来てくれるのなら考えてもいいかもしれないわね。ルルも当然連れて行くわよ」
「いえ、メルティア様は強制連行です」
クレア、あなた随分と人が変わったわね。
少し前まではもっとお上品なお嬢様が、今では腹黒さが見え隠れしているわよ。
不敵に笑う彼女の頭の中には、メルティアとクレア兄のことを考えているようね。
しかしながら、これを兄思いと捉えていいものか疑問に思うところよね。
「ルビー、何時なら出られそうかしら?」
「ソルティアーノ公爵家ですか……それでしたら、三日ほど頂ければ可能です」
「余裕を持って、五日後ならいいわね。二人はどうかしら?」
そこまでは時間はかからないとは思うけど、旅以外の準備をしておきたい。
それと、五日もあれば私一人で食事が取れるようになれば良いのだけどね。
「私なら大丈夫です」
メルも問題はなさそうね。今の様子からだと、私達の声は届いていなさそうだけど……今から緊張してどうするのよ。
思っていたメルの印象とは違い、かなり押しに弱いのかな?
人のタイプはそれぞれよね。
「聞きたいのだけど……クレアと私は別々の馬車よね?」
「それはなぜですか? ご一緒は嫌なのですか?」
「あ、そうだ」
「私もクレアとイクミちゃんと一緒の馬車だからね!」
私のひらめきを察したようね。
メルの意見には同意見なのだけど……本当に警戒をしているわね。クレアからどれだけ誂われたのかしらね。
メルの名前を聞いて逃げ出していたあの頃が、懐かしいとさえ思えてくるよ。
「私には専用の馬車があるから、二人にもそれを使わせてもらえればとね。クレアのお兄さんはできれば一人で先行して実家に行って欲しいかな」
ルビーのことだから、絶対に乗せるようなことはないね。
ライオにですら搭乗拒否を平然といいそうよね。
「先行ですか? 確かに、近い場所ではありませんが、同行でもよろしいのではないのかと」
「それだけと、色々と面倒なのよ」
「イクミちゃんは何を企んでいるの?」
「人聞きが悪い。私はクレアと違って何も企んでいないから。私個人的なものよ」
私がそれだけの遠出をするというのなら、何が待ち受けているのかは理解できる。
二人は多分いろんな事に動じないと思うから、私といるのが良いと思う。
道中はほぼ安全が確約されたようなものだしね。
私が遠出することが決まり、屋敷ではメイドたちだけではなく冒険部隊もバタバタと慌ただしくなる。
応接室は会議の場となり、トパーズを中心に会議が進められていく。
私は当然参加する必要がないらしいのは、以前と変わらない理由なのだろう。
口出しをした所で聞き入れてくれるはずもないので、好きにさせるしかない。
「イクミちゃん。少しいいかな?」
「どうしたの?」
「ルルに着せてあげられる服がないの」
それは盲点だったわね。
私のことでなら、当然のように用意されているのが当たり前だけど、メルとルルにはその配慮が行き届いていないのは、私が客人としてもてなさないように言ったためよね。
ベルを振りやってきたメイドに、トワロを呼ぶように頼む。
「トワロ、これからメル達と街に行って、彼女たちの服を用意しなさい」
「かしこまりました。ですが、私のような老いぼれなどではなく、他の者がよろしいのではないでしょうか?」
「他の人を連れて行くのは構わないけど、メルは今後ソルティアーノ公爵家のご子息と婚約者になるかもしれない人よ? まだ確約はないけど、それを踏まえなさい」
「なんと、かしこまりました。グセナーレ家はメルティア様の後ろ盾となられるのですね」
そんな大層な話ではないけど、友人として出来ることをして上げたいだけにしか過ぎない。
少しぐらいは、着飾っておくのもいいわよね。
「イクミちゃん。それはいくら何でも……」
否定したくなるのも無理はないのだけど、トワロからの圧力に勝てればいいのだけどね。
その人結構しつこいからね。
「お嬢様をご行為を、貴方様は無になされるおつもりでしょうか?」
「そ、そうではなくて……そこまでして頂かなくても。妹の服だけあればいいので」
うるさくなりそうだったので、もう一度ベルを使い強制的にメルを退出させる。
テラスから、様子を見ていると抵抗する気が失せたのかおとなしく馬車に乗り込む。一方ルルの方は楽しそうね。あの様子からして、ルルを使われるとさすがのメルも太刀打ちはできないよね。
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納得してくれるといいのだけどね。
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