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学園編
105 お嬢様は羨ましく思っている
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クレア達は挨拶を済ませると、部屋から出て行った。当たり前のようにフェルも一緒なのが少し気に入らないけど……ルビーにわがままを言った所で今更聞き入れてくれるはずもないわね。
クロ達が手懐けているとは言え、魔獣であることに変わりはない。そのため、この屋敷にいる皆からすれば、私に対して異様なほど過保護なのは理解している。
「前にルビーが、あのような魔獣を部屋に通すわけには行きません……か」
以前住んでいた屋敷でも何度も説得を試みたけど、答えはきっと今も変わらないはず。
理由としては、きっと私に危害を加えないと懸念していると思うけど……クレア達は良いのか? あれでも貴族のご令嬢なのよ?
ルビーのことだから、私でなければ誰でもいいと思っているの? それとも別の意味でもあるのかしらね。
そんな事を考えていると、ルビーが寝室へと戻ってきた。
「おまたせしました、お嬢様。そろそろ、お休みになられますか?」
「おかえり、ルビー。そのつもりだけど……」
そう言って、クローゼットからパジャマを取り出している。そろそろ着替えぐらい、そろそろ一人でしてもいいところなんだろうけど……何故かそれを拒まれるのよね。
きっと、私がこういう服を好んでいないから、無理矢理にでも着替えさせるのが目的なのかもしれない。
今では本当にズボンが懐かしいよ……
「それにしても、時間がかかっていたようだけど、二人は大丈夫なの?」
「はい。お二人とも同じ部屋がよろしいというので、そのように準備を致しました」
つまり、ベッドの移動をしていたというわけね。クレアだけではなく、メルもかなり気に入っているようだったから、フェルを取り合った結果そういう事になったというわけね。
そんな事を考えていると、私の視線は自然と天井を向いてしまう。
上では今頃どうなっているのやら……何事もなければいいのだけどね。
「あの二人なら大丈夫か」
そんな事を考えても、杞憂でしか無い。あれだけ不安だったクレアが、いつの間にか打ち解けあっていたし、この世界のことでさっきまで楽しそうにしていたのだから。
着替えを済ませベッドに腰を下ろしたものの、私の頭の中では二人の会話がぐるぐると回っていた。
「お嬢様?」
「なんでも無いよ。不思議な縁よねと……少し思っていただけよ」
「そうですか。それでは、おやすみなさいませ、お嬢様」
「うん。おやすみ、ルビー」
一人になり、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
あまり表に出さないようにしていたけど、一人にもなればどうしても考えてしまう。
ここから見える風景も、この町で暮らしている人達も……作られていたものということに。
この世界その物がよりにもよって、二人が生前にやっていたというゲームと全く同じ。そして、あの二人が物語の登場人物だということ。
「だからなのね。この世界が何処か似ているのは……」
この世界で暮らすことになってからは、今までにいろんな疑問があった。
言葉や使われている文字。カレンダーの日付や四季の移り変わり。窓に差し込む月明かり。あの月の形も似ているようすら思えてくる。
これらは、皆にとっての当たり前だったから私もそのまま受け入れていた。
こういう文化の発展だったと思い納得していたから……その疑問に対して深く思うことはなかった。
だけど……皆はここで生きている。たとえ、この世界がゲームの舞台だとしても、皆は懸命に生きている。それは紛れもない事実だと思う。
「これだと……頭が冴えていて寝れそうにもないわね」
ベッドから起き上がり机の椅子に座り直す。
乙女ゲームの事はあまりわからないけど、この世界がゲーム……あるいは何かの物語と同じであるのなら、今後何かしらのトラブルが発生する可能性があるかもしれない。
そう思わせるのは、メルはクレアのことを悪役令嬢と言っていた。悪役……クレアが何かしらの問題の火種に?
メルが言っていたクレアと、私の知っているクレアは別人だ。
頭を振り、余計な考えを振り払う。
「今のクレアに限ってそんなことになる要素はない。だから、別の問題が浮上すると考えたほうが良さそうね」
二人の会話からして、物語はまだ始まってはいない。メルは私達よりも年齢は一つ下で来年学園に通うことになる。それからなのだけど……物語がどういったものかは私にはわからない。
クレアが気にかけていたのは、メルとライオの関係だった。
二人の話では、婚約者であるクレアを蔑ろにして、最終的にはライオはメルティアを婚約者にして終幕となるらしい。
そこまでに至る経緯は把握できなかったけど概ねそうらしい。
現段階としては、ヒロインであるメルは、ゲームとは全く別の道に進むらしい。となると、ゲームの物語は無視していいと思う。
であるのなら、重要となる問題は、何が起きるのかということだけ。
本来敵対関係となる二人が、あんなにも仲良くしている……そのためクレアが不安に思っているようなことも今後起こることはない。
決められていたゲームの内容は崩壊しているのだから。
クロ達が手懐けているとは言え、魔獣であることに変わりはない。そのため、この屋敷にいる皆からすれば、私に対して異様なほど過保護なのは理解している。
「前にルビーが、あのような魔獣を部屋に通すわけには行きません……か」
以前住んでいた屋敷でも何度も説得を試みたけど、答えはきっと今も変わらないはず。
理由としては、きっと私に危害を加えないと懸念していると思うけど……クレア達は良いのか? あれでも貴族のご令嬢なのよ?
ルビーのことだから、私でなければ誰でもいいと思っているの? それとも別の意味でもあるのかしらね。
そんな事を考えていると、ルビーが寝室へと戻ってきた。
「おまたせしました、お嬢様。そろそろ、お休みになられますか?」
「おかえり、ルビー。そのつもりだけど……」
そう言って、クローゼットからパジャマを取り出している。そろそろ着替えぐらい、そろそろ一人でしてもいいところなんだろうけど……何故かそれを拒まれるのよね。
きっと、私がこういう服を好んでいないから、無理矢理にでも着替えさせるのが目的なのかもしれない。
今では本当にズボンが懐かしいよ……
「それにしても、時間がかかっていたようだけど、二人は大丈夫なの?」
「はい。お二人とも同じ部屋がよろしいというので、そのように準備を致しました」
つまり、ベッドの移動をしていたというわけね。クレアだけではなく、メルもかなり気に入っているようだったから、フェルを取り合った結果そういう事になったというわけね。
そんな事を考えていると、私の視線は自然と天井を向いてしまう。
上では今頃どうなっているのやら……何事もなければいいのだけどね。
「あの二人なら大丈夫か」
そんな事を考えても、杞憂でしか無い。あれだけ不安だったクレアが、いつの間にか打ち解けあっていたし、この世界のことでさっきまで楽しそうにしていたのだから。
着替えを済ませベッドに腰を下ろしたものの、私の頭の中では二人の会話がぐるぐると回っていた。
「お嬢様?」
「なんでも無いよ。不思議な縁よねと……少し思っていただけよ」
「そうですか。それでは、おやすみなさいませ、お嬢様」
「うん。おやすみ、ルビー」
一人になり、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
あまり表に出さないようにしていたけど、一人にもなればどうしても考えてしまう。
ここから見える風景も、この町で暮らしている人達も……作られていたものということに。
この世界その物がよりにもよって、二人が生前にやっていたというゲームと全く同じ。そして、あの二人が物語の登場人物だということ。
「だからなのね。この世界が何処か似ているのは……」
この世界で暮らすことになってからは、今までにいろんな疑問があった。
言葉や使われている文字。カレンダーの日付や四季の移り変わり。窓に差し込む月明かり。あの月の形も似ているようすら思えてくる。
これらは、皆にとっての当たり前だったから私もそのまま受け入れていた。
こういう文化の発展だったと思い納得していたから……その疑問に対して深く思うことはなかった。
だけど……皆はここで生きている。たとえ、この世界がゲームの舞台だとしても、皆は懸命に生きている。それは紛れもない事実だと思う。
「これだと……頭が冴えていて寝れそうにもないわね」
ベッドから起き上がり机の椅子に座り直す。
乙女ゲームの事はあまりわからないけど、この世界がゲーム……あるいは何かの物語と同じであるのなら、今後何かしらのトラブルが発生する可能性があるかもしれない。
そう思わせるのは、メルはクレアのことを悪役令嬢と言っていた。悪役……クレアが何かしらの問題の火種に?
メルが言っていたクレアと、私の知っているクレアは別人だ。
頭を振り、余計な考えを振り払う。
「今のクレアに限ってそんなことになる要素はない。だから、別の問題が浮上すると考えたほうが良さそうね」
二人の会話からして、物語はまだ始まってはいない。メルは私達よりも年齢は一つ下で来年学園に通うことになる。それからなのだけど……物語がどういったものかは私にはわからない。
クレアが気にかけていたのは、メルとライオの関係だった。
二人の話では、婚約者であるクレアを蔑ろにして、最終的にはライオはメルティアを婚約者にして終幕となるらしい。
そこまでに至る経緯は把握できなかったけど概ねそうらしい。
現段階としては、ヒロインであるメルは、ゲームとは全く別の道に進むらしい。となると、ゲームの物語は無視していいと思う。
であるのなら、重要となる問題は、何が起きるのかということだけ。
本来敵対関係となる二人が、あんなにも仲良くしている……そのためクレアが不安に思っているようなことも今後起こることはない。
決められていたゲームの内容は崩壊しているのだから。
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