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学園編
99 お嬢様は守りたい
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翌日、教室へと向かうと、落ち込んでいるクレアの姿があった。
昨日のことが気になっているのだろうね。ちゃんと眠れたのかしらね……窓の外を見つめる様子からしてかなり重症みたいね。
いつもであれば教室のドアを見ているのか、私の姿を見るなりこれだけ近いと言うのに手を振っていたクレア。だけど、私が普段から座っている机ではなく、隣の机に座っている。
「たまには窓際も良いかもしれないね」
「イクミ様……おはようございます」
「クレア。私のことを信用しろとは言わない。だけどね、私にはクレアが友達だと思わせてね」
昨日のことを思い詰めているのかは分からないけど、私なんかの言葉で今にも泣きそうな顔をしている。
彼女は公爵家のご令嬢として、私の知らない苦労があり、王太子の婚約者として何かしらの柵があるのだと思う。
私のように、のんびりとした時間ばかりではなかったはず。
そんな環境の中でも、彼女の振る舞いには見惚れてしまうほどだったが、今はこれまでの彼女とは一変している。
あの子爵令嬢との出来事は、そんなに思い詰めるほどの何かがあるということね。
「昨日は本当に申し訳ございませんでした」
「別に気にすることでもないよ。でも、埋め合わせとして今日は私に付き合ってよ」
クレアには悪いけど、今は事情を説明しても受け止められる余裕はないみたいね。
平気そうだったら、先に伝えておこうかとは思ったけど、これだと強引に屋敷へ連れて行くしか無いわね。
私と話せたことで、少しだけ元気を取り戻せたのか、私に笑顔をみせてくれる。無理をしているのは、普段のクレアを見ているからバレバレだけど。
クレアに問題が合ったとしても、私だけは味方になってあげるべきね。
それでも、時間が経つと思いだしてしまうのか、外を眺めてはため息をついている。
昨日のやり取りの中に、そこまで思い詰める事があるのか……クレアは彼女を見ても分からなかった。だけど、彼女は正確にクレアのことを知っていた。
それなのに、クレアはまるで何かに怯えるかのような顔をして飛び出して行った。
私としても、この煮え切らない状況をなんとかしたいところね。
「イクミ様? 何か分からない所がありましたか?」
「いや、ちょっとね……」
当の本人たちはこれから話し合わせるのだから、私が悩んでも意味がないんだって。
元気づけるため、クレアにべったりくっついていたからか、だいぶ調子を取り戻しているのだが……私の脳内では未だ昨日のことがぐるぐると回っている。
早く放課後になってこのもやもやをスッキリさせたい!
私はクレアを急かすように、屋敷へと連れ出した。ライオも、今日の浮かない様子だったクレアを見て気にしていたみたいだけど、私が断固拒否したことで付いて来るのを諦めてくれた。
ルビーからは、既に待っていると聞き執務室の扉を開けるとクロが机の隣に立ち、メルティアを見張っていた。
メルティアの姿を見たクレアは私が掴んでいた手を振りほどいていた。
「クレア。大丈夫、私が隣りにいるから。ね?」
首を何度も振り、胸の前で握りしめている手が震えていた。
部屋にいたメルティアは私達に気が付き、深く頭を下げたまま待っている。
「クレア!」
「はっきりと申し上げて、私はあの人と関わらないほうが……」
クレアの手首を掴み中へと入って行く。ルキアに背中を押され、ルビーが扉を締める。
私は自分の席に付き、クレアが座るソファの隣にクロとルキアが脇に立つ。
相手からすればたまったものじゃないのだろうけど、これなら何があっても対応ができる。
ここまでする必要があるのかという疑問はあったけど、相手の素性もわからないためルビーの提案を受け入れるしかなかった。
「とりあえず、貴方も座って」
「はい」
彼女の視線は、真っ直ぐクレアを見ている。だけどクレアとしては怯えたまま、私が手をにぎるのでさえ体を強張らせている。
「クレアローズ・ソルティアーノ様。昨日は本当に申し訳ございませんでした」
そう言い切ると、また深く頭を下げるがクレアは何も言葉を発しないため彼女も頭を上げることもできない。
「クレア! それでは話が進まないよ。彼女は誠意を持って接してくれている。私がいるのよ、大丈夫。だから話を聞いて」
「イクミ様……」
クレアは何度か深呼吸をして、小さな声で「頭を上げてください」と言い、目を合わせるものの視線をそらしていた。
今のクレアは私のことを恨んでいるのだろうか? こんな、騙し討ちみたいにしてしまったことを……でも、ここまで拒絶するのはなぜ?
この人はクレアにとって、それほどまでに拒む理由は何?
「質問をしてもいいかしら?」
「どうぞ」
「貴方は東京タワーをご存知?」
「勿論知ってますよ。赤と白の電波塔で、高さは333メートルですね」
流石にそこまで言えれば間違えようもないわね。
色だけではなく、電波というこの世界には存在をしていない物だ。彼女のことはこの質問だけでも十分過ぎる回答だと思う。
それなのに、クレアはそんな事すら気にもとめていない。
やはり、二人には共通する何かがあって、クレアはそれに怯えているということ?
「他に質問はありますか?」
「どうしたものか……」
彼女からしてもあまり広めたくはないのかルキアたちを警戒しているようね。
クレアの時もそうだったわね……私のことならともかくとして、クレアを安心させるというのなら二人が居たほうがいいとは思う。
それだと、ここから先の話をしていくのは難航しそうね。
「ルビー。私達は三人だけで話すことがあるの」
「かしこまりました。何かございましたらベルにてお願いします」
「うん、ありがとう」
昨日のことが気になっているのだろうね。ちゃんと眠れたのかしらね……窓の外を見つめる様子からしてかなり重症みたいね。
いつもであれば教室のドアを見ているのか、私の姿を見るなりこれだけ近いと言うのに手を振っていたクレア。だけど、私が普段から座っている机ではなく、隣の机に座っている。
「たまには窓際も良いかもしれないね」
「イクミ様……おはようございます」
「クレア。私のことを信用しろとは言わない。だけどね、私にはクレアが友達だと思わせてね」
昨日のことを思い詰めているのかは分からないけど、私なんかの言葉で今にも泣きそうな顔をしている。
彼女は公爵家のご令嬢として、私の知らない苦労があり、王太子の婚約者として何かしらの柵があるのだと思う。
私のように、のんびりとした時間ばかりではなかったはず。
そんな環境の中でも、彼女の振る舞いには見惚れてしまうほどだったが、今はこれまでの彼女とは一変している。
あの子爵令嬢との出来事は、そんなに思い詰めるほどの何かがあるということね。
「昨日は本当に申し訳ございませんでした」
「別に気にすることでもないよ。でも、埋め合わせとして今日は私に付き合ってよ」
クレアには悪いけど、今は事情を説明しても受け止められる余裕はないみたいね。
平気そうだったら、先に伝えておこうかとは思ったけど、これだと強引に屋敷へ連れて行くしか無いわね。
私と話せたことで、少しだけ元気を取り戻せたのか、私に笑顔をみせてくれる。無理をしているのは、普段のクレアを見ているからバレバレだけど。
クレアに問題が合ったとしても、私だけは味方になってあげるべきね。
それでも、時間が経つと思いだしてしまうのか、外を眺めてはため息をついている。
昨日のやり取りの中に、そこまで思い詰める事があるのか……クレアは彼女を見ても分からなかった。だけど、彼女は正確にクレアのことを知っていた。
それなのに、クレアはまるで何かに怯えるかのような顔をして飛び出して行った。
私としても、この煮え切らない状況をなんとかしたいところね。
「イクミ様? 何か分からない所がありましたか?」
「いや、ちょっとね……」
当の本人たちはこれから話し合わせるのだから、私が悩んでも意味がないんだって。
元気づけるため、クレアにべったりくっついていたからか、だいぶ調子を取り戻しているのだが……私の脳内では未だ昨日のことがぐるぐると回っている。
早く放課後になってこのもやもやをスッキリさせたい!
私はクレアを急かすように、屋敷へと連れ出した。ライオも、今日の浮かない様子だったクレアを見て気にしていたみたいだけど、私が断固拒否したことで付いて来るのを諦めてくれた。
ルビーからは、既に待っていると聞き執務室の扉を開けるとクロが机の隣に立ち、メルティアを見張っていた。
メルティアの姿を見たクレアは私が掴んでいた手を振りほどいていた。
「クレア。大丈夫、私が隣りにいるから。ね?」
首を何度も振り、胸の前で握りしめている手が震えていた。
部屋にいたメルティアは私達に気が付き、深く頭を下げたまま待っている。
「クレア!」
「はっきりと申し上げて、私はあの人と関わらないほうが……」
クレアの手首を掴み中へと入って行く。ルキアに背中を押され、ルビーが扉を締める。
私は自分の席に付き、クレアが座るソファの隣にクロとルキアが脇に立つ。
相手からすればたまったものじゃないのだろうけど、これなら何があっても対応ができる。
ここまでする必要があるのかという疑問はあったけど、相手の素性もわからないためルビーの提案を受け入れるしかなかった。
「とりあえず、貴方も座って」
「はい」
彼女の視線は、真っ直ぐクレアを見ている。だけどクレアとしては怯えたまま、私が手をにぎるのでさえ体を強張らせている。
「クレアローズ・ソルティアーノ様。昨日は本当に申し訳ございませんでした」
そう言い切ると、また深く頭を下げるがクレアは何も言葉を発しないため彼女も頭を上げることもできない。
「クレア! それでは話が進まないよ。彼女は誠意を持って接してくれている。私がいるのよ、大丈夫。だから話を聞いて」
「イクミ様……」
クレアは何度か深呼吸をして、小さな声で「頭を上げてください」と言い、目を合わせるものの視線をそらしていた。
今のクレアは私のことを恨んでいるのだろうか? こんな、騙し討ちみたいにしてしまったことを……でも、ここまで拒絶するのはなぜ?
この人はクレアにとって、それほどまでに拒む理由は何?
「質問をしてもいいかしら?」
「どうぞ」
「貴方は東京タワーをご存知?」
「勿論知ってますよ。赤と白の電波塔で、高さは333メートルですね」
流石にそこまで言えれば間違えようもないわね。
色だけではなく、電波というこの世界には存在をしていない物だ。彼女のことはこの質問だけでも十分過ぎる回答だと思う。
それなのに、クレアはそんな事すら気にもとめていない。
やはり、二人には共通する何かがあって、クレアはそれに怯えているということ?
「他に質問はありますか?」
「どうしたものか……」
彼女からしてもあまり広めたくはないのかルキアたちを警戒しているようね。
クレアの時もそうだったわね……私のことならともかくとして、クレアを安心させるというのなら二人が居たほうがいいとは思う。
それだと、ここから先の話をしていくのは難航しそうね。
「ルビー。私達は三人だけで話すことがあるの」
「かしこまりました。何かございましたらベルにてお願いします」
「うん、ありがとう」
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