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学園編

79 お嬢様は不安を募らせる

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 あの二人はいいとして、これからは対策が必要になってくるわね。学園の中では、生徒以外は立ち入りを禁止されている。学園で起こりうるトラブルは、私個人で対処するしか無い。
 今回は大した被害ではなかったけど、大事になる可能性も十分にある。

 それに……あの言葉。イミゴ、クレアたちはすごくその言葉に対して怒りを顕にしていた。
 あの言い方といい、二人の様子からしてかなり酷い言葉になるのだろうけど、正直どういった意味なのかが分からない。

 私と一緒にいれば、その言葉を聞かざるを得ない。見た所クレアは正義感によるものなのか、友達を悪く言われるのか、どちらにしてもいい気分ではないみたいね。
 友だちと言ってもそれほど親しいという訳でもないし、離れるのなら速いほうがいいのかもしれないわね。

「イクミ様。いかがされましたか?」

「ここは屋敷とは違い、今回のようなことがエスカレートすれば、変な男に襲われるかもしれないわね」

 学園の中だからと言って、今回のように私に何かしらも危害を加える輩がいる。
 今日のはまだまだ可愛い方だけど、何かをしようとすれば、屋敷に伝わったしまう恐れがある。

「あの程度が続くのなら問題ないけど……」

「問題大ありです。良いですか? どのようなことがあったにせよ、こんな事は許されるはずはないのです。イクミ様が何もしないというのであれば。私にも考えがございます」

 考えって……
 というか、かなり怒っている感じだ。
 屋敷よりも前に、クレアを何とかする必要がありそうね。

「ちょっと、クレア? えっと、ごめん。怒った?」

「はい。怒っております」

「いや、でもね、私も悪い所はあったんだよ? あの殿下も知っているはずだよ? 入学式前日の日にあったことを……今回の火種は元々、私が悪かったことなのよ」

 クレアの両腕を掴み、彼女を宥めようとしても何も効果がない。
 手を震わせ、ゆっくりと吐く息ですら、力が込められているようにも感じられる

「く、クレア?」

 今の会話が、何処でクレアをここまで怒らせるきっかけになったの?
 私の手を掴み引き剥がすと、カーテンを開け、部屋の扉が勢いよく開けられる。
 大きな音に、自然と体がビクリと驚き、クレアの怒りの度合いを現している。

「ライオット殿下。イクミ様がご入学式に時に、どのような事があったのですか?」

「ああ、なるほど。やはり彼らでしたか、ええ覚えていますとも」

「それでしたら、私のお付き合いさせて頂いてもよろしいですね、殿下? よもや、お一人で行動されるなどと申さないようお願いします」

 言葉はすごく丁寧に聞こえるのだけど、不安要素でしか無いわよ。

「本来であれば、そうしたいのはやまやまなんだけど。行こうか、クレア」

「はい、殿下」

 私を置き去りに、何を勝手に自己完結して、話を進めているの?
 二人の言動とお怒りな様子からして、話している内容からして犯人を特定して吊し上げでもするつもりなの?
 そんな事をすれば問題は大きくなるし、何より王族と公爵家の令嬢が何を考えているのよ。

「待って待って。二人共早まらないで、お願い」

「イクミ様。そのようなお姿で出歩くものでは有りません」

「グセナーレ様はベッドで待っていてくださるだけで結構ですので」

 いやいや、会話になっていないから。
 私は必死で二人の腕を掴み、引っ張るが力も体重もないので、二人からすれば抵抗にうちに入っていないのか微動だにしない。
 そんな中、丁度いい所に私達の所へとあの学園長が走ってやってきていた。

「グセナーレ様。ご無事ですか!?」

 猛ダッシュにもかかわらず私を抱きかかえ、予想だにしない行動にびっくりしていた私はまた先程のベッドに降ろされる。
 学園長は、涙を流し私の手を取って跪いている。

「えっと、学園長?」

「お怪我などなされてはおりませんか? このお召し物は?」

「これは殿下からお借りしているもので……というか、一体どういうことですか?」

 クレアと殿下の、怒り具合といい。
 学園長の取り乱しもおかしい。
 今回の揉め事は私が思っている以上に大変なことだというのかしら?

 たかが子供のイタズラ。だけど、全てが子供のやった事で済まされるほど、この学園の規律は優しいものではないはず。
 魔法というものがあるので一歩間違えれば、私だってただでは済まないのは分かっている

 その事もあって、学園の中だから大きな問題はないと思っていたのだけど……学園長としても、こんな事を問題にしたくはないでしょうね。

「殿下? ライオット殿下、貴方という方が側に居たにも拘らず、これはどういうことですか?」

「申し訳ない。しかし、グセナーレ様は実技は免除されているのだ。私とは別の場所に……いや、これはただの言い訳に過ぎないな」

「グセナーレ様。今後学園では、どうかお一人にならないでください」

 私からすれば、何がどうなっているのかも分からず「はぁ」とだけしか声が出てこない。
 二人は、廊下へと出ていき外で話し合いを始めている。

 学園長は濡れていた私の制服を何かの魔法をかけていた。
 クレアは、私の制服を綺麗にたたみ直し隣へと置いてくれる。
 
 学園長が何かをしたと思ったら、乾かしたということね。
 本当に魔法というものはすごい。
 逆を言えばここの人達からすれば、現代科学もすごいと思うかもしれないわね。

「イクミ様……」

「どうしたの? 本当に私は大丈夫だから、そんな顔しないで。クレアには笑っていて欲しいの、友達がそんな顔をしていたら私だって辛いよ?」
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