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学園編
58 お嬢様の旅
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王都へと向かう旅は、順調そのものでこれと言って目立った問題もなく進んでいた。
いつものような野営をし、買い出しのために立ち寄った街では宿に泊まり。
だけど街に着いても危険性を回避するという名目で、私は自由に出歩くことも許されることはなかった。
とはいえ、時間を図ったかのように毎回街に着くときは夜になっている。宿の部屋で暇な時間を持て余すということもなく、寝て起きたら出発を繰り返していた。
そんな日が続き、王都はもうすぐのところまでやってきた。
「あと、二、三日と言った所でしょうか? お嬢様は大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。ルビーは心配性だよ。もう慣れたよ、この移動が普通の旅じゃないことぐらい最初から想定済みだよ」
奴隷達が増えたためか、先行部隊が出ているはずなのに、私の馬車を取り囲む人の数が多い。
野営地でのテントも慣れたし、皆にできるだけ話しかけても、疲労の様子もなく元気そうだったが……
なんというか、わざわざ魔物を倒しに行っているのじゃないかと思うぐらい、あちこち回っているようにも思えていた。
その事を何度聞いても、問題無いの返答ばかり。
普通であれば、危険を回避するはずの所を事後報告を受け、私は頭を抱えていた。
生きているドラゴンを見ていなかったけど、ランドドラゴンというものは確かに居た。
だけど、私がそれを横切った時には、死体じゃなくてすでに骨になっていたけど……一瞬でもどんなのだろうと、期待した私が馬鹿だったよ。
その日、野営地にいたバナンに話を聞いてみたが……
『あんなのはただ、でかいトカゲみたいなもんだ』
「流石にあれは、頭がおかしいとしか言いようがないよ。要人警護なのに、何でわざわざ倒しに行くわけ? 私の部隊はいつから狂人の集まりになったのよ!」
「落ち着いてくださいお嬢様。冒険部隊の方々は、お嬢様に自分の活躍を見て頂きたいだけなのです。以前お嬢様が似たようなことを仰っていたではありませんか? それを狂人呼ばわりは失礼です」
以前なら確かに似たようなことは思っていたけどね。だけどさ、オークと同等に扱っていい話なのあれは?
そして、私の前にはルビーしか座っていない。
私の馬車の改良に改良を重ね、前に使っていた時よりも一回りも二周りも大きくなっている。
私達二人だけだと、かなり広くも感じる……そもそもの予定であれば、護衛であるはずの二人もここに座っているはずなのに、狩りに出かけてしまっている。
ダラダラと過ごす事に抵抗のない私はともかく、二人は退屈だったのかと思い『狩りに行ってもいいよ』と言ったものの、それを真に受けて、丸一日顔を見ないという日が出てくる始末
この部隊唯一の癒やしである、あのフェルさえも一緒になって参加している。
「それは分かっているつもりだけどさ、バナン達の強さが他の冒険者に比べてなんであんなに高いのか……」
「きっと、お嬢様に褒めて貰えるのが嬉しくて、皆懸命に頑張っているからでしょう」
労いの言葉はかけているけど、いくらなんでも幼稚園児並みの発想ではないかしら?
随分と前から冒険部隊の活躍は、各地に散らばり偉業とも言えるほどに成果を出している。
バナンの他に、奴隷紋を開放して部隊を任せているのだけど、普通の冒険者達と私の冒険部隊との違いは、依頼は全て達成しているということだ。
別に失敗が許さないなんて言ってもいないし、それについて責める気もない。
しかし、採集や討伐をだけに絞り、要人警護や商人の護衛などは受けないようにした。
トラブルを避けるためであり、私と皆を守るためでもあった。
以前、女将さんの所に行ったときに絡まれもしたけど、冒険者の殆どは少数が活動している。
ここにいる部隊はすでに百を超えている。数の暴力は本当に恐ろしいと言えるのかもしれないわね。
「皆の活躍があるから、私はこうして危険がなく馬車に揺られる毎日を過ごしているのね。それについては感謝しているわ。だけどさ、馬車って増えるものなの?」
「それは、王都も近いですので、討伐……いえ、先行部隊が合流しているのでしょう」
今、討伐ってはっきり言ったわね。
見慣れない馬車は、空だったはずなのにいつの間にか魔物の素材が大量に積み込まれている。
一部の魔物は素材として武器や防具、装飾品や生活用品にと幅広く使われている。
この馬車に使われている魔法石の材料にもなっているらしい。
そうではない魔物も、駆除としての報酬もあるので集まればそれなりの金額へと変わる。
しかし、道中立ち寄った街で馬車を追加で買い、また素材専用車にする辺りこの団体がおかしいことを物語っている。
推測でしか無いのだけど、立ち寄った冒険者ギルドである程度換金したにもかかわらず、増えていく素材の山。
ギルドにいたあのお姉さんみたいに、怒ってなければいいのだけどね。
私に隠れて、ルビーの言う討伐部隊が結成されていたのはいいとして、一体何のために態々危険を犯してまで……
私も大人になったわね。昔ならここで怒っていたでしょうね。
十五歳になり、許容を広く持っている。決して、諦めたとか、もういいやという投げやりではない。
皆の思いを知っているからこそ、私は彼らに対して怒るということはあまりしなくなった。
なぜなら言った所で……言う事聞かないし。
リーダーであるはずのバナンが、一番言うことを聞かないというのが全て悪い!
「あれだけあれば、王都での生活には苦労なさそうね。いくらになるのかすら想像できないわよ」
「大変残念ではありますが、王都までの日数を考えますと、少し心許ないようにも思われます。お嬢様の服は全て新調しなければいけませんし。家具も必要に……」
「家具はわかるけど、服は全て持ってきているよ? お金に関しては、これまでと同様に派遣をしていくのだから、あれだけあれば十分だと思うよ」
窓の外へと目をやると、警備をしている人と目が合い軽く手を振った。
私の周りは和やかだけど、その討伐部隊はどんな惨状なのかしら?
一抹の不安を懐きつつ、太陽はもうじき見えなくなる。
いつものような野営をし、買い出しのために立ち寄った街では宿に泊まり。
だけど街に着いても危険性を回避するという名目で、私は自由に出歩くことも許されることはなかった。
とはいえ、時間を図ったかのように毎回街に着くときは夜になっている。宿の部屋で暇な時間を持て余すということもなく、寝て起きたら出発を繰り返していた。
そんな日が続き、王都はもうすぐのところまでやってきた。
「あと、二、三日と言った所でしょうか? お嬢様は大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。ルビーは心配性だよ。もう慣れたよ、この移動が普通の旅じゃないことぐらい最初から想定済みだよ」
奴隷達が増えたためか、先行部隊が出ているはずなのに、私の馬車を取り囲む人の数が多い。
野営地でのテントも慣れたし、皆にできるだけ話しかけても、疲労の様子もなく元気そうだったが……
なんというか、わざわざ魔物を倒しに行っているのじゃないかと思うぐらい、あちこち回っているようにも思えていた。
その事を何度聞いても、問題無いの返答ばかり。
普通であれば、危険を回避するはずの所を事後報告を受け、私は頭を抱えていた。
生きているドラゴンを見ていなかったけど、ランドドラゴンというものは確かに居た。
だけど、私がそれを横切った時には、死体じゃなくてすでに骨になっていたけど……一瞬でもどんなのだろうと、期待した私が馬鹿だったよ。
その日、野営地にいたバナンに話を聞いてみたが……
『あんなのはただ、でかいトカゲみたいなもんだ』
「流石にあれは、頭がおかしいとしか言いようがないよ。要人警護なのに、何でわざわざ倒しに行くわけ? 私の部隊はいつから狂人の集まりになったのよ!」
「落ち着いてくださいお嬢様。冒険部隊の方々は、お嬢様に自分の活躍を見て頂きたいだけなのです。以前お嬢様が似たようなことを仰っていたではありませんか? それを狂人呼ばわりは失礼です」
以前なら確かに似たようなことは思っていたけどね。だけどさ、オークと同等に扱っていい話なのあれは?
そして、私の前にはルビーしか座っていない。
私の馬車の改良に改良を重ね、前に使っていた時よりも一回りも二周りも大きくなっている。
私達二人だけだと、かなり広くも感じる……そもそもの予定であれば、護衛であるはずの二人もここに座っているはずなのに、狩りに出かけてしまっている。
ダラダラと過ごす事に抵抗のない私はともかく、二人は退屈だったのかと思い『狩りに行ってもいいよ』と言ったものの、それを真に受けて、丸一日顔を見ないという日が出てくる始末
この部隊唯一の癒やしである、あのフェルさえも一緒になって参加している。
「それは分かっているつもりだけどさ、バナン達の強さが他の冒険者に比べてなんであんなに高いのか……」
「きっと、お嬢様に褒めて貰えるのが嬉しくて、皆懸命に頑張っているからでしょう」
労いの言葉はかけているけど、いくらなんでも幼稚園児並みの発想ではないかしら?
随分と前から冒険部隊の活躍は、各地に散らばり偉業とも言えるほどに成果を出している。
バナンの他に、奴隷紋を開放して部隊を任せているのだけど、普通の冒険者達と私の冒険部隊との違いは、依頼は全て達成しているということだ。
別に失敗が許さないなんて言ってもいないし、それについて責める気もない。
しかし、採集や討伐をだけに絞り、要人警護や商人の護衛などは受けないようにした。
トラブルを避けるためであり、私と皆を守るためでもあった。
以前、女将さんの所に行ったときに絡まれもしたけど、冒険者の殆どは少数が活動している。
ここにいる部隊はすでに百を超えている。数の暴力は本当に恐ろしいと言えるのかもしれないわね。
「皆の活躍があるから、私はこうして危険がなく馬車に揺られる毎日を過ごしているのね。それについては感謝しているわ。だけどさ、馬車って増えるものなの?」
「それは、王都も近いですので、討伐……いえ、先行部隊が合流しているのでしょう」
今、討伐ってはっきり言ったわね。
見慣れない馬車は、空だったはずなのにいつの間にか魔物の素材が大量に積み込まれている。
一部の魔物は素材として武器や防具、装飾品や生活用品にと幅広く使われている。
この馬車に使われている魔法石の材料にもなっているらしい。
そうではない魔物も、駆除としての報酬もあるので集まればそれなりの金額へと変わる。
しかし、道中立ち寄った街で馬車を追加で買い、また素材専用車にする辺りこの団体がおかしいことを物語っている。
推測でしか無いのだけど、立ち寄った冒険者ギルドである程度換金したにもかかわらず、増えていく素材の山。
ギルドにいたあのお姉さんみたいに、怒ってなければいいのだけどね。
私に隠れて、ルビーの言う討伐部隊が結成されていたのはいいとして、一体何のために態々危険を犯してまで……
私も大人になったわね。昔ならここで怒っていたでしょうね。
十五歳になり、許容を広く持っている。決して、諦めたとか、もういいやという投げやりではない。
皆の思いを知っているからこそ、私は彼らに対して怒るということはあまりしなくなった。
なぜなら言った所で……言う事聞かないし。
リーダーであるはずのバナンが、一番言うことを聞かないというのが全て悪い!
「あれだけあれば、王都での生活には苦労なさそうね。いくらになるのかすら想像できないわよ」
「大変残念ではありますが、王都までの日数を考えますと、少し心許ないようにも思われます。お嬢様の服は全て新調しなければいけませんし。家具も必要に……」
「家具はわかるけど、服は全て持ってきているよ? お金に関しては、これまでと同様に派遣をしていくのだから、あれだけあれば十分だと思うよ」
窓の外へと目をやると、警備をしている人と目が合い軽く手を振った。
私の周りは和やかだけど、その討伐部隊はどんな惨状なのかしら?
一抹の不安を懐きつつ、太陽はもうじき見えなくなる。
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