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奴隷商人編
49 お嬢様は魔法の世界を再確認する
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「何を仰っているのですが? 明日からはこちらを使いお送りいたします」
「冗談だよね?」
教科書や時代劇で見ただけの、昔に使われていたであろうあれによく似ていた物が当たり前のように置かれていたのだ。
駕籠は、昔は要人を担ぎ長い距離の移動に使われたりもした。
しかし、持ち手は四人分あるように見える。例えるのなら神輿。
ぶら下がりはしているものの、狙ってくれと言わんばかりに屋根はキラキラと光るものが付けられ、四隅にも幾つも宝石のような石がぶら下がっていた。
駕籠だろうが神輿だろうが、あんな物に乗っていたら、私はあの窓から水じゃないナニかを吐き出すライオンになる。
「まってまって、無理無理無理だから」
「どうしたんですかい?」
「バナン。アレだよアレ。私アレに乗るの?」
「そうですが、何が問題なんだ?」
「私、歩くよ。こう見えても結構体力もついてきたし」
ダンスのレッスンや軽い走り込みのおかげである程度の自信はある。
休憩の回数を増やせばなんとかなる。いや、ならないかもしれないけど。
リバースはダメ。
「森の中をお嬢が歩くだけでも危険だ。いくら命令でも従えない」
「だってほら、こんなのを持っていたら皆が危ないだろうし、足を滑らせるかもしれないでしょ?」
「そうだ、お嬢が足を滑られたら大変だ」
「いやいや、私じゃなくて。これを担いでいる奴隷が危ないでしょ? 怪我させちゃうかもしれないでしょ?」
「魔法を使えるものが周りにいるから、そんな事があっても何も問題にはならないようにしている」
「へー、魔法って便利だねー」
バナンの合図で、冒険部隊の魔法士が駕籠らしきモノを浮遊させている。
私の「すごい」という言葉に魔法士はニマニマと嬉しそうに口元を緩めていた。
「ルビーはどうするの?」
「私ですか? お嬢様のお側におりますが、何か?」
何かって何?
どう見ても一人用。私が足を伸ばして座れる程度のスペース。
それとも上に座るの? いやいや、それは流石にないよね。
「もしかして歩くつもり? そんな格好だと危ないよ? 狭いかもしれないけどルビーがアレに乗ればいいんじゃない?」
「御冗談を、主を歩かせる侍女がいるでしょうか? そもそも、いきなりどうされたのですか?」
「あんなのに乗っていたら、私絶対に吐く。吐く自信が生まれた」
「そのようなことを堂々と申さないでください。ですが、あちらでしたらそのようなことは起こり得ないと思うのですが」
その根拠のない自信はどこから生まれてくるのだろう。
この間だって出ちゃったでしょ。あれでどれだけの大惨事が生まれたと思っているのよ。
港町に向かう途中、山道でリバースしたため御者を努めていた奴隷は、詫びの土下座で頭から血を流すわ、私も気持ち悪くて何も言えないままでいると、ルビーは半狂乱し自身を責め始める。
そして、私はなんとか立ち上がり、残っていた最後の分を自らの服にぶちまけたのだ。
「以前のこともありますので、少しだけ乗って頂いたほうがいいのかもしれません」
私は籠に乗り、四人の力により支えられ森の中へと入っていく……
当たり前のように隣を歩くルビー。そして、周辺の警邏をものすごいスピードでこなすクロ。
地面に居たと思えば、木の枝の上に移動しているしかと思えば、私の近くに戻ってきていた。
子供の頃にああいう忍者のアニメあった気がする。
「いかがですか?」
「ああ、うん。中は大丈夫なんだけど……どうなっているの?」
「ではそろそろ戻りましょう」
「傾斜が全く感じられなかったし、振動だってアレはどういうことなの? 左右の窓は普通に外を見えてたし」
「魔法石を使ってあります。中には揺れによる振動と、登坂による傾きも水平に制御してあります。この度の馬車も同様でしたがお気づきになられませんでしたか?」
へぇー、なにそれ、すごいんだけど。恐らくきっとお高いんでしょうねー。
新しい馬車が全然揺れていないのはそういうことだったのねー。
うん、すごく快適だったよ、ありがとうね。
でも、へぇー、そうなんだー、全然気が付かなかったよー。
「お嬢様にためであればその程度、些細なものにございます」
「さらっと心を読まないで。まあ、ありがとうね。対処してくれてて」
「以前お嬢様に負担をかけてしまい、申し訳ございませんでした」
あの時のことを言っているのね。
盛大にぶちまけたし、私のそれを気にしてたのだけど……
それにしても魔法石ね。どれだけの価値があるんだろう?
「あのエルフの話ですと徒歩でまる二日はかかるとのことですが。内部のことを考えるともう少しかかると思っていたほうがいいかもしれません」
「おかえり、クロ」
私達が引き返すと同時に、少し置くまで偵察に出ていた。
護衛をするのに状況を知りたいということで許可したのだけど……私の前でこうして跪かれるとついつい頭をなでてしまうのよね。
「ありがとうございます」
「いい匂いもしてきたし、行きましょうか」
明日の野営は、こんな風にはならないはず。と思っていたのだけど、ここには十人程残し人力で持っていくことになっているらしい……
やっぱり、なにかおかしい気がする。
「冗談だよね?」
教科書や時代劇で見ただけの、昔に使われていたであろうあれによく似ていた物が当たり前のように置かれていたのだ。
駕籠は、昔は要人を担ぎ長い距離の移動に使われたりもした。
しかし、持ち手は四人分あるように見える。例えるのなら神輿。
ぶら下がりはしているものの、狙ってくれと言わんばかりに屋根はキラキラと光るものが付けられ、四隅にも幾つも宝石のような石がぶら下がっていた。
駕籠だろうが神輿だろうが、あんな物に乗っていたら、私はあの窓から水じゃないナニかを吐き出すライオンになる。
「まってまって、無理無理無理だから」
「どうしたんですかい?」
「バナン。アレだよアレ。私アレに乗るの?」
「そうですが、何が問題なんだ?」
「私、歩くよ。こう見えても結構体力もついてきたし」
ダンスのレッスンや軽い走り込みのおかげである程度の自信はある。
休憩の回数を増やせばなんとかなる。いや、ならないかもしれないけど。
リバースはダメ。
「森の中をお嬢が歩くだけでも危険だ。いくら命令でも従えない」
「だってほら、こんなのを持っていたら皆が危ないだろうし、足を滑らせるかもしれないでしょ?」
「そうだ、お嬢が足を滑られたら大変だ」
「いやいや、私じゃなくて。これを担いでいる奴隷が危ないでしょ? 怪我させちゃうかもしれないでしょ?」
「魔法を使えるものが周りにいるから、そんな事があっても何も問題にはならないようにしている」
「へー、魔法って便利だねー」
バナンの合図で、冒険部隊の魔法士が駕籠らしきモノを浮遊させている。
私の「すごい」という言葉に魔法士はニマニマと嬉しそうに口元を緩めていた。
「ルビーはどうするの?」
「私ですか? お嬢様のお側におりますが、何か?」
何かって何?
どう見ても一人用。私が足を伸ばして座れる程度のスペース。
それとも上に座るの? いやいや、それは流石にないよね。
「もしかして歩くつもり? そんな格好だと危ないよ? 狭いかもしれないけどルビーがアレに乗ればいいんじゃない?」
「御冗談を、主を歩かせる侍女がいるでしょうか? そもそも、いきなりどうされたのですか?」
「あんなのに乗っていたら、私絶対に吐く。吐く自信が生まれた」
「そのようなことを堂々と申さないでください。ですが、あちらでしたらそのようなことは起こり得ないと思うのですが」
その根拠のない自信はどこから生まれてくるのだろう。
この間だって出ちゃったでしょ。あれでどれだけの大惨事が生まれたと思っているのよ。
港町に向かう途中、山道でリバースしたため御者を努めていた奴隷は、詫びの土下座で頭から血を流すわ、私も気持ち悪くて何も言えないままでいると、ルビーは半狂乱し自身を責め始める。
そして、私はなんとか立ち上がり、残っていた最後の分を自らの服にぶちまけたのだ。
「以前のこともありますので、少しだけ乗って頂いたほうがいいのかもしれません」
私は籠に乗り、四人の力により支えられ森の中へと入っていく……
当たり前のように隣を歩くルビー。そして、周辺の警邏をものすごいスピードでこなすクロ。
地面に居たと思えば、木の枝の上に移動しているしかと思えば、私の近くに戻ってきていた。
子供の頃にああいう忍者のアニメあった気がする。
「いかがですか?」
「ああ、うん。中は大丈夫なんだけど……どうなっているの?」
「ではそろそろ戻りましょう」
「傾斜が全く感じられなかったし、振動だってアレはどういうことなの? 左右の窓は普通に外を見えてたし」
「魔法石を使ってあります。中には揺れによる振動と、登坂による傾きも水平に制御してあります。この度の馬車も同様でしたがお気づきになられませんでしたか?」
へぇー、なにそれ、すごいんだけど。恐らくきっとお高いんでしょうねー。
新しい馬車が全然揺れていないのはそういうことだったのねー。
うん、すごく快適だったよ、ありがとうね。
でも、へぇー、そうなんだー、全然気が付かなかったよー。
「お嬢様にためであればその程度、些細なものにございます」
「さらっと心を読まないで。まあ、ありがとうね。対処してくれてて」
「以前お嬢様に負担をかけてしまい、申し訳ございませんでした」
あの時のことを言っているのね。
盛大にぶちまけたし、私のそれを気にしてたのだけど……
それにしても魔法石ね。どれだけの価値があるんだろう?
「あのエルフの話ですと徒歩でまる二日はかかるとのことですが。内部のことを考えるともう少しかかると思っていたほうがいいかもしれません」
「おかえり、クロ」
私達が引き返すと同時に、少し置くまで偵察に出ていた。
護衛をするのに状況を知りたいということで許可したのだけど……私の前でこうして跪かれるとついつい頭をなでてしまうのよね。
「ありがとうございます」
「いい匂いもしてきたし、行きましょうか」
明日の野営は、こんな風にはならないはず。と思っていたのだけど、ここには十人程残し人力で持っていくことになっているらしい……
やっぱり、なにかおかしい気がする。
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