32 / 49
7.久遠の祈りの夜
虎穴に入らずんば
しおりを挟む
詩依良の病院を訪れた翌日。沙耶とユウは、早速行動を開始する事とした。
昨日の詩依良や和俊の話では、現状で館の怪異は消滅させる対象となっている。
そしてそうなっている以上、いつ「院」が動き出すのか知れたものではない。
詩依良と和俊の話では、数日中にも決着をつける算段だと考えられ。
それは、もしかすれば今日かもしれないのだ。
「……おかしいですね」
真砂角高校の裏手に当たる山の麓に来ても、予測された「院」の奇獲師達の姿は見えない。それどころか、その気配さえ感じられなかったのだ。
ユウが怪訝な声を上げるのも、それは当然というものであった。
「もしかしたら、決行日ってまだ先なのかもしれないね」
周囲をキョロキョロと見まわしながら、沙耶が弾んだ声でそんな事を言った。
勿論、その可能性も考えられない訳ではない。
だが冷静に、そして普通の考えを持てば、そんな事はありえないのではないかという結論に達して然りだ。
消滅させる事自体を先延ばしにしたとしても、当然の如く館の怪異を野放しにしておいて良い訳がない。
「そう……ですね」
余りにも楽天的な考え方の沙耶に、ユウは苦笑を浮かべて答えていた。
正直なところ、本当は後2、3日の猶予が欲しいのは間違いのない処であった。ユウの体調は、実のところ復調しているとは言い難かった。
館の怪異の中に飛び込み、沙耶と自分を護り続け、最後は詩依良と志穂をも庇い続けたのだ。
霊力を活動の源としているユウにしてみれば、激しく霊力を消耗した今の状況はベストコンディションには程遠い状態だった。
そのお陰で……と言う訳でもないのだが、対して沙耶の体調は万全といえた。
一時的に強い霊力を放出した沙耶だが、それも心身に不調をきたす程ではない。それだからこそ、彼女のポテンシャルは脅威ともいえるのだが。
そしてこの場合、沙耶の状態に問題がないと言っても余り意味がないともいえた。
何故なら沙耶は、回復や防御の術が使えず自らを護る術さえ持たないからである。
全くその手の修行や手解きを受けていない沙耶は、言うなれば素人同然……一般人に近い。
そのような理由で、現在重要視されるのはユウの現状な訳なのだが。
だが残念ながら、ユウのコンディションが戻るまでの猶予はない。
詩依良達「院」の者等が、いつ館の怪異を消滅させる為に動くかは分からないのだ。
もしもそれが数日先だったとしても、当然の事ながら先んじて周囲を封鎖される可能性だって低くはない。
動きを封じ込められる前に少しでも早く動く必要があり、だからこそ沙耶とユウは詩依良と会った翌日に行動を開始したのだった。
沙耶とユウは示し合わせて、山頂へと向かう山道へと入った。
先日同様、ユウには館の怪異の霊気は未だ殆ど感じる事は出来ない。
もしかすれば沙耶には何か感じられるものもあるのだろうが、真剣な面持ちの沙耶がその事に言及する事は無かった。
ただし、ユウが疑問に感じていたのはそれだけが理由でもなかった。
(一宮和俊の話を考えれば、監視の1つもあって然り……なのですが)
昨日の話では、沙耶の方にも「院」からの監視がつくという話であった。
そして沙耶の能力、更には稀有中の稀有であるところの「真眼」の持ち主かもしれないと考えれば、早急な対応があって然りである。
しかし今は、それさえも感じる事が出来ない。
そこから考えられる見解は。
(手配に手間取っているのかそれとも、一切の気配さえ隠せる手練れという事ですか……)
そういう事である。
沙耶を怯えさせたくないユウは口にこそ出さないが、その様な考えに至ったユウは緊張感を更に高めていた。
楽観論に傾倒出来ないユウは、考えた中で後者の意見を採用したのだ。
山道を行く2人は、殊更に時間を掛けて歩を進めた。
―――沙耶は……緊張と恐怖から。
―――ユウは……沙耶とは違う緊張感と周囲の警戒により。
それでも然程時間を掛けることも無く、2人は昨日と同じ場所……館の怪異が正面に伺える場所まで辿り着いたのだった。
緩い坂道ではあっても、それほど険しいという山道ではなかった。
「はぁ……はぁ……」
それでも沙耶は山頂にたどり着いた時点で息を切らし、すでに顔を青くしていたのだった。
そこから推察出来るのは、やはり館の怪異の霊気に当てられた……若しくはそこから何かしらを読み取ったからであろう。
「こ……こんなことだったら……はぁ……はぁ……。もうちょっと体力つけておく……べきだったかなぁ……」
苦笑を浮かべながら、息も絶え絶えに沙耶が漏らした。
しかしそのセリフで、やはり沙耶が悪霊の妖気を感じて影響を受けている事をユウは察した。
「……沙耶」
不安げな表情で、ユウは沙耶へ気遣いの言葉を掛ける。
そこにはどこか困ったような、彼女を心配する雰囲気も含まれている。
ユウの口から出てこなかった台詞を続けるならば「何故辛いならそう言ってくれないのですか?」であろう。
沙耶は、ユウの事を気遣って我慢していたのだ。
「あはは……。結界の作り方でも習っておけば良かったねぇ」
そんなユウの心情をはっきりと感じて、沙耶はバツが悪そうに乾いた笑いを上げて答えた。
これからユウは、沙耶の身を護る為にまた無理をするハメになるだろう。
その事が分かる沙耶だから、少しでもユウの負担を軽くしようとしていたのだ。
「ふふふ。すべてが終わりまた戻ってきたら、詩依良さんにお願いしましょう」
沙耶がやせ我慢を認める発言をした事で、その場には少なからず和んだ空気が流れ。
だからこそ、ユウも沙耶の軽口に冗談で答えたのだった。
もしも沙耶たちのやろうとしている事が終了し無事に戻ってきたとしても、果たして詩依良の元へと顔を出せるかどうかは怪しいところだった。
何せ彼女たちは、その詩依良が強く禁止している事をしようとしているのだから。
「あはは。そうだね」
沙耶にもそれが分かっているだろうが、それでも彼女もそう返したのだった。
そこには、本当にそうなれば良いと願う気持ちが多分に含まれていた。
洋館の怪異は、未だ何のアクションも起こしていない。やはり敵意のない者に対しては、館の怪異の方も攻撃姿勢を見せないようであった。
1つ強く短い嘆息を漏らし、沙耶はしっかりとした足取りで館へと近付いて行った。
沙耶の後を追うように、その後方からユウも彼女に付き従う。
沙耶は先ほどから強く妖気を感じてはいるものの、そこからは害意や敵意を感じ取ってはいない。
彼女は彼女しか知り得ない方法で、館の怪異が敵対行動をとる原理を察しているのだろう。
沙耶はズンズンと館へと接近し、ついには入り口の扉が手の掛かる距離までやって来た。
そして。
「……私たち……あなた達とお話がしたいの」
小さく、しかしハッキリと、まるで館の怪異に話しかけるように呟いたのだった。
そして、ドアノブへと手を掛ける。
沙耶のやりように口を挟まず、出来る限り自然体で彼女に付き従うユウだが、その心中はハラハラドキドキだ。
それでも、沙耶に躊躇う気配を感じられないユウは、ある意味我慢強くその行動を黙認していた。
そして、扉がゆっくりと開かれる。
未だ、館からは何のアプローチも行われない。
そして沙耶は、自ら開けた扉より室内へと足を踏み入れた。
勿論、それにユウも追随する。
なんの障害も受けぬまま、沙耶とユウは洋館の怪異の内部に入る事に成功したのだった。
そして、扉はゆっくりと、自動的に閉じられ。
またしても施錠のする音だけが不自然なほど大きく響いたのだった。
昨日の詩依良や和俊の話では、現状で館の怪異は消滅させる対象となっている。
そしてそうなっている以上、いつ「院」が動き出すのか知れたものではない。
詩依良と和俊の話では、数日中にも決着をつける算段だと考えられ。
それは、もしかすれば今日かもしれないのだ。
「……おかしいですね」
真砂角高校の裏手に当たる山の麓に来ても、予測された「院」の奇獲師達の姿は見えない。それどころか、その気配さえ感じられなかったのだ。
ユウが怪訝な声を上げるのも、それは当然というものであった。
「もしかしたら、決行日ってまだ先なのかもしれないね」
周囲をキョロキョロと見まわしながら、沙耶が弾んだ声でそんな事を言った。
勿論、その可能性も考えられない訳ではない。
だが冷静に、そして普通の考えを持てば、そんな事はありえないのではないかという結論に達して然りだ。
消滅させる事自体を先延ばしにしたとしても、当然の如く館の怪異を野放しにしておいて良い訳がない。
「そう……ですね」
余りにも楽天的な考え方の沙耶に、ユウは苦笑を浮かべて答えていた。
正直なところ、本当は後2、3日の猶予が欲しいのは間違いのない処であった。ユウの体調は、実のところ復調しているとは言い難かった。
館の怪異の中に飛び込み、沙耶と自分を護り続け、最後は詩依良と志穂をも庇い続けたのだ。
霊力を活動の源としているユウにしてみれば、激しく霊力を消耗した今の状況はベストコンディションには程遠い状態だった。
そのお陰で……と言う訳でもないのだが、対して沙耶の体調は万全といえた。
一時的に強い霊力を放出した沙耶だが、それも心身に不調をきたす程ではない。それだからこそ、彼女のポテンシャルは脅威ともいえるのだが。
そしてこの場合、沙耶の状態に問題がないと言っても余り意味がないともいえた。
何故なら沙耶は、回復や防御の術が使えず自らを護る術さえ持たないからである。
全くその手の修行や手解きを受けていない沙耶は、言うなれば素人同然……一般人に近い。
そのような理由で、現在重要視されるのはユウの現状な訳なのだが。
だが残念ながら、ユウのコンディションが戻るまでの猶予はない。
詩依良達「院」の者等が、いつ館の怪異を消滅させる為に動くかは分からないのだ。
もしもそれが数日先だったとしても、当然の事ながら先んじて周囲を封鎖される可能性だって低くはない。
動きを封じ込められる前に少しでも早く動く必要があり、だからこそ沙耶とユウは詩依良と会った翌日に行動を開始したのだった。
沙耶とユウは示し合わせて、山頂へと向かう山道へと入った。
先日同様、ユウには館の怪異の霊気は未だ殆ど感じる事は出来ない。
もしかすれば沙耶には何か感じられるものもあるのだろうが、真剣な面持ちの沙耶がその事に言及する事は無かった。
ただし、ユウが疑問に感じていたのはそれだけが理由でもなかった。
(一宮和俊の話を考えれば、監視の1つもあって然り……なのですが)
昨日の話では、沙耶の方にも「院」からの監視がつくという話であった。
そして沙耶の能力、更には稀有中の稀有であるところの「真眼」の持ち主かもしれないと考えれば、早急な対応があって然りである。
しかし今は、それさえも感じる事が出来ない。
そこから考えられる見解は。
(手配に手間取っているのかそれとも、一切の気配さえ隠せる手練れという事ですか……)
そういう事である。
沙耶を怯えさせたくないユウは口にこそ出さないが、その様な考えに至ったユウは緊張感を更に高めていた。
楽観論に傾倒出来ないユウは、考えた中で後者の意見を採用したのだ。
山道を行く2人は、殊更に時間を掛けて歩を進めた。
―――沙耶は……緊張と恐怖から。
―――ユウは……沙耶とは違う緊張感と周囲の警戒により。
それでも然程時間を掛けることも無く、2人は昨日と同じ場所……館の怪異が正面に伺える場所まで辿り着いたのだった。
緩い坂道ではあっても、それほど険しいという山道ではなかった。
「はぁ……はぁ……」
それでも沙耶は山頂にたどり着いた時点で息を切らし、すでに顔を青くしていたのだった。
そこから推察出来るのは、やはり館の怪異の霊気に当てられた……若しくはそこから何かしらを読み取ったからであろう。
「こ……こんなことだったら……はぁ……はぁ……。もうちょっと体力つけておく……べきだったかなぁ……」
苦笑を浮かべながら、息も絶え絶えに沙耶が漏らした。
しかしそのセリフで、やはり沙耶が悪霊の妖気を感じて影響を受けている事をユウは察した。
「……沙耶」
不安げな表情で、ユウは沙耶へ気遣いの言葉を掛ける。
そこにはどこか困ったような、彼女を心配する雰囲気も含まれている。
ユウの口から出てこなかった台詞を続けるならば「何故辛いならそう言ってくれないのですか?」であろう。
沙耶は、ユウの事を気遣って我慢していたのだ。
「あはは……。結界の作り方でも習っておけば良かったねぇ」
そんなユウの心情をはっきりと感じて、沙耶はバツが悪そうに乾いた笑いを上げて答えた。
これからユウは、沙耶の身を護る為にまた無理をするハメになるだろう。
その事が分かる沙耶だから、少しでもユウの負担を軽くしようとしていたのだ。
「ふふふ。すべてが終わりまた戻ってきたら、詩依良さんにお願いしましょう」
沙耶がやせ我慢を認める発言をした事で、その場には少なからず和んだ空気が流れ。
だからこそ、ユウも沙耶の軽口に冗談で答えたのだった。
もしも沙耶たちのやろうとしている事が終了し無事に戻ってきたとしても、果たして詩依良の元へと顔を出せるかどうかは怪しいところだった。
何せ彼女たちは、その詩依良が強く禁止している事をしようとしているのだから。
「あはは。そうだね」
沙耶にもそれが分かっているだろうが、それでも彼女もそう返したのだった。
そこには、本当にそうなれば良いと願う気持ちが多分に含まれていた。
洋館の怪異は、未だ何のアクションも起こしていない。やはり敵意のない者に対しては、館の怪異の方も攻撃姿勢を見せないようであった。
1つ強く短い嘆息を漏らし、沙耶はしっかりとした足取りで館へと近付いて行った。
沙耶の後を追うように、その後方からユウも彼女に付き従う。
沙耶は先ほどから強く妖気を感じてはいるものの、そこからは害意や敵意を感じ取ってはいない。
彼女は彼女しか知り得ない方法で、館の怪異が敵対行動をとる原理を察しているのだろう。
沙耶はズンズンと館へと接近し、ついには入り口の扉が手の掛かる距離までやって来た。
そして。
「……私たち……あなた達とお話がしたいの」
小さく、しかしハッキリと、まるで館の怪異に話しかけるように呟いたのだった。
そして、ドアノブへと手を掛ける。
沙耶のやりように口を挟まず、出来る限り自然体で彼女に付き従うユウだが、その心中はハラハラドキドキだ。
それでも、沙耶に躊躇う気配を感じられないユウは、ある意味我慢強くその行動を黙認していた。
そして、扉がゆっくりと開かれる。
未だ、館からは何のアプローチも行われない。
そして沙耶は、自ら開けた扉より室内へと足を踏み入れた。
勿論、それにユウも追随する。
なんの障害も受けぬまま、沙耶とユウは洋館の怪異の内部に入る事に成功したのだった。
そして、扉はゆっくりと、自動的に閉じられ。
またしても施錠のする音だけが不自然なほど大きく響いたのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる