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一竅
26、母の手
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「何度も、そなたに謝らねばならぬと、思っておったのに、まだ体調が整わぬとデュクトに言われ、ずるずると会いにも来ず、寂しい思いをさせた。悪かった。……ほんに、申し訳なく思う」
シウリンは薄く微笑んだ。
「もう、いいのです。……正直に言えば、母親というものが突然できて、少し戸惑っています。懐かしいとか、寂しいとか、まだ、よくわからないのです」
「……シウリン。何か、望むことはあるか?できる限り、そなたの望みを叶えてやりたい」
これが本当に自分の母親なのだろうか、とシウリンにはいまだに実感の湧かない、若く美しく妖艶な皇后の顔を見つめる。その悲しみに満ちた眼差しは、シウリンを見ているようでその向こうに、死んだユエリンを重ねているように思えた。
シウリンは考える。
双子だという。デュクトもゲルも、両親も、兄の賢親王も、みなシウリンとユエリンはそっくりうり二つだと言う。同じ母、同じ顔の皇子が二人。ユエリンは母に愛されて皇宮で育ち、自分は捨てられて僧院の孤児院で育った。ユエリンが絹の服を着、豪華な食事を供されていた時、シウリンはと言えば――。ゴワゴワした麻の僧衣、藁で編んだ草履、狭く硬い寝台。雑穀の薄い粥と野菜くずの浮いたスープ。いつも量は足りず、お腹を空かせ、水仕事に荒れた手がひりひりと痛んだ。
皇宮に連れてこられ、絹の服を着、食べきれないご馳走を食べ、あたたかな羽毛の布団で眠る。今までの十二年、ユエリンには当たり前のように与えられていたもの。
何故、自分だけ―――? 何故、ユエリンだけ―――?
それなのに、愛されて育ったはずのユエリンは素行が荒れて、泥酔した挙句に落馬して死んだ。何も知らなかった自分は無理矢理に連れてこられ、名前を奪われてユエリンとして生きることを強要されている。そう、この生活は、自分が望んだことではない。
シウリンは言った。
「僕は、僧院に――聖地に帰りたいのです。そのように、皇帝陛下にお願いしていただけませんか」
シウリンを見つめていた皇后の黒い瞳が、一際大きく見開かれた。
「……そなた、僧院に帰りたいと申すか?」
「はい。………僕はすでに、僧侶になる誓いを立てております。天と陰陽との誓いを破るわけにはまいりません」
皇后はわけがわからないという表情で、シウリンを見つめる。
「そなたは……太陽宮では満足な食事も与えられず、朝からずっと働かされていたのであろう? 手を……あんなふうに真っ赤に荒れさせて。母として、子をそのような場所に追いやりたいと思う者があろうか?」
皇后はシウリンの今ではきれいに直った手を、その白い嫋やかな手で包んだ。絹のように滑らかで柔らかなその左手の薬指と小指には、黄金づくりの爪カバーが嵌められ、彼女が労働とは無縁の存在であると知らしめている。高価な香油を塗りこめて丁寧に結い上げられた髪も、素肌の透明感を活かした繊細な化粧も、全て侍女の手によって施され、彼女が手ずから為すことはないのであろう。この手に比べれば、シウリンの手は硬くごつごつとして、アカギレの直った傷跡が縦横に走っている。シウリンは不意に、聖地の森の中の尼僧院で、シウリンの荒れた手に手作りの軟膏を塗り込んでくれた、年老いた尼僧を思い出した。
長く労働に耐えた、皺だらけの、染みのある痩せた手。霜焼けとアカギレで痛むシウリンの手を、優しく撫でさすってくれた、骨ばった感触。
両親も肉親も知らぬシウリンは、『聖典』に見える子を慈しむ母親の像を、いつしかあの尼僧で思い描いていた。しかし、今、シウリンを包む手は、まるで生まれたての子羊のように白く、柔らかく、滑らかで傷一つない。
(これが――母親――?)
それはひどく遠く、自分とかけ離れた存在に思われ、その白い宝石のような肌に触れていることに堪らない恐怖を感じて、思わずその手を振り払ってしまった。
「―――!」
背後でじっと見つめていたゲルとメイローズが息を呑む。
まさか我が子から手を振り払われると思わなかったのか、皇后は驚愕の眼差しでシウリンを見つめ、絞り出すように言った。
「やはり、……恨んでいるのか?」
シウリン自身も、乱暴に手を振り払ったことに動揺していたが、ただそれを押し隠して無言で首を振った。
「……いいえ。恨んでは、いません。ただ……僕が聖地で不幸だったと、思うのはやめてください。僕はあそこで……幸せでした。たくさんの贅沢な物に囲まれて過ごしている、今よりも、ずっと」
「皇宮の暮らしが意に染まぬのか? 妾は、そなたに、みすぼらしい服を着て、粗末な食事をして、卑しい仕事に追いまくられるような、そんな暮らしをしてもらいたくはない。……その、傅役はよくしてはくれるであろう?」
皇后の言葉に、シウリンはちらりとゲルと見た。
「彼は……良くしてくれます。デュクトは嫌な奴だったけど、うまく追い払ったし……。でも、そうではなくて、ここは僕のいるべき場所ではないと、思うんです。僕は、働くことも、祈ることも嫌いではありませんでしたし、山ほどのご馳走よりも、僧院で食べた硬いパンの方が食べたいのです」
皇后は、シウリンの言うことが全く理解できないようで、ただ戸惑ったようにシウリンを見つめている。
「……硬い、パンが好きならば、厨房より取り寄せるがよい。何でも、そなたの要望を言えばよいのだ。だから……」
シウリンは、大きく息を吸い込むと、覚悟を決めて言いきった。
「ここは、嫌なんです! 外に出たい! 友達に会いたい! 聖地に帰りたいんです!」
「殿下……」
やり取りを見かねたゲルが、シウリンの前で跪く。
「もう少し、殿下がこちらの生活に慣れましたら、外出も可能です。それに、年が明けましたら、小侯院にも通うことになります。同じ年頃の皇子たちと、一緒に学ぶ学校のようなものです。もう、少しだけご辛抱いただけたら、もっとよくなると思うのです。だから……どうか、聖地に帰るのだけは、おっしゃらないでください。それだけは、叶えて差し上げることができないのです」
唇を噛んで俯くシウリンを、皇后が痛ましそうな眼差しで見つめる。
「シウリン……そなたの名を、呼ぶことは、これ以後はできぬ。だが……そなたがユエリンでないことは、妾が知っておる。じゃが、そなたが皇宮で皇子として生きることは、皇帝陛下がお決めになったこと。ここで、学問に精進して皇子としての責めを果たすのこそ、そなたの与えられた役割なのじゃ。どうか、堪えてたも」
「……はい、皇后陛下」
しぶしぶ頷くシウリンに、皇后が言った。
「妾はそなたの母親じゃ。公式の場以外では、母上と呼ぶように」
シウリンは目を瞬く。
「は……母上?」
皇后はふっと表情を崩し、柔らかく微笑んだ。
「そう。それでよい。……部屋を出る許可がでたならば、そなたの方から妾の部屋に挨拶に来るように。特に用がない限りは、毎日じゃ。それが、きまり故」
「毎日ですか……」
露骨に面倒くさそうに眉を顰めるシウリンを見て、皇后は扇で口元を隠して、初めてころころと笑った。
シウリンは薄く微笑んだ。
「もう、いいのです。……正直に言えば、母親というものが突然できて、少し戸惑っています。懐かしいとか、寂しいとか、まだ、よくわからないのです」
「……シウリン。何か、望むことはあるか?できる限り、そなたの望みを叶えてやりたい」
これが本当に自分の母親なのだろうか、とシウリンにはいまだに実感の湧かない、若く美しく妖艶な皇后の顔を見つめる。その悲しみに満ちた眼差しは、シウリンを見ているようでその向こうに、死んだユエリンを重ねているように思えた。
シウリンは考える。
双子だという。デュクトもゲルも、両親も、兄の賢親王も、みなシウリンとユエリンはそっくりうり二つだと言う。同じ母、同じ顔の皇子が二人。ユエリンは母に愛されて皇宮で育ち、自分は捨てられて僧院の孤児院で育った。ユエリンが絹の服を着、豪華な食事を供されていた時、シウリンはと言えば――。ゴワゴワした麻の僧衣、藁で編んだ草履、狭く硬い寝台。雑穀の薄い粥と野菜くずの浮いたスープ。いつも量は足りず、お腹を空かせ、水仕事に荒れた手がひりひりと痛んだ。
皇宮に連れてこられ、絹の服を着、食べきれないご馳走を食べ、あたたかな羽毛の布団で眠る。今までの十二年、ユエリンには当たり前のように与えられていたもの。
何故、自分だけ―――? 何故、ユエリンだけ―――?
それなのに、愛されて育ったはずのユエリンは素行が荒れて、泥酔した挙句に落馬して死んだ。何も知らなかった自分は無理矢理に連れてこられ、名前を奪われてユエリンとして生きることを強要されている。そう、この生活は、自分が望んだことではない。
シウリンは言った。
「僕は、僧院に――聖地に帰りたいのです。そのように、皇帝陛下にお願いしていただけませんか」
シウリンを見つめていた皇后の黒い瞳が、一際大きく見開かれた。
「……そなた、僧院に帰りたいと申すか?」
「はい。………僕はすでに、僧侶になる誓いを立てております。天と陰陽との誓いを破るわけにはまいりません」
皇后はわけがわからないという表情で、シウリンを見つめる。
「そなたは……太陽宮では満足な食事も与えられず、朝からずっと働かされていたのであろう? 手を……あんなふうに真っ赤に荒れさせて。母として、子をそのような場所に追いやりたいと思う者があろうか?」
皇后はシウリンの今ではきれいに直った手を、その白い嫋やかな手で包んだ。絹のように滑らかで柔らかなその左手の薬指と小指には、黄金づくりの爪カバーが嵌められ、彼女が労働とは無縁の存在であると知らしめている。高価な香油を塗りこめて丁寧に結い上げられた髪も、素肌の透明感を活かした繊細な化粧も、全て侍女の手によって施され、彼女が手ずから為すことはないのであろう。この手に比べれば、シウリンの手は硬くごつごつとして、アカギレの直った傷跡が縦横に走っている。シウリンは不意に、聖地の森の中の尼僧院で、シウリンの荒れた手に手作りの軟膏を塗り込んでくれた、年老いた尼僧を思い出した。
長く労働に耐えた、皺だらけの、染みのある痩せた手。霜焼けとアカギレで痛むシウリンの手を、優しく撫でさすってくれた、骨ばった感触。
両親も肉親も知らぬシウリンは、『聖典』に見える子を慈しむ母親の像を、いつしかあの尼僧で思い描いていた。しかし、今、シウリンを包む手は、まるで生まれたての子羊のように白く、柔らかく、滑らかで傷一つない。
(これが――母親――?)
それはひどく遠く、自分とかけ離れた存在に思われ、その白い宝石のような肌に触れていることに堪らない恐怖を感じて、思わずその手を振り払ってしまった。
「―――!」
背後でじっと見つめていたゲルとメイローズが息を呑む。
まさか我が子から手を振り払われると思わなかったのか、皇后は驚愕の眼差しでシウリンを見つめ、絞り出すように言った。
「やはり、……恨んでいるのか?」
シウリン自身も、乱暴に手を振り払ったことに動揺していたが、ただそれを押し隠して無言で首を振った。
「……いいえ。恨んでは、いません。ただ……僕が聖地で不幸だったと、思うのはやめてください。僕はあそこで……幸せでした。たくさんの贅沢な物に囲まれて過ごしている、今よりも、ずっと」
「皇宮の暮らしが意に染まぬのか? 妾は、そなたに、みすぼらしい服を着て、粗末な食事をして、卑しい仕事に追いまくられるような、そんな暮らしをしてもらいたくはない。……その、傅役はよくしてはくれるであろう?」
皇后の言葉に、シウリンはちらりとゲルと見た。
「彼は……良くしてくれます。デュクトは嫌な奴だったけど、うまく追い払ったし……。でも、そうではなくて、ここは僕のいるべき場所ではないと、思うんです。僕は、働くことも、祈ることも嫌いではありませんでしたし、山ほどのご馳走よりも、僧院で食べた硬いパンの方が食べたいのです」
皇后は、シウリンの言うことが全く理解できないようで、ただ戸惑ったようにシウリンを見つめている。
「……硬い、パンが好きならば、厨房より取り寄せるがよい。何でも、そなたの要望を言えばよいのだ。だから……」
シウリンは、大きく息を吸い込むと、覚悟を決めて言いきった。
「ここは、嫌なんです! 外に出たい! 友達に会いたい! 聖地に帰りたいんです!」
「殿下……」
やり取りを見かねたゲルが、シウリンの前で跪く。
「もう少し、殿下がこちらの生活に慣れましたら、外出も可能です。それに、年が明けましたら、小侯院にも通うことになります。同じ年頃の皇子たちと、一緒に学ぶ学校のようなものです。もう、少しだけご辛抱いただけたら、もっとよくなると思うのです。だから……どうか、聖地に帰るのだけは、おっしゃらないでください。それだけは、叶えて差し上げることができないのです」
唇を噛んで俯くシウリンを、皇后が痛ましそうな眼差しで見つめる。
「シウリン……そなたの名を、呼ぶことは、これ以後はできぬ。だが……そなたがユエリンでないことは、妾が知っておる。じゃが、そなたが皇宮で皇子として生きることは、皇帝陛下がお決めになったこと。ここで、学問に精進して皇子としての責めを果たすのこそ、そなたの与えられた役割なのじゃ。どうか、堪えてたも」
「……はい、皇后陛下」
しぶしぶ頷くシウリンに、皇后が言った。
「妾はそなたの母親じゃ。公式の場以外では、母上と呼ぶように」
シウリンは目を瞬く。
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