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一竅
19、蕎麦粉の菓子
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恥ずかしそうに頬を染めて言う三人の侍女をの顔を、シウリンはぽかんとした顔で見上げている。
「あ、ありがとう。せっかく働いたお金で、よかったの?」
三人ともにこにこと笑っている。
「いいえ、殿下はいつもお菓子や食事を分けてくださいます。宿舎で食べることもあるんです。みんなが殿下のようにお優しい方ばかりではないので、些細な失敗で食事を抜かれてお腹を空かせてる子もいるんです。そういう子にも分けてあげたりして、あたしたち、後宮勤めが辛くてたまらなかったけど、殿下のおかげでとても楽しいんです。だから、殿下のような高貴なお方には、勿体ないようなお菓子ですけれど……ぜひ」
シウリンは美しい笑顔を返すと、竹籠を受け取り、中を見た。
「すごいな、せっかくだから、みんなで食べよう」
「いいえ! それは殿下に食べていただきたくて、準備したのです。殿下お一人で全部召しあがってください」
「ええ! 僕が一人で全部!」
シウリンは三人の侍女に礼を言い、竹籠を大切に書き物机の上に置いた。
「ありがとう。大切に食べるよ」
三人の侍女と宦官たちが食器を片づけるために部屋を下がると、メイローズがシウリンとゲルのために菊花茶を淹れた。シウリンは、夜は緑茶を飲まない。
お茶を目の前にして、シウリンは竹籠からカリンの母手作りの焼き菓子を取り出す。蕎麦粉を使った、いかにも素朴な菓子だ。
蕎麦は痩せた土地や寒冷地でも育つので、聖地の、特に太陽宮の北部の僧院ではよく食される。東の帝国でも、北部や山がちの土地では蕎麦を栽培し、粉にして菓子やパンにするか、麺にして食する。蕎麦粉は同じ重さの小麦粉の四分の一で取引される貧乏人の食べ物で、貴族の食卓に上ることはまず、ない。シウリンが好きな食べ物を聞かれ、蕎麦と豆腐と言われてゲルが絶句したのもそのためである。
ゲルの目から見れば、皇宮で作られた甘く美しい菓子よりも、素朴さだけが取り柄のような菓子を、瞳を煌めかせて嬉しそうに見ているシウリンは理解できないのだが、ただ、ゲルは何も咎めずにじっと見ていた。
側付きの侍女が、自分たちの乏しい給金を出し合って、はるかに贅沢な食事をしている皇子のために菓子を買って来るなど、笑止千万である。だが、そうしなければ気が済まないほど、侍女たちは皇子に感謝し、心酔しているのだ。
(これは、本当に得難いお人かもしれぬ――)
シウリンは本当に一人で全部食べるつもりなのか、ゲルにもメイローズにも薦めずに、蕎麦粉の菓子を口に含んだ。と、突然、シウリンの黒曜石の瞳に玉のような涙が溜まる。溜まった涙が頬へと流れ出す。声も出さず、シウリンはぽろぽろと涙を零しながら、無言で焼き菓子を食べている。
ゲルは静かに泣きながら焼き菓子を食べるシウリンを見て、胸を衝かれた。蕎麦粉の菓子は、ただの菓子ではないのだ。
「わが主よ――」
メイローズが心配そうに膝をついてシウリンを見上げる。ゲルは、シウリンの膝に手をおいて、覗き込むようにして、尋ねた。
「殿下――。ここには、我々しかいません。今の状況が、殿下にとって不本意で、理不尽であることは、承知しております。その状況を、覆す力は俺にはないのですが、でも――」
シウリンは赤い眼をして顔を伏せた。
「……僧院の近くに小さな尼僧院があって……よく手伝いに行ってた」
ぽつり、ぽつりと、シウリンは話始めた。
「そこは身よりのない尼僧ばかりが住んでいて……手伝いに行くとお礼に、ってある尼僧が焼いた焼き菓子をくれるんだ。……ちょうどこんな、ぼそぼその、少しだけ甘いの」
シウリンは手元の食べかけの焼き菓子を示す。
「その尼僧は……神殿の娼婦だったって。で、子供を二人生んで、一人は女の子で、すぐ死んでしまったって。次は男の子で、そういう子供は、僧院の孤児院に預けられて、僧侶になる。どこでどうしているか、名前も何もわからないけど、僕を見ていると、自分の子供もどこかの僧院で、元気で生きているって信じられるって……」
涙に塗れた長い睫毛をしぱしぱと瞬きながら、シウリンは続ける。
「僕……その人が本当の母さんなら、いいなって思ってた……母さんってものが、どんなものかわからないけれど、きっと、ああいう風に違いないって、ずっと思ってた。本当の両親が生きているって知らされて、ここへ無理矢理連れてこられたけれど……期待をしていたわけじゃない。でも、僕はあの、母親だと言う人に何も思わないし、あの人も、別に僕には興味はないみたいだし……だったらどうして……そっとしておいてくれなかったんだろうって。……僕が必要でないのなら、そのまま、あそこに居させてくれたらよかったのに……」
そうやってぽろぽろと涙を零すシウリンに、ゲルはかける言葉もない。ゲルもまた、シウリンに対し全く関心を示さない皇后に疑問と反発を抱いていたからだ。シウリンはずっと、母親について話題にも出さず、興味もない顔で平気で振る舞っていた。聖地で育って、母と言うものに愛着がないのだろうと思っていた。だが、シウリンの置かれた理不尽な状況の中で、呼び戻した張本人であるはずの、母親からの無視に彼が傷つかないはずがないのだ。
ゲルは、自らを恥じた。
デュクトだけではない。彼も同罪だ。
皇帝の命と、秘密保持にだけ躍起になり、シウリンの心をまったく置き去りにしてきたのだから。
「殿下……俺は、殿下がここに居てくださって、本当に感謝しています。……あの侍女たちも、みな、殿下が好きなのです。これから、精一杯、殿下にお仕えします。どうかこの非才の身を、殿下のお側に置いてください」
シウリンは涙に塗れた睫毛を瞬いて、ゲルを見た。
「ありがとう。ゲル」
「非才ながら、私もお側でお守りいたします。わが主よ。」
メイローズも跪いて言う。
「ありがとう、メイローズ。……でも、僕は――聖地に帰りたい。ここが、僕の居場所だとは、思えない」
シウリンの言葉に、ゲルが言った。
「今すぐは、そう思えなくても無理はありません。……殿下は、かの地で多くの者に愛され、大切にされてこられた。離れたくないと思うのは、当然のことです。ですが……ここの者もみな、殿下を愛し、大切にしております。いつか、殿下がここを心安らぐ場と思えるよう、精進してまいる所存です。どうか、我々を信じてください」
ゲルの真摯な言葉に、シウリンは涙を手の甲で擦って頷いた。メイローズが手巾で拭い、微笑む。
シウリンは皇宮に来て初めて、味方ができたような気がした。
その晩、シウリンは紗幕に覆われた寝台の上で、そっと胸の小袋から指輪を取り出した。
ずっしりと重厚なそれを掌で転がしながら、心の中で誓う。
(だいじょうぶ……僕は、大丈夫。……必ず、もう一度聖地に帰る。何年かかっても、君に、この指輪を返しに行くよ……〈メルーシナ〉……だから、もう少しだけ、この指輪を僕に貸しておいて……)
シウリンは指輪を袋に戻して袋ごと握りしめ、聖地を出てから初めて、ゆったりとした気持で眠ることができた。
しかし、シウリンの幸せな気分はたった一晩で潰える。
「あ、ありがとう。せっかく働いたお金で、よかったの?」
三人ともにこにこと笑っている。
「いいえ、殿下はいつもお菓子や食事を分けてくださいます。宿舎で食べることもあるんです。みんなが殿下のようにお優しい方ばかりではないので、些細な失敗で食事を抜かれてお腹を空かせてる子もいるんです。そういう子にも分けてあげたりして、あたしたち、後宮勤めが辛くてたまらなかったけど、殿下のおかげでとても楽しいんです。だから、殿下のような高貴なお方には、勿体ないようなお菓子ですけれど……ぜひ」
シウリンは美しい笑顔を返すと、竹籠を受け取り、中を見た。
「すごいな、せっかくだから、みんなで食べよう」
「いいえ! それは殿下に食べていただきたくて、準備したのです。殿下お一人で全部召しあがってください」
「ええ! 僕が一人で全部!」
シウリンは三人の侍女に礼を言い、竹籠を大切に書き物机の上に置いた。
「ありがとう。大切に食べるよ」
三人の侍女と宦官たちが食器を片づけるために部屋を下がると、メイローズがシウリンとゲルのために菊花茶を淹れた。シウリンは、夜は緑茶を飲まない。
お茶を目の前にして、シウリンは竹籠からカリンの母手作りの焼き菓子を取り出す。蕎麦粉を使った、いかにも素朴な菓子だ。
蕎麦は痩せた土地や寒冷地でも育つので、聖地の、特に太陽宮の北部の僧院ではよく食される。東の帝国でも、北部や山がちの土地では蕎麦を栽培し、粉にして菓子やパンにするか、麺にして食する。蕎麦粉は同じ重さの小麦粉の四分の一で取引される貧乏人の食べ物で、貴族の食卓に上ることはまず、ない。シウリンが好きな食べ物を聞かれ、蕎麦と豆腐と言われてゲルが絶句したのもそのためである。
ゲルの目から見れば、皇宮で作られた甘く美しい菓子よりも、素朴さだけが取り柄のような菓子を、瞳を煌めかせて嬉しそうに見ているシウリンは理解できないのだが、ただ、ゲルは何も咎めずにじっと見ていた。
側付きの侍女が、自分たちの乏しい給金を出し合って、はるかに贅沢な食事をしている皇子のために菓子を買って来るなど、笑止千万である。だが、そうしなければ気が済まないほど、侍女たちは皇子に感謝し、心酔しているのだ。
(これは、本当に得難いお人かもしれぬ――)
シウリンは本当に一人で全部食べるつもりなのか、ゲルにもメイローズにも薦めずに、蕎麦粉の菓子を口に含んだ。と、突然、シウリンの黒曜石の瞳に玉のような涙が溜まる。溜まった涙が頬へと流れ出す。声も出さず、シウリンはぽろぽろと涙を零しながら、無言で焼き菓子を食べている。
ゲルは静かに泣きながら焼き菓子を食べるシウリンを見て、胸を衝かれた。蕎麦粉の菓子は、ただの菓子ではないのだ。
「わが主よ――」
メイローズが心配そうに膝をついてシウリンを見上げる。ゲルは、シウリンの膝に手をおいて、覗き込むようにして、尋ねた。
「殿下――。ここには、我々しかいません。今の状況が、殿下にとって不本意で、理不尽であることは、承知しております。その状況を、覆す力は俺にはないのですが、でも――」
シウリンは赤い眼をして顔を伏せた。
「……僧院の近くに小さな尼僧院があって……よく手伝いに行ってた」
ぽつり、ぽつりと、シウリンは話始めた。
「そこは身よりのない尼僧ばかりが住んでいて……手伝いに行くとお礼に、ってある尼僧が焼いた焼き菓子をくれるんだ。……ちょうどこんな、ぼそぼその、少しだけ甘いの」
シウリンは手元の食べかけの焼き菓子を示す。
「その尼僧は……神殿の娼婦だったって。で、子供を二人生んで、一人は女の子で、すぐ死んでしまったって。次は男の子で、そういう子供は、僧院の孤児院に預けられて、僧侶になる。どこでどうしているか、名前も何もわからないけど、僕を見ていると、自分の子供もどこかの僧院で、元気で生きているって信じられるって……」
涙に塗れた長い睫毛をしぱしぱと瞬きながら、シウリンは続ける。
「僕……その人が本当の母さんなら、いいなって思ってた……母さんってものが、どんなものかわからないけれど、きっと、ああいう風に違いないって、ずっと思ってた。本当の両親が生きているって知らされて、ここへ無理矢理連れてこられたけれど……期待をしていたわけじゃない。でも、僕はあの、母親だと言う人に何も思わないし、あの人も、別に僕には興味はないみたいだし……だったらどうして……そっとしておいてくれなかったんだろうって。……僕が必要でないのなら、そのまま、あそこに居させてくれたらよかったのに……」
そうやってぽろぽろと涙を零すシウリンに、ゲルはかける言葉もない。ゲルもまた、シウリンに対し全く関心を示さない皇后に疑問と反発を抱いていたからだ。シウリンはずっと、母親について話題にも出さず、興味もない顔で平気で振る舞っていた。聖地で育って、母と言うものに愛着がないのだろうと思っていた。だが、シウリンの置かれた理不尽な状況の中で、呼び戻した張本人であるはずの、母親からの無視に彼が傷つかないはずがないのだ。
ゲルは、自らを恥じた。
デュクトだけではない。彼も同罪だ。
皇帝の命と、秘密保持にだけ躍起になり、シウリンの心をまったく置き去りにしてきたのだから。
「殿下……俺は、殿下がここに居てくださって、本当に感謝しています。……あの侍女たちも、みな、殿下が好きなのです。これから、精一杯、殿下にお仕えします。どうかこの非才の身を、殿下のお側に置いてください」
シウリンは涙に塗れた睫毛を瞬いて、ゲルを見た。
「ありがとう。ゲル」
「非才ながら、私もお側でお守りいたします。わが主よ。」
メイローズも跪いて言う。
「ありがとう、メイローズ。……でも、僕は――聖地に帰りたい。ここが、僕の居場所だとは、思えない」
シウリンの言葉に、ゲルが言った。
「今すぐは、そう思えなくても無理はありません。……殿下は、かの地で多くの者に愛され、大切にされてこられた。離れたくないと思うのは、当然のことです。ですが……ここの者もみな、殿下を愛し、大切にしております。いつか、殿下がここを心安らぐ場と思えるよう、精進してまいる所存です。どうか、我々を信じてください」
ゲルの真摯な言葉に、シウリンは涙を手の甲で擦って頷いた。メイローズが手巾で拭い、微笑む。
シウリンは皇宮に来て初めて、味方ができたような気がした。
その晩、シウリンは紗幕に覆われた寝台の上で、そっと胸の小袋から指輪を取り出した。
ずっしりと重厚なそれを掌で転がしながら、心の中で誓う。
(だいじょうぶ……僕は、大丈夫。……必ず、もう一度聖地に帰る。何年かかっても、君に、この指輪を返しに行くよ……〈メルーシナ〉……だから、もう少しだけ、この指輪を僕に貸しておいて……)
シウリンは指輪を袋に戻して袋ごと握りしめ、聖地を出てから初めて、ゆったりとした気持で眠ることができた。
しかし、シウリンの幸せな気分はたった一晩で潰える。
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