84 / 86
84、後朝
しおりを挟む
翌朝、夜明けの光の差し込む寝台の上で、ラファエルの逞しい腕にしっかりと囚われた状態で、ジュスティーヌは目を覚ます。
身を捩って腕を振りほどき、身体を起こせば、羽毛の枕に埋もれるようにして眠る、ラファエルの整った寝顔があった。銀色の髪は乱れて、だが驚くほど無邪気で、安らかな寝息を立てていた。
ジュスティーヌは白い指で、ラファエルの乱れた前髪をかき分け、形のよい眉と、驚くほど長い、伏せられた睫毛を見下ろして、溜息をつく。
こうしてみれば、大人しくて毛並みのいい、よく躾られた大型犬なのに、昨夜は野獣だった。
(いきなり噛みつくし……)
ジュスティーヌが昨夜、噛まれた傷のことを想い出していると、ラファエルが身じろぎして、目を覚ました。銀色の睫毛に縁どられた、紫色の瞳が現れて、まっすぐにジュスティーヌを見上げる。
「姫……起きておられたのですか」
「いつまで姫なのです。わたくしはもう、あなたの妻なのに」
ジュスティーヌが唇を尖らすようにして言えば、ラファエルは一瞬、紫色の瞳を丸くして、だがすぐにその目を笑わせて、言った。
「いつまでも姫ですよ? あなたは俺の妻であり、俺のご主人様ですから」
そう言うと、ラファエルはジュスティーヌのうなじに大きな手を回し、強請るように言った。
「おはようの口づけをください。ご主人様」
「どっちが偉いのか、わからないじゃないの、変な人」
それでもジュスティーヌは素直にラファエルの顔に顔を近づけ、その唇に口づける。そうしてしばらく、互いの唇を貪りあってから、ジュスティーヌがあることに気づいて身体を捩った。
「ちょっと、朝からどういうことですの?」
「どうって……その……男の生理的な問題で……」
「明るい場所ではしませんからね!」
ジュスティーヌは慌てて絹の上掛けを素肌に巻き付け、肌を隠して言う。
ジュスティーヌに上掛けを奪われて、ラファエルが露わになった裸の上半身を起こす。その脚の付け根には、例の如く、醜悪な怪物が頭を擡げていた。
ラファエルは乱れた銀髪を掻きながら、ジュスティーヌに言う。
「じゃあ、自分でするので見ていていただくわけには……」
「朝からいい加減にして!」
真っ赤になって上掛けを巻き付けているジュスティーヌに拒否され、ラファエルが困ったように肩を竦めた。
「あなたが朝から可愛らしすぎるのが、いけないんですよ。俺だけのせいじゃないと思うがなあ……」
寝室の扉の外では、誰が朝のお茶を寝室に運んでいくかで、ソフィーとジャンヌとマリーが揉めに揉めていた。
冬が近づくボーモン領、今朝も雲一つない、快晴であった。
身を捩って腕を振りほどき、身体を起こせば、羽毛の枕に埋もれるようにして眠る、ラファエルの整った寝顔があった。銀色の髪は乱れて、だが驚くほど無邪気で、安らかな寝息を立てていた。
ジュスティーヌは白い指で、ラファエルの乱れた前髪をかき分け、形のよい眉と、驚くほど長い、伏せられた睫毛を見下ろして、溜息をつく。
こうしてみれば、大人しくて毛並みのいい、よく躾られた大型犬なのに、昨夜は野獣だった。
(いきなり噛みつくし……)
ジュスティーヌが昨夜、噛まれた傷のことを想い出していると、ラファエルが身じろぎして、目を覚ました。銀色の睫毛に縁どられた、紫色の瞳が現れて、まっすぐにジュスティーヌを見上げる。
「姫……起きておられたのですか」
「いつまで姫なのです。わたくしはもう、あなたの妻なのに」
ジュスティーヌが唇を尖らすようにして言えば、ラファエルは一瞬、紫色の瞳を丸くして、だがすぐにその目を笑わせて、言った。
「いつまでも姫ですよ? あなたは俺の妻であり、俺のご主人様ですから」
そう言うと、ラファエルはジュスティーヌのうなじに大きな手を回し、強請るように言った。
「おはようの口づけをください。ご主人様」
「どっちが偉いのか、わからないじゃないの、変な人」
それでもジュスティーヌは素直にラファエルの顔に顔を近づけ、その唇に口づける。そうしてしばらく、互いの唇を貪りあってから、ジュスティーヌがあることに気づいて身体を捩った。
「ちょっと、朝からどういうことですの?」
「どうって……その……男の生理的な問題で……」
「明るい場所ではしませんからね!」
ジュスティーヌは慌てて絹の上掛けを素肌に巻き付け、肌を隠して言う。
ジュスティーヌに上掛けを奪われて、ラファエルが露わになった裸の上半身を起こす。その脚の付け根には、例の如く、醜悪な怪物が頭を擡げていた。
ラファエルは乱れた銀髪を掻きながら、ジュスティーヌに言う。
「じゃあ、自分でするので見ていていただくわけには……」
「朝からいい加減にして!」
真っ赤になって上掛けを巻き付けているジュスティーヌに拒否され、ラファエルが困ったように肩を竦めた。
「あなたが朝から可愛らしすぎるのが、いけないんですよ。俺だけのせいじゃないと思うがなあ……」
寝室の扉の外では、誰が朝のお茶を寝室に運んでいくかで、ソフィーとジャンヌとマリーが揉めに揉めていた。
冬が近づくボーモン領、今朝も雲一つない、快晴であった。
80
お気に入りに追加
1,075
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
騎士団寮のシングルマザー
古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。
突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。
しかし、目を覚ますとそこは森の中。
異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる!
……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!?
※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。
※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる