上 下
81 / 86

81、溶ける身体*

しおりを挟む
 こんな風に優しく、触れられたことなど一度もなかった。
 ラファエルの唇が頂点の尖りに触れる。一瞬、顔を離してそれをまじまじと見つめてから、おもむろにパクリと口に含む。上から見下ろせば、伏せられた睫毛が驚くほど長い。ちゅっと吸われて、ジュスティーヌが思わず声をあげてしまう。
 
「あっ……」

 ラファエルが上目遣いにジュスティーヌを見上げる。その瞳が和らいで、口元が緩んだらしい。

「可愛い声ですね。もっと、聞かせてください」
 
 ジュスティーヌの顔にばっと血の気が上る。恥ずかしい。

「いや、です……はしたない……っんんっ」

 だが敏感な先端を舌で転がされて、ジュスティーヌは甘い疼きに背中を反らし、鼻にかかった声が出る。反対側の乳房を大きな手で覆うように揉みこまれ、親指で先端を刺激されて、ジュスティーヌの息が上がってきた。

「んっ……んふっ……んんんっ……あっ……やっああっ」
「ああ、可愛い……ジュスティーヌ……」

 親指と人差し指でクリクリと刺激されながら、ラファエルの唇が乳房のあちこちに這いまわり、ときには強く吸われてチリリとした痛みが走る。見下ろせば、花弁のような痕が散っていた。

「ラファ……んんんっ……あっ……」

 ジュスティーヌはただ、ラファエルの鍛え上げた肩に縋り、与えられる快感に耐えようと、首を盛んに振って身を捩る。

 ラファエルの大きな掌が、胸から腹へと滑り落ち、太ももを撫でる。さっき自分で巻いた白布に触れて、ラファエルがジュスティーヌの耳元で問いかけた。

「痛みますか?」
「いえ……少し、だけ」
「今日、このままできますか?」

 ラファエルの問いに、ジュスティーヌがぼうとした頭で頷く。一度やめてしまったら、二度と肌をさらす勇気が出ないかもしれない。

「だい……じょうぶ……このまま……」
「姫……愛しています」

 吐息のような囁きが耳元で弾ける。ラファエルの息も上がっていて、耳にかかる息が熱い。ラファエルの長い指が、ジュスティーヌのすでに湿り気を帯びた秘所に伸びた。

「!!」

 ジュスティーヌの背中がびくりと跳ねる。その場所を触れられれば、かつての恐怖が蘇る。
 怖い――。

「怖いですか?」

 ラファエルの心配そうな声に、ジュスティーヌは見透かされたようではっとする。

「無理強いはしたくないけれど、ここに触れずに先に進めば、姫がもっと辛いことになります」
 
 ラファエルが正面から、真剣なまなざしで問いかけてくる。ジュスティーヌは縋るようにラファエルを見た。

「怖い、です。――わたくしが、乱れても、あなたは……」
「俺は姫に乱れていただきたいのです。俺の手で乱れるのは嫌ですか?」
「それは――」

 ジュスティーヌはわからない。このままこの場所を触れられ、嬲られれば、自分がどうなるのかはわかっている。以前のそれは快楽というよりは、ただの屈辱だった。感じたくないのに体は反応し、達するたびに罵られ、嘲られ、蔑まれた。処女のくせに淫乱な売女ばいただと、自身の尊厳を穢されてきた。
 
「姫は、俺のことは嫌いですか?」
「いいえ! まさか……わたくしも、ラファエルが……」
「なら、受け入れてください。俺が姫の手でイったように、姫も俺でイってください」

 何でもないことのように、穏やかに諭されて、ジュスティーヌの瞳に涙が浮かぶ。

「わか……わからない……」 
「大丈夫……そうだ、俺のも、握ってください。二人で一緒にイきましょう、それなら……」

 ラファエルの大きな手に導かれて、ラファエルの屹立を握らされる。先端に触れれば、ラファエルが熱い吐息を零す。

「どっちが先にイけるか、競争しますか?」
「ばか……」

 恥ずかしくて顔を背けたジュスティーヌの、敏感な場所にラファエルの指が触れる。ずっと忘れていた、忘れたかった感覚が背骨から立ち上がってくる。長い指が媚肉を割り、中を探る。親指で突起をこすられながら、長い指が一本、ジュスティーヌの中にゆっくりと侵入を試みる。

「はっ……あっ……ああっ……んんっ」

 自然に腰が揺れ、鼻にかかった声が零れ出てしまう。あの男にさんざん嬲られて、飼いならされた身体が暴走を始めそうで、ジュスティーヌは恐怖で、手の中の太くて硬いものをぎゅっと握った。

「ああ……ジュスティーヌ……愛してる……」

 ジュスティーヌの秘所はすでにぐっしょりと濡れて、ラファエルの指先が水音を立て始めた。ジュスティーヌはそれを聞きたくなくて、ラファエルの逞しい肩に頭を預け、小さく振った。濡れていることをいつも嘲られ、淫乱だと罵られた。ラファエルも、そう思うのだろうか――。

 だがラファエルはそれについては何も言わず、ただ手探りでジュスティーヌの中を探り、その場所を解そうとしているようだった。いつのまにか指は二本に増やされて、縦横にジュスティーヌの中を蠢く。繊細な指の動きが確実にジュスティーヌを快楽に導いていくけれど、ジュスティーヌの心はそれを受け入れていいのかどうか、まだ迷っていた。その迷いを感じ取ったのか、時折、こめかみや耳もとにラファエルの唇が下りて、あやすような触れるだけの口づけが続く。
 中の、ある場所をラファエルが突き止め、ひっかくように動いて、ジュスティーヌの腰が大きくはねる。

「ああっ……そこっ……だめぇ……」
「ああ、姫……可愛い……」
 
 その場所を繰り返し責められて、ジュスティーヌの身体が快感に上り詰めていく。自身の唇から零れ出る喘ぎ声と、ラファエルの指が立てる水音がジュスティーヌの羞恥心を煽り、何も考えたくなくてただ、首を振って悶えた。

「いやっ……怖い……」
「大丈夫です、ジュスティーヌ、……愛してる、愛してるから……」
「あっ……ああっ……あっ………」

 ラファエルの親指が、包皮を剥くようにしたジュスティーヌの陰核とぎゅっと押した瞬間、ジュスティーヌが達して、全身を硬直させる。それから一気に弛緩し、荒い息を吐いてラファエルの身体にしなだれかかる。

「はあっはあっ……ラファ、ラファエル……わたくし……」
「ああ、可愛いジュスティーヌ、やっとイってくれましたね。……素敵だ」
 
 汗ばんだジュスティーヌの首筋や胸元に触れるだけの口づけを繰り返しながら、ラファエルが言う。

「いいの?……あんな、風になっても……」
「なぜいけないのです。……もっと、何度もイってください」
「でも、あなたはまだ……」

 そういえば、ジュスティーヌは自分が愛撫されることに夢中になって、手がおろそかになっていた。ラファエルは笑った。

「いいんです、俺は。今夜はあなた自身をもらうから……だから、もう少し解しましょう」

 ラファエルはそう言うと、ジュスティーヌを膝からおろし、寝台に横たえる。

「圧し掛かられるのは、怖いですか? でも、この姿勢の方が、あなたは楽だと思うのです」

 ラファエルはジュスティーヌを上から覗き込まないようにしているのか、天蓋を見上げるジュスティーヌには、ラファエルの声しか聞こえない。

「大丈夫……たぶん……あっ何、を……ラファエル?!」

 突然、生暖かい何かが達したばかりの秘所に触れて、ジュスティーヌは驚愕の叫びをあげてしまう。必死に顔を俯けてみれば、ジュスティーヌの脚の付け根にラファエルの銀色の頭があって、ジュスティーヌは息を飲んだ。

 生暖かく、柔らかな感触に敏感な尖りを舐めあげられ、ジュスティーヌが背中を反らし、甲高い悲鳴を上げる。さっきの指とは比較にならないほどの快感と、恥ずかしい場所を舐められている羞恥心で、ジュスティーヌの頭は真っ白になった。――こんなことは、大公にさえされていない。

「ひっ……ひああっ……だ、だめ、そんなっ……あっああっあああっ」
 
 ピチャピチャと動物が獲物を食むような音をたて、ラファエルの舌がジュスティーヌの尖った陰核を舐め、溢れる蜜を吸い上げる。快感と動揺で暴れる腰を、ラファエルは逞しい腕でがっちりと抑え込み、逃さないというように貪り続ける。 
  
「ああっああああっ……あっあっあ―――――――っ」

 あっけなく快楽に呑み込まれ、ジュスティーヌは白い身体を反らし、細い喉をさらして一際長く尾を引く悲鳴を上げ、達した。脳はもう、真っ白に焼き切れてしまったけれど、心のどこかがそれを受け入れていた。
 
 ――ラファエルになら、すべてを委ねても――。

 放心したように天蓋を見上げ、荒い息をはいていたジュスティーヌに、ラファエルの声が問いかける。

「姫……俺ももう、限界です。あなたと、一つになりたい……」

 気づけば、ジュスティーヌの蜜口に、何か硬く熱いものが押し当てられていた。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

処理中です...