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小結

愛しい番*

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 熱を帯びて囁きかけ、大きな両手で白い頬を覆って唇を奪う。

「んっ、んんんっ、……んふっ」

 口内を舌で存分に貪りながら、ゆっくりと身体ごと圧し掛かってアデライードを寝台の上に押し倒す。そのまま抵抗できないようにがっちりと抑え込みながら、彼女が酸欠になる寸前まで唇を堪能した。性急にならないようにアデライードのガウンの腰紐を解き、夜着の帯も解いてしまう。そして打ち合わせ式の夜着ごとするりとはだけさせると、体の下から抜き取って、寝台の下に投げ落とす。
 一糸まとわぬ姿にされて、アデライードは狼狽して細い腕で胸を覆い、恭親王に背を向けて視線を逃れようとしたが、細い手首を掴まれ、頭上で一つにまとめられてその裸体を恭親王に曝すことになった。

「……や……こんな……」
「ああ……隠さないで、もっと見せて……綺麗だ……」

 昨夜彼を夢中にさせた白く清楚な胸が目の前にあった。昨夜は処女雪のごとき瑕一つなく真っ白だったそれは、彼自身によって無残に踏みしだかれ、赤い所有印が花弁のように散っている。実は入浴の世話をしたアンジェリカがものすごい舌打ちをしたのだが、アデライードは陰陽宮に変な虫がいたのかしら、なんて答えていた。ええ、ええ、黒い頭で腹の中も真っ黒な、見かけだけは麗しい虫がいたんでしょうね、なんて憎々し気にアンジェリカは言っていたけれど、それは恭親王のあずかり知らぬこと。恭親王は点々と散る自分の所有印を見て、昨夜の嬌態と自己の並外れた執着を思い出して、一層欲情を煽られ、そのまま二つの脹らみに顔からダイブした。それはもう、全力で。

 昨夜、散々嬲られて快感を教えられた胸はすぐに彼の愛撫に応え、アデライードの唇は絶えまない甘い喘ぎを漏らし始める。

(ああ、可愛い、可愛い、可愛い、いっそ小人になって、この谷間で暮らしたい……)

 やがて彼の唇は胸から徐々に下に降りていき、臍を辿って脚の間の秘密の場所へと至る。もうすっかり蜜でしとどに濡れたその場所を、舌でべろりと舐めあげると、アデライードの白い身体がびくりと震えた。

「あああ! だめぇ!……やっぱりそれは、やめ……ああっ!」

 逃げようとする細い腰をがっちりと両腕で捕まえ、溢れる蜜を舐めとる。敏感な個所を舌で刺激しながら、秘裂を割って指を挿入する。

「ああっ……いやあ!……だめ、だめぇ!」

 涙声の懇願をあっさり聞き流して、指を増やして激しい抽挿を続けながら、花芯を唇で強く吸うと、白い身体を仰け反らせてあっけなく達した。

「あああああっ、ああっ、あああーー!」

 がくがくと痙攣するのをなおも容赦なく責めたて、立て続けにイかせてアデライードがくったりと力を抜いたところで、恭親王はおもむろに身体を起こし、ゆっくりと夜着を脱ぐ。鍛え上げた無駄のない筋肉が綺麗についた身体を、アデライードはとろんとした瞳で見上げている。恭親王は荒い息をしているアデライードを欲情の滾った黒い瞳で眺めまわしながら、すでにこれ以上ないほど昂った自身を彼女に宛がい、内部をゆっくりと貫いた。

 アデライードの内部は、熱くて、蕩けて、とにかく最高だった。ゆっくりと奥まで穿ちながら、内部の感触を味わう。すごい。あっと言う間にイきそうだ。アデライードに圧し掛かるようにしながら、両手をそれぞれ握って指を絡め、顔の脇の敷布に縫いとめる。こうすると、より一層〈王気〉が通いやすくなる気がする。そうして絶え間なく喘いでいるアデライードの唇を唇で塞ぎ、舌を絡める。指と、唇と、舌と、そして最も深い場所と。繋がった場所から〈王気〉を送り込む。

 (アイシテル、アイシテル、アイシテル、アイシテル――)

 〈王気〉が混じり合い、全身を駆け巡る。アデライードの中がキュウキュウ締まって、彼の精を搾り取ろうとするかのように蠢く。すごい。でもまだ、離れたくない。
 愛する者と繋がり、一つになることがこれほどの快感に直結することを、恭親王は知らなかった。心と、身体と、〈気〉が、混然一体として融け合う。

「んんんっ、んんっ」
 
 唇を塞がれて出口を失った快楽の喘ぎ声が、彼の耳を打つ。唇を離して身体を起こし、アデライードの片足を肩にかついで結合を深くし、一層激しく腰を打ち付けると、アデライードの嬌声と、肌をぶつける乾いた音、そして淫靡な水音が寝室に響いた。

「ああっ、あああっ、ああんっ、あああっ」

 角度が変わった抽挿に、アデライードが彼を締め付ける。

「ああ、すごい、イきそうなのか、そんなに、締めて……」
「ああんっ、やあっ、ああっ、ちがっ、」
「何度でも、イって、かわいい、アデライード、アデライード……はあっ」

 アデライードの両腕をとって、自分の肩に掴まらせると、さらに抽挿を速める。

「あっ、あっ、あっ、」

 リズミカルな動きにアデライードの悲鳴はより高く甘くなり、肩を掴む指先に力がこもる。

「アデライード、アデライード、ああっ、私も、もう限界……」

 さらに激しさを加えて腰を打ち付けると、アデライードは肩に爪をたて、肩に担がれた脚の爪先をキュッと丸め、白く細い肢体を弓なりに反らして、達した。

「はあっつ、あああああっ、あああーー!」

 長い絶頂に全身を震わせるアデライードの中で、恭親王も精を吐き出した。





 ソリスティア総督恭親王ユエリン皇子は、冬至の翌日付けで西の王都ナキアの王女アルベラとその父イフリート公爵ウルバヌス、そして元老院に向け、彼の妻アデライード王女の女王即位の宣言書を送付した。速やかにアデライードの即位を認め、恭順の意を表せよ、と。
 万一即位を認めず、なおも天と陰陽の意向に逆らうつもりならば、〈禁苑〉と皇帝の名において、逆賊として武力の行使も辞さない――。

 文書の末尾にはその文言が付帯されていた。
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