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エピローグ
金銀の星の海
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夜の帳が下りた寝台の上で、シウリンはアデライードの白い胸を抱え込むようにして、その乳首を口に含んでいた。普段よりも二割増しで大きくなった胸に、巨乳嫌いだったはずだが巨乳も悪くないと思い始めている、現金なシウリンであった。
「甘い……あいつら、こんないいものを飲んでいるんだな」
口を離してうっとりと言うシウリンの、唇の端に白いものが滲んでいる。それを見降ろして、アデライードが首を傾げる。
「そんなに美味しいものでもなかったと思いますが……」
「飲んだのか?」
「一応、味見はしましたが……」
子供も夫も非常に美味そうにごくごく飲むので、好奇心に駆られたアデライードも舐めてみたのだ。
「あなたの身体から出るものは全部甘いよ。なんなら排泄物でも……あがっ」
ベシっと頭をはたかれて、シウリンが額を抑える。
「全く何てこと仰るのかしら。子供の前では絶対にやめてくださいね」
「わかっているよ、アデライード。子供産んだら急に強くなるんだから」
「旦那様がこんなんだから、わたしが強くなるしかないじゃありませんの」
シウリンはアデライードの胸から顔を離し、まっすぐに顔を見て言った。
「そういえば……ミハルのこと、聞いたか?」
「……ええ。なんだかずいぶん、悪阻がきついのだとか。食事も摂れないので、しばらく神殿に入ると――」
「そうなんだ。トルフィンがもう、おろおろして、あいつまで仕事にならないからな。それで、後任の秘書官はどうする?」
「ああ、それなら、クリスティナ様に来てもらうことにしました」
「クリスティナ?」
「ええ、あの方、実はすごく計算に強いのです」
意外な言葉にシウリンがへぇと思う。
「一応、あなたの婚約者ですから、王城にもずっと出入りしていて慣れていらっしゃるし……それに園芸が趣味で、菜園の手入れなどもしておられて、農業に興味があるんですって」
「婚約者って……それ、まだ有効なのか?……ていうか、農業? 貴族の娘が?」
エイロニア侯爵の四女クリスティナは、ユリウスの妻イリスの妹で、シウリンが側室除けに名目的に婚約者にしていた女だが、シウリン自身はクリスティナに全く興味がなく、口もろくにきいたことがない。機会を見てランパに押し付けるつもりでいるが、数字に強くて農業に興味があるとか、初耳だ。
だがアデライードはこともなげに言う。
「西では、嫁いだら夫の領地の仕事を妻が分担するでしょう? だから計算とか、法律関係とか、あるいは農業についてとか、何らかの得意分野を持っておくのが強みになるんですって。わたし、普通の西の貴族の夫人なんて、とても務まらなかったわ。――あ、でも魔法が使えるから」
「やめてくれ!」
シウリンが悲鳴のような声をあげ、アデライードに圧し掛かって寝台に押し倒す。
「アデライード……魔法は大事だけど、治癒術以外はそんなに使うな。こっちの心臓がもたない」
「旦那様……」
シウリンが覆いかぶさるようにしてその唇を奪う。しばらく互いに舌を絡ませあってから、シウリンが唇を離し、耳元で囁く。
「女王様は私だけの女王様だ……昼の間は子供たちに貸すけどな」
そう言って欲望の籠った黒い瞳でアデライードを見つめる。
「あなたの一番の仕事は、私とめいっぱい愛し合って、陰陽の調和に励んで……星の数ほど子供を生むことだ。……そうだろう?」
「それは……」
シウリンの手がアデライードの敏感な場所に伸び、まさぐり始めると、それだけでアデライードはあっさり陥落して彼に身を任せる。
「愛してるアデライード……永遠に、あなただけ」
「わたしも……愛してるわ」
寝台の上で身体の深い場所で繋がりあう二人の上では、金銀の光の龍がやはり睦み合って光の粉をまき散らし始めた。それは夜の空気の中を天空へと立ち上って、やがて天上に煌く星空の海へと溶け込んで、世界に遍く広がっていった。
「甘い……あいつら、こんないいものを飲んでいるんだな」
口を離してうっとりと言うシウリンの、唇の端に白いものが滲んでいる。それを見降ろして、アデライードが首を傾げる。
「そんなに美味しいものでもなかったと思いますが……」
「飲んだのか?」
「一応、味見はしましたが……」
子供も夫も非常に美味そうにごくごく飲むので、好奇心に駆られたアデライードも舐めてみたのだ。
「あなたの身体から出るものは全部甘いよ。なんなら排泄物でも……あがっ」
ベシっと頭をはたかれて、シウリンが額を抑える。
「全く何てこと仰るのかしら。子供の前では絶対にやめてくださいね」
「わかっているよ、アデライード。子供産んだら急に強くなるんだから」
「旦那様がこんなんだから、わたしが強くなるしかないじゃありませんの」
シウリンはアデライードの胸から顔を離し、まっすぐに顔を見て言った。
「そういえば……ミハルのこと、聞いたか?」
「……ええ。なんだかずいぶん、悪阻がきついのだとか。食事も摂れないので、しばらく神殿に入ると――」
「そうなんだ。トルフィンがもう、おろおろして、あいつまで仕事にならないからな。それで、後任の秘書官はどうする?」
「ああ、それなら、クリスティナ様に来てもらうことにしました」
「クリスティナ?」
「ええ、あの方、実はすごく計算に強いのです」
意外な言葉にシウリンがへぇと思う。
「一応、あなたの婚約者ですから、王城にもずっと出入りしていて慣れていらっしゃるし……それに園芸が趣味で、菜園の手入れなどもしておられて、農業に興味があるんですって」
「婚約者って……それ、まだ有効なのか?……ていうか、農業? 貴族の娘が?」
エイロニア侯爵の四女クリスティナは、ユリウスの妻イリスの妹で、シウリンが側室除けに名目的に婚約者にしていた女だが、シウリン自身はクリスティナに全く興味がなく、口もろくにきいたことがない。機会を見てランパに押し付けるつもりでいるが、数字に強くて農業に興味があるとか、初耳だ。
だがアデライードはこともなげに言う。
「西では、嫁いだら夫の領地の仕事を妻が分担するでしょう? だから計算とか、法律関係とか、あるいは農業についてとか、何らかの得意分野を持っておくのが強みになるんですって。わたし、普通の西の貴族の夫人なんて、とても務まらなかったわ。――あ、でも魔法が使えるから」
「やめてくれ!」
シウリンが悲鳴のような声をあげ、アデライードに圧し掛かって寝台に押し倒す。
「アデライード……魔法は大事だけど、治癒術以外はそんなに使うな。こっちの心臓がもたない」
「旦那様……」
シウリンが覆いかぶさるようにしてその唇を奪う。しばらく互いに舌を絡ませあってから、シウリンが唇を離し、耳元で囁く。
「女王様は私だけの女王様だ……昼の間は子供たちに貸すけどな」
そう言って欲望の籠った黒い瞳でアデライードを見つめる。
「あなたの一番の仕事は、私とめいっぱい愛し合って、陰陽の調和に励んで……星の数ほど子供を生むことだ。……そうだろう?」
「それは……」
シウリンの手がアデライードの敏感な場所に伸び、まさぐり始めると、それだけでアデライードはあっさり陥落して彼に身を任せる。
「愛してるアデライード……永遠に、あなただけ」
「わたしも……愛してるわ」
寝台の上で身体の深い場所で繋がりあう二人の上では、金銀の光の龍がやはり睦み合って光の粉をまき散らし始めた。それは夜の空気の中を天空へと立ち上って、やがて天上に煌く星空の海へと溶け込んで、世界に遍く広がっていった。
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