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15、王気
二人の時
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部屋に戻った時、アデライードはまだ起きて、窓際の椅子にかけて膝に子猫を乗せていた。足元には、白い子獅子が丸くなっている。
エールライヒもだが、動物たちは何かの勘で、アデライードが大切なものを失ったのに気づいているのか、今日は一日中、アデライードの傍らを離れなかった。
「窓辺は冷える。そろそろ、中に入れ」
シウリンが大股で近づき、黒天鵞絨のマントでアデライードの細い肩を背後からくるむようにした。
「シウリン……もう、宴会は終わりましたの?」
「あいつらは底なしだ。付き合いきれないよ」
笑って、アデライードの額に口づけを落とし、そのまま膝裏に腕を入れてふわりと抱き上げる。膝の子猫がバランスを崩して膝から転げ落ち、空中でくるりと一回転してシュタっと立ってから、シウリンに不満気な声を上げた。
「……ああ、すまない。お前のことまで考えていなかった」
白い子猫とジブリールは、二人の足もとにじゃれつくように寝室へとついてくる。子猫とはいっても、だいぶ大きくなって、もう大人の猫と大きさは変わらないが、それでもジブリールの方が大きい。どちらも白いので、親子のようにも見える。大きいジブリールの方が実は子供、という関係がよかったのか、二匹は意外にも上手くやっているようだ。
そのまま寝台の上にアデライードを乗せる。室内履きを脱がせ、シウリンはマントを外して革のブーツも脱ぎ捨てて寝台に上る。一緒に動物たちも上ってきてしまって、シウリンは追い払うべきか迷う。だがアデライードは二匹をかわるがわる撫でてから、言った。
「メイローズさんが、しばらく、ダメって。だから、この子たちも一緒に……ね? その方がシウリンも暴走しないだろうし」
「……私だって、我慢するときはするぞ?」
「そうかしら」
少し寂しそうに微笑むアデライードの表情に、シウリンの胸が痛む。
「体調は?」
「うーん、少しぼうっとします。魔力が足りないみたいで……」
シウリンが素早く夜着に着替えてアデライードと並んで横たわると、動物たちは彼らの足元にそれぞれ丸くなった。彼らの体温が暖かい。
「メイローズさんからも聞きました。魔力不足でわたしもシウリンも気を失ってしまった時、小さな銀色の龍が西南の塔に向かって飛んで――それで、魔力がいきわたって、結界が修復されたって」
「アデライード……」
思わず抱きしめた妻の頬は、涙で濡れていた。
「すまない。私の力が足りなくて――あなたには、辛い思いをさせてしまった」
腕の中で、アデライードの白金の髪が揺れる。
「いいえ……そうじゃなくて。最初から、わたしの魔力では足りないかもしれないと思っていました。わたしの足りない魔力を補うために、ここにいてくれたのかもしれない。そのことに、感謝しないと……」
「アデライード……」
シウリンが額に口づけ、薔薇の香りを吸い込む。
「愛してる。……もうこれから先、あなたから何一つ、奪わせない。絶対にあなたを守るから」
シウリンの誓いに、アデライードも彼の背中に縋りついた。
冬至の夜は、二人はただ、静かに抱きしめあって眠った――。
エールライヒもだが、動物たちは何かの勘で、アデライードが大切なものを失ったのに気づいているのか、今日は一日中、アデライードの傍らを離れなかった。
「窓辺は冷える。そろそろ、中に入れ」
シウリンが大股で近づき、黒天鵞絨のマントでアデライードの細い肩を背後からくるむようにした。
「シウリン……もう、宴会は終わりましたの?」
「あいつらは底なしだ。付き合いきれないよ」
笑って、アデライードの額に口づけを落とし、そのまま膝裏に腕を入れてふわりと抱き上げる。膝の子猫がバランスを崩して膝から転げ落ち、空中でくるりと一回転してシュタっと立ってから、シウリンに不満気な声を上げた。
「……ああ、すまない。お前のことまで考えていなかった」
白い子猫とジブリールは、二人の足もとにじゃれつくように寝室へとついてくる。子猫とはいっても、だいぶ大きくなって、もう大人の猫と大きさは変わらないが、それでもジブリールの方が大きい。どちらも白いので、親子のようにも見える。大きいジブリールの方が実は子供、という関係がよかったのか、二匹は意外にも上手くやっているようだ。
そのまま寝台の上にアデライードを乗せる。室内履きを脱がせ、シウリンはマントを外して革のブーツも脱ぎ捨てて寝台に上る。一緒に動物たちも上ってきてしまって、シウリンは追い払うべきか迷う。だがアデライードは二匹をかわるがわる撫でてから、言った。
「メイローズさんが、しばらく、ダメって。だから、この子たちも一緒に……ね? その方がシウリンも暴走しないだろうし」
「……私だって、我慢するときはするぞ?」
「そうかしら」
少し寂しそうに微笑むアデライードの表情に、シウリンの胸が痛む。
「体調は?」
「うーん、少しぼうっとします。魔力が足りないみたいで……」
シウリンが素早く夜着に着替えてアデライードと並んで横たわると、動物たちは彼らの足元にそれぞれ丸くなった。彼らの体温が暖かい。
「メイローズさんからも聞きました。魔力不足でわたしもシウリンも気を失ってしまった時、小さな銀色の龍が西南の塔に向かって飛んで――それで、魔力がいきわたって、結界が修復されたって」
「アデライード……」
思わず抱きしめた妻の頬は、涙で濡れていた。
「すまない。私の力が足りなくて――あなたには、辛い思いをさせてしまった」
腕の中で、アデライードの白金の髪が揺れる。
「いいえ……そうじゃなくて。最初から、わたしの魔力では足りないかもしれないと思っていました。わたしの足りない魔力を補うために、ここにいてくれたのかもしれない。そのことに、感謝しないと……」
「アデライード……」
シウリンが額に口づけ、薔薇の香りを吸い込む。
「愛してる。……もうこれから先、あなたから何一つ、奪わせない。絶対にあなたを守るから」
シウリンの誓いに、アデライードも彼の背中に縋りついた。
冬至の夜は、二人はただ、静かに抱きしめあって眠った――。
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