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第三章

泡風呂*

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「次はわたしがリジーを洗います」

 さんざん、洗うというよりは石鹸の泡で弄ばれたわたしは、実のところ息も絶え絶えで、意趣返しをしてやらねば気が済まない気分だった。

「俺を?エルシーが?」

 殿下は嬉しそうにニヤニヤすると、じゃあと言って泡だらけの浴槽の中で両脚を開き、わたしを長い脚の間に座らせる。

「じゃあ、洗ってくれ。……もちろん、コレもだぞ?」

 泡を掻き分けると、両脚の間には、もうすっかり元気にちあがった、赤黒い分身が反り返っていた。

「……これ、普段の生活に邪魔じゃないですか?」
「普段からこの状態なわけないだろう」
「……え? 違うの?」
「まあ、お前がコレを目にするような状況下では、とっくにこうなっているが……」

 石鹸を泡立てながら首を傾げているわたしを見て、殿下が苦笑する。

「通常状態がコレだったら、男のトラウザーズは漏れなくテントが張ったみたいになってるだろうが。そんなの見たことあるか?」
「……そんな場所に注目したことはないので……」

 わたしは泡立てた石鹸の泡で、そっとその赤黒い分身を包む。

「フワフワの間からコレが覗くのも、なんだかシュールですわね」
「俺のちんぽで遊ぶな」

 わたしがそっと両手で握り込み、泡を滑らせるようにしごくと、殿下がはあっと溜息をついた。

「……この下のこれも、触っても……?」
「ああ……そっと握ってくれ。そこに子種が入ってる、大事な場所だ」

 わたしは二つの袋にもそっと触れる。下から恐る恐る見上げれば、殿下は両目を閉じてうっとりした表情をしていた。

「触られると、気持ちいいの……?」
「ああ、すごく、気持ちいい……」

 殿下が細めを開けてわたしを見下ろし、微笑む。ゆっくりと丁寧に愛撫すると、殿下の息が荒くなる。
 わたしの手で、殿下が気持ちよくなる――。
 初めて殿下に抱かれたころ、殿下がわたしを弄んで幾度もイカせる理由がわからなかった。
 わたしが気持ちよくなっても殿下が気持ちよくなるわけじゃないのに、どうしてとずっと疑問だった。

 でも、今ならわかる。
 殿下が気持ちよくなってくれれば、嬉しい。

 もっともっと、わたしの手で蕩けて欲しい。
 この人が、好きだから――。

 キスを交わしながらなおもしごいていくと、殿下が眉間に皺をよせ、わたしを止めた。

「エルシー……もういい。……それ以上やると、出る」
「でも……」

 どうせなら最後までイって欲しいのに。
 不満そうなわたしのうなじを抱え込み、キスをしてから言う。

「どうせなら、お前の中で出したい。……ゆっくり、ベッドの上で」

 殿下はわたしを抱きあげるとシャワーの蛇口をひねり、熱いお湯でわたしたちの身体の泡を残らずきれいに流してしまった。





 ずいぶん、長風呂をしてしまったから、指先がふやけて皺皺になっていた。
 ベッドの上で薔薇の香りのする、香油をお互いの肌に塗りこめ合う。しだいに裸でじゃれ合って――。

「いい匂いがする」
「ふふ、リジ―も」

 殿下の唇がわたしの裸の胸に触れる。胸のふくらみを両手で寄せるようにして、はざまに顔を埋め、殿下が溜息を漏らす。

「ああ……感動だな。あんなにまっ平だったあの胸が、こんなに成長するなんて」
「胸に感動されても。……リジーのスケベ」
「平らな胸も可愛かったが、やわらかおっぱいの魅力には陥落せざるを得ん」

 ちゅ、ちゅ、と唇で吸い上げながら、殿下はわたしの胸を堪能する。わたしは殿下の、まだ湿っている黒い、癖毛に指を這わせる。頂点の尖りを舌で押し潰すように舐め上げられ、わたしが思わず甲高い声を上げる。

「ああっ……」
「気持ちいい? エルシーも胸を吸われるのが好きだな?」
「んんっ……だっ……だってっ……」
「エルシー……たくさん、気持ちよくしてやる」

 頂点をきつく吸われて、わたしが身を捩る。じくじくした熱が下腹部にたまり、触れられるだけで脳が蕩けそう。

「ああっ……リジー……もうっ……」
「……下も濡れてきた……ドロドロだ」

 殿下の長い指が、わたしの秘所を辿る。自らつるつるに剃り上げた秘所の、秘裂を割り花弁の内側に侵入する。

「んっ……ふっ……んんんっ……」

 ぐちゅぐちゅと、いやらしい水音がわたしの耳にも届き、恥ずかしくて目をつむる。

「すごいぞ、ぐっずぐずなのに、俺の指を締めつける。欲しくてたまらなくて、涎を垂らしているみたいだ」
「やめっ……そんな……いじわる……」
「いじわる? 俺が? そうかな?」

 殿下はわたしの内部を探っていた指をついと抜いて、わたしの膝を開いてじっと上から覗き込む。

「……触ってないのにヒクヒクしてるな。すごく物欲しそうに見えるが」
「なっ……やめっ……見ないでっ……」
「見ないで……どうして欲しい?」

 じっと見つめられている羞恥で頭が沸騰しそうなのに、わたしの秘所からは絶え間なく蜜が溢れて、それが尻へと伝い流れていくのを感じる。

「ああもう、何もしてないのに、こんなに溢れさせて。触って欲しい? 舐めて欲しい? それとも、れて欲しい?」
 
 そんなことを言われても!

「どうして欲しい? 強請ってくれよ、エルシー」
「そ、そんなこと、言われても……ああっ」

 脇腹をぬるりと舐め上げられて、遠すぎる刺激に一層、飢餓感が強まる。

「ああ……お願い……なんでもいいのっ……お願い、ぜんぶっ……」

 その言葉に、思わず吹き出した殿下が、笑いながらわたしの太ももにキスをする。

「ああ、全部やるよ。欲張りエルシー……可愛い、可愛い俺だけの、エルシー……」

 殿下はそう言うと、わたしの敏感な尖りに顔を寄せて、キスをした。待ち望んだ、脳髄を貫く強烈な快感。

「あああっ……」

 ねっとりとさらに舌で舐られて、わたしはあっけなく陥落する。頂点に押し上げられ、投げ出される。

「ああっ、あああっ……」

 ガクガクと身体を戦慄が貫く。身体を捩り、逃れようにも逃れられない快感に翻弄される。

「ああっ……り、リジー……あああっ」
「エルシー……もう、我慢の限界だ、欲しい……」

 リジーがわたしの両膝を掴み、乱暴に広げる。今までの丁寧な仕草が嘘のように荒々しく、忍耐が切れてしまったというように、熱いものをわたしの脚の付け根に押し付ける。

「ああっ……それっ……」
「挿れる……ぞ……エルシー……」

 ぐぐっと、わたしの中に彼の剛直が突き立てられる。熱い楔が肉を引き裂くように入ってくる。熱い――。

「ああああっ」
「はっ……ううっ……エルシー……きつい……食いちぎられそう……」

 最奥まで強引に穿たれて、わたしは息を止める。中に、彼の存在を感じる。熱くて、少し、苦しい……でも……。

「エルシー……」

 彼の唇がわたしの唇を塞ぎ、舌が舌に絡みつく。彼の一部がわたしの中に入り込み、内側からわたしを満たす。わたしと彼は一つになり、もう何者も、わたしたちを別つことはできないのだと、思う。少なくとも今この時だけは。わたしは彼だけのもので、彼はわたしだけのものだと。

 両腕で彼の頭を抱き抱え、黒いごわごわの癖毛を握りしめる。――好き。この人が。

 彼の舌がわたしの歯列を裏をなぞり、口蓋の裏に触れる。それも強烈に気持ちいい。繋がった場所で彼を感じる。わたしの中が彼を締め付けて、灼熱に身体が溶けていきそう。抱きしめられて肌と肌が密着し、自分と彼の境界すらわからなくなる。だって、わたしたちは一つだからーー。

「うっ……はあっエルシー……締めすぎだ……」

 耐えられないと言う風に殿下がわたしの唇を離し、少しだけ体勢を起こす。わたしの両手をそれぞれ握りしめ、指を絡めるようにして、シーツの上に縫い留める。

「動くぞ……」
「んんっ……んっ……」

 ゆるゆると彼が腰を動かし始め、その動きに連れて息が上がり、声が出てしまう。彼の動きはどんどんと激しさを増して、深く腰を突き上げて、わたしの最の奥深い場所を幾度も抉る。そのたびに痺れるような快感が走って、わたしはすぐに、何も考えられなくなる。

 それからはただひたすらに蹂躙される。それはどこか暴力にも似て、彼に貫かれ、犯されているのに、飼い馴らされたわたしの身体はそこから快楽を拾いあげ、それを甘受し、悶え、悩ましい声を上げてよがってしまう。だって気持ちよくて、何もかもが愛おしくて、幸せで……いつまでもその荒々しい嵐の中で揺さぶられていたくなる。

「エルシー、エルシー……」

 彼の額に玉の汗が浮かび、凛々しい眉が顰められ、動きのたびに黒髪が宙を舞い、汗の雫が散る。彼も感じてる。わたしを。愛している――。
 
「エルシー……」

 彼がわたしのさらに奥深くに踏み込み、わたしを強く抱きしめる。あまりの快感に脳がスパークしそう。

「あっああっ……あああっ……」
「くっ……もう、出る……」

 彼の楔が限界まで膨れ上がって、ついに弾ける。熱い命の飛沫がわたしの中に注ぎ込まれて、その灼熱の奔流に巻き込まれて、わたしも絶頂する。

「ああっあ―――――――っ」

 彼の力強い両腕に抱きしめられ、彼に縋りつき、快感に身体を震わせる。

「エルシー……俺の……」

 二人、同時に快楽の淵に溺れ、快楽の波に揺蕩たゆたう。
 永遠のような刹那。繰り返される、ただ一度の瞬間。
 



 これが愛ならば、人はこれ以上のものは何も手に入らない――。

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