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第二章

窓ガラス*

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 列車は山深い場所を走っていて、時々、ゴオオオオという音とともにトンネルに入る。トンネルの中は真っ暗で、窓ガラスの向こうは恐ろしい闇。内部は電灯に照らされて薄明るいから、黒い窓ガラスには、殿下に背後から抱きしめられた、裸のわたしの姿が映っている。殿下の大きな手が、わたしの二つの膨らみを覆い、指が柔肌に食い込み、指の間から興奮で尖った乳首が存在を主張している。殿下の両の親指が、ぐにぐにと二つの尖りを弄んだ。

「ふっ……んんっ……やっ……恥ずかし……」
「ちゃんと見ろ、今さらだ。さっきまであんなに大きな声でよがっておいて。……たぶん、隣の部屋にも聞こえてるぞ」
「やっ……うそっ……いやあっ……」

 わたしは羞恥で首を振り、身を捩って逃れようとしたけれど、殿下が離すはずもなく、見せつけるように二つの乳房を揉みしだく。

 ガタン、ゴトン……ガタン、ゴトン……ゴオオオオオ……
 規則正しい列車の響きがやけに耳につく。トンネルを抜け、列車の音が変わる。ほんの少しだけ、外が明るくなる。

「お願い、やめて……カーテン、閉めて……もし、人がいたら……」

 内部は明るいから、外からは丸見えになる。わたしは縛められたままの両腕を窓枠に突っぱって、必死に抵抗するが、殿下はニヤニヤ笑いながら、自分も衣服を脱ぎ捨てていく。
 
「こんな時間に、真っ暗な山の中に誰もいるはずはない」
「でも、万一……」

 裸になった殿下がわたしの肩口に顔を寄せ、耳元で命じた。

「諦めろ、エルシー……素直に言うことを聞け。俺の、可愛いただ一人の牝犬……」
「リジー、ひどい……」

 窓ガラス越しに、リジーがわたしをギラギラとした瞳でじっと見つめ、耳朶を口に含んで甘噛みした。窓ガラスに映るわたしの頬を、涙が溢れて伝い堕ちる。

「ああ、可愛い……全部好きだ。笑顔も、泣き顔も……全部……エルシー」

 窓ガラスに映った殿下の――リジーの顔も、泣いているように見えた。






 わたしが抵抗を諦めると、アルバート殿下は大きな両手で、乳房をそれぞれ持ち上げるようにして、揺らしたり、指の間で乳首を挟み込んで嬲ったり。そんなわずかな刺激でも、その場所は教え込まれた快楽を拾いあげて、わたしは思わずため息を零す。寝台に膝立ちになっていたが、列車の振動に耐えきれず、縛られた両手を窓に押し付けて、縋るように堪える。殿下がその両手をわたしの頭上へと引き上げる。手が邪魔して、ガラスに身体が映らないからだ。

「はぁっ……」
「……胸も、キレイだ……昔はぺったんこで、小さな乳首があっただけだったのに。……弄られるの、好きだろう? 色っぽい顔しやがって……」

 殿下はわたしの耳朶を唇で食み、甘噛みしながら、でも目だけはギラギラと窓ガラス越しにわたしの顔を見つめている。細かく指を揺らしたり、膨らみを揉みしだいたり、好き放題に弄ばれて、わたしの両胸はどんどん、形を変えていく。

「ふっ……んんっ……んっ……やあっ」
「……もう、硬くなってきた。ほら、こんなに……」
「いやっ……もう、やめて……恥ずかしい……」

 硬く尖った乳首を目の前で苛められて、わたしは羞恥に堪えられず、目を伏せ、顔を背ける。ジンジンとした刺激で息が荒くなっていく。殿下の左手が顎にかかり、クイッと正面に固定される。ガラス越しに殿下と目が合う。

「そろそろ、一つになりたい……いいだろう?」
「こんなとこではいや……お願い、意地悪しないで」
「俺に犯されてるお前の姿を見たいんだ。無垢で何も知らなかったお前が大人になって、俺にバックでガンガンに犯されて、淫乱なビッチに成長した姿をこの目に焼き付けたい」
「やめて!……悪趣味だわ、ひどい……」

 ガラス越しに涙目で睨みつけてやっても、殿下は気にもしないで左手で胸を弄び続け、右手がわたしの脚の間に滑り込む。

「残念だな、ここまでは映らない。俺のちんぽをガンガンに突き入れてる様子を見せつけたかったんだが……」

 すでに硬く漲った殿下の怒張が、わたしの尻に擦り付けられるている。

「今夜はおねだりしてくれないか。プロポーズが成功した記念すべき夜なんだ。……淫らな言葉なんてしゃべったことありません、ていう、お前の可愛いお口で」

 殿下がわたしの胸を揉み込み、お尻に腰を擦り付けながらニヤニヤした顔で言うので、わたしはムッとして顔を背ける。

「だ、誰がそんな恥ずかしいこと……んんっやああっ」

 キュッと胸の頂点の尖りと、脚の間の敏感な場所を同時に抓られて、わたしは思わず悲鳴を上げてしまう。

「ここ、何て名前だっけ、さっき教えただろう? ここ弄られると気持ちいいって、上手におねだりしてくれたじゃないか。一度強請ったら二度も三度も同じだ。ほら、もう一度ねだってみろ」
「やあっ、そんな、恥ずかし……いやあっ……そこはやめてええ……おかしくなっちゃう!」

 窓ガラスに映るわたしは男に胸と秘所を弄ばれて、いやらしく身体をくねらせ、必死に首を振って快感に耐えている。

「ここの名前を言うまで、ずっと、ここばっかり責めるぞ? それともここを苛めて欲しいから、名前を言わないのか? 淫乱なエルシーは」
「ち、ちがっ……違います、やめ、やめて……く、クリ……クリトリスやめて! ああっだめぇっ」
「ここ、感じると膨らんで勃起するんだぞ、俺の、これと一緒だ。ビンビンに感じてる、いやらしいな、エルシー」
「やあ、クリトリスは触らないで、あああっ、イく、イっちゃう、ああああ」
「ほらイけ、俺にクリトリスを弄られて、いやらしくイけ」
「あぁあっ……あ―――――――っ」

 両腕を窓ガラスに突っ張り、身体を弓なりに反らせるようにして、わたしはとうとう絶頂してしまう。窓の外を一瞬、ぼうっとした灯りが通りすぎていく。――駅だ。

「ああっ、やだあ、そと、えきが……ひどい、こんなの、ひどい――」
「大丈夫だ、誰もいない。愛してる、エルシー……挿れたい、エルシー」

 殿下の熱い楔が、わたしの脚の間を往復し、花弁にこすりつけられる。絶頂したばかりの身体には、それだけでもたまらない刺激になり、わたしは耐え切れずにとうとう陥落した。

「ああっ……挿れて、お願い、リジーの……熱いの、早く……ちょうだい」
「ああ、エルシー、エルシー……今、……挿れる……くぅう……」

 殿下の熱い怒張がわたしの中に突き立てられる。

「あっあああっ……」

 ガタン、ゴトン、……カーブが通りすぎて汽車のスピードが上がる。その規則正しい振動に合わせるかのように、殿下は激しく腰を突き上げ、わたしの最奥を幾度も抉った。列車の揺れる音と、結合部から響くいやらしい水音、肌と肌がぶつかる音、そしてもう止めることもできない、わたしの喘ぎ声が絡まり合う。殿下はわたしの左ひざの裏を掴んで、片脚を上げるようにすると、右手で花芯をグリグリと押した。

「あああっ それ、だめぇ……」
牝犬ビッチなエルシーは、犬がオシッコするみたいな、恥ずかしい姿で犯されてイくんだ。気持ちいいだろう? ああ、すごい、締まる……」
「やあ、違う、違うのぉ、ああっ、あああっ、違うのに、イく、イッちゃうぅう、ああああっ……」

 窓ガラスにはつながっている場所は映っていないけれど、殿下が掲げた膝と太ももが映っているから、自分がどんな恥ずかしい格好をしているかは、わかる。背後から犯されて秘所を嬲られ、白い胸を揺らして快感に身もだえるいやらしい女。クリトリスを摘ままれて達すると同時に、列車はトンネルに入ってくぐもった音に飲み込まれ、わたしの悲鳴のような嬌声もかき消された。

「ああああっ……」

 両手を突っ張って、左脚を高く掲げさせられ、胸を突き出すように絶頂するわたしを、だが殿下はさらに激しく責め続ける。

「くっ……エルシー……またイったな……俺の牝犬……ナカ、すごいぞ……ううう」
「ああっ、あああっ……ちが、牝犬、じゃない、違うのぉっ、ああっそれ、だめぇ……」

 絶頂してひくついている内部を振り切るように、奥の感じる場所を幾度も突かれて、そのたびにわたしの脳に閃光が走る。

「何が違う、ああ、エルシー……い……、悦い……ああっ……はあっ……」 
「ああっああっ……ああっ……やあっ……あああっ……」
「ああ、悦い……エルシー、エルシー、エルシー……」

 殿下はわたしの名を繰り返し呼んで、狂ったように腰を打ち付けている。彼の楔がさらに質量を増し、わたしがその圧迫感に息を呑んだ時、とうとうわたしの中に熱い飛沫をぶちまける。あああっ、熱い――。

「ああ、エルシー……出る……ううっ……俺の、エルシー……」

 殿下はしばらくわたしの中に入ったまま、背後から圧し掛かるようにわたしを抱き締めていた。殿下の荒い息が、耳元にかかる。

 狂熱が去って、列車の規則正しい揺れと響きと、そしてわたしたちの荒い呼吸。汽車はさっきよりもスピードを緩めて、慎重にカーブを曲がり、真っ暗な山中の駅を通り過ぎた。ポツンと灯った灯りが窓の外を過り、遠ざかる――。





「いい加減、これ、解いてください。これじゃあ、水も飲めません」

 ミネラル・ウォーターを瓶からラッパ飲みしている殿下に、わたしが戒められたままの両腕を差し出せば、殿下は瓶を置いてわたしのうなじを支えるようにして、唇を塞ぐ。冷たい水が口移しに流れ込んで、わたしは必死に飲み込んだ。

「……そうじゃなくて! 解いてください! ひどいわ! 人権蹂躙もいいところよ」
「諦めろ。お前は俺専用の可愛い牝犬なんだから、人権などない」
「ひどい! わたしは牝犬じゃありません!」
「俺は狂犬で、お前は牝犬。ぴったりじゃないか」

 殿下は悪戯っぽく笑うと、わたしの腕の間に頭を通して、ギュッと抱きしめる。殿下の顔がものすごく近く、そして逃げようにも、わたしの縛られた両腕が引っかかって逃げられない。わたしは唇を噛む。
 
「断固、訂正を要求します! 牝犬じゃないわ」
「犬がオシッコするみたいな態勢で犯されて、イったくせに。すごく可愛かったぞ? さすが俺専用の牝犬」
 
 殿下の手が、わたしの肌をゆっくりとなぞり、まだ快感の余韻の抜けきらないわたしは、ゾクッとした感覚に、思わず吐息を漏らす。わたしは気を取り直して、殿下を正面からグッと睨みつけた。

「牝犬は片脚上げてオシッコしたりしません。事実と異なる罵倒は受け入れられないわ」

 肌を撫であげていた殿下の手の動きがぴたりと止まり、殿下がわたしの顔をじっと覗き込む。

「……エルシー? ……不満点はそこなのか?」
「できれば手首も解いて欲しいのですが……」
「……エルシー、時々、お前は物事の軽重を間違っていると、俺は思うぞ?」
「いいから、何とかしてください!」

 わたしがなおも言えば、殿下はわたしの背中を支えて、ごろりとベッドに倒れ込む。縛られた両腕の間に殿下の頭が入っているから、殿下は正面の至近距離から、わたしを見下ろすことになる。

「え、何を……」 
すればいいんだろ? だから朝までセックスする」
「! やめて、そんなの無理!」
「こうしてると、離れられない感じが、たまらんな。愛してる」
「愛してるなら解いて!」

 わたしの懇願も虚しく、殿下はわたしの両手の自由を奪ったまま、明け方近くまでわたしを好き放題犯し続けた。

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