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第3章 学園編

47 神に誓って

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 はい、どーも。
 ルーシーです。
 あの悪役令嬢ルーシー・ラザフォードです。

 ………………えー、先日はね。

 美形のね、預言者兼王子様にね、研究室に来いと言われましてね、行ったんですよ。

 まぁ、その研究室に魔法石がいっぱいあったんですけど、ある魔法石をじっと見ていたら、「それ、君のためにつくったからー」と言われてね。
 その魔法石を取って触ったらね、突然光に包まれてね。

 そんでもって、目を開くと、目の前には花畑。
 なんと転移させられた、っていうね、事件があったわけですよ。
 
 前世ではありえない話ですよねー。
 まだまだありえない話があったわけですよー。
 
 なんと、なんと、その転移先で。 
 女神様にお会いしたわけですよ!

 え? 冗談を言うんじゃない?
 
 いやいや、冗談じゃありませんよー。
 あの女神様はね、私の体を操ったわけですよ。
 しかも、テレパシーも易々と使える。

 だから、あの人はきっと女神様なわけですよ。
 
 まぁ、そんな超人女神様とはよく分からない話をして。
 最後には女神様の名前がティファニーであることを知れた。

 でも。

 ――――――まさか、御神体に会えるとは思ってなかった。

 そう。
 私たちが住むムーンセイバー王国及び、アースの実家アストレア王国には国教がある。
 その国教がティファニー教。

 あの女神様が言ったことが本当であれば、彼女が御神体となる。
 前世では宗教なんてあまり気にかけなかったけど、こうなってくると無視はできない。

 彼女はまた私の転生を知っていた。
 また、こうも言っていた。

 『もし、私が全部全部仕組んだことだったら、あなたはどうする?』

 ――――――と。
 言われた時はまさかと思った。
 だけど、今こうして冷静に考えてみると、転生はやっぱり女神様がやったことじゃないのかって思い始めていた。

 乙女ゲームのキャラクターに転生させるなんて、普通じゃ思いつかないわ。
 さすが、女神様! よっ、ティファニー様!

 ………………なんつって。

 でも。
 なぜ、悪役令嬢のルーシー・ラザフォードに転生させたのだろう。

 彼女は、前世にあった小説や漫画のように、悪役令嬢がバッドエンドを回避する、そんなことを期待していたのだろうか?

 なら、なぜ夜久月魅なんだろう?

 男運にも恵まれなくて、あんな死に方をして、大した能力もない私がなぜ選ばれたのだろう?
 一体、何に期待していたのだろう?

 でも、それを考えたところでもう意味はない。

 女神様は私の言葉を聞いて、笑って、もう私に期待しないと言った。
 そして、私の長生きを祈ってくれた。

 何に期待されていたのか分からないままだけど、女神様に祈ってもらった。
 国教の御神体に祈られた。
 
 だから、私は。
 女神様のご期待に沿って、長生きしてやろうじゃないの。

 ……………それにしても。
 エドガーはなぜあんなことを言ったの?
 
 『俺はお前が好きだ。愛してる』
 
 一国の王子に言われたその一言。
 いつも以上にかっこよく見えてしまったエドガー。
 実際はいくつか下の子。20以上は確実に違うであろう子。
 
 そんな子に、思わず私はキュンとかしちゃったけど。

 名目上は彼の兄の婚約者なんだし。
 分かってる、私の立場を。
 彼との関係を。
 私の推しはカイルであることを。

 でも、あの瞬間を思い出すだけで、顔を赤くしてしまっていて。

 エドガーを見ると、キョどってしまって。
 今日の朝の挨拶もかんでしまった。

 でも、彼はにこりと笑っていたの。余裕があったのよ。

 「おはよう、ルーシー」
 
 ――――――っ!!。
 私の方が年上なのにっ!!
 ダメ男ばっかだけど、経験としては私の方が上なのにっ!!

 ………………でも。
 『愛している』なんて、誰かにも言われたような気がした。
 エドガーが初めてではなかったはず。
 誰だっけ?

 パパお父様だっけ?
 
 まぁ、そうして研究室帰還後、エドガーのトンデモ発言によって、気絶していた私ですが。
 研究室に帰ってこれた経緯を後で、リリーとキーランから聞いた。

 私たちが学園に戻ってこれたのはアースのおかげらしい。
 アースが魔法を使い、私たちの場所を突き止めて、研究室に再度転移させたようで。

 自分が起こした問題を自己解決。
 当然といえば、当然、かな。

 そして、事件があった次の日の昼休み。

 カイルたちが生徒会の仕事に言っている間に、私は教室でアースに問いただしていた。

 「…………アース、私が今から言うことは分かるとは思いますが………」
 「うん、分かるよー」
 「…………なぜ、あんなことをしたんですか」
 「それは楽しいからー!」

 と満面の笑みで答えられた。
 その後、「ごめんねー」とそれは軽い軽い謝罪を受けた。
 呆れて、ものも言えなかった。

 この人はもう変人こういう人なんだろう。
 私はそう思うことにした。

 はぁとため息をついていると、私は彼と目が合う。
 1人廊下を歩く彼。
 彼は別のクラスで、普段関わることもない。

 彼も生徒会のメンバーだったはずだから、これから生徒会室でも行くのだろう。
 そう考えて、今日も彼と関わることがないと思っていたが。

 ライアンは彼を見るとハッとして、私たちのところにやってきた。
 一応、私は挨拶をし一礼するが、ライアンは軽く受け流していた。

 まぁ、そうですよね。
 私のことなんて、どうでもいいですよね。

 うん。
 ライアンとアースは王子だし、2人でなにか話したいことでもあるのだろう。何か用事でもあるのだろう。
 アースとは話したし、私はそっと引き下がろう。

 と退散しようとしていると、「ルーシーはそこにいて」と言われた。

 なぜか、ライアンはキレていた。
 私に、アースに。

 「君たち、何をしてたの?」
 「えー? お話していただけだけどー? ねぇ、ルーシー?」
 「………あ、はい。お話していました」
 「話?」

 そう言って、こちらをぎろりと睨むライアン。
 一時して、彼はアースの方に向き直った。

 「ねぇ、アース」
 「なんだい、ライアーン?」
 「ルーシーは僕の婚約者・・・・・なんだけど」
 「うん、知ってるー」
 「なら、ルーシーをたぶらかさないでくれるかい?」
 「僕、そんなことをしていないよー」
 「………………」

 突然黙る2人。

 え?
 ちょっと?
 何、この険悪な雰囲気。

 私は交互に2人を見る。
 アースは相変わらずニコニコ笑顔。
 でも、その笑みがなんか怖い。不気味。

 ライアンの方はというと。
 めちゃ激おこだった。
 眉間にこれでもかとしわを寄せていた。

 ………………一体、2人に何があったのよ。

 「ねぇ、アース」
 「なんだーい?」
 「ルーシーに不用意に近寄らないでほしい」
 「なんでー?」
 「………」
 「理由もないのに、近寄ったらダメなんだーい?」
 「理由はあ、る………」
 
 ぎこちなく答えるライアン。
 一方のアースは真っすぐ彼を見ていた。目は開ききっていた。
 まるで獲物をしとめるように、見ていた。
 ………………まぁ、笑ってはいたが。

 「その理由って?」
 「それは………彼女が僕の婚約者だからだ」
 「えー? それが理由ー? 君の婚約者だからって、ルーシーと話したらいけないのー?」
 「他にも理由があ、る…………」
 「何ー? 言ってみてよー?」
 
 時折なにか言いたそうにするライアン。
 しかし、彼は無言のままだった。

 「言えないのー?」
 「………………」
 「あはは………まぁ、言えないよね」

 彼が言えないということを分かっていたように、アースはうんうんと頷く。
 そして、先生のごとく人差し指をピンと伸ばし、話し始めた。

 「あのねー、ライアーン。僕は別にルーシーをたぶらかそうとして関わっているんじゃない」
 「………………」
 「僕はルーシーを友人として、関わっている。それのどこがいけないことかい?」
 「………………いや、いけないことはない、と思う……」

 「それに僕はルーシーに危害を加えるようなことは、もう絶対にしない。神に誓って、しない」
 「………君が神に誓うというんだね」
 「言うよー、あんな神様だけど誓うよー」

 ほんとか分からないことを言うアースに、ライアンはなぜかほっとしていた。

 「分かった………アース、誤解してごめん」
 「なんのなんのー。分かってくれればいいさー」
 「ルーシーも………すまなかった」
 「あ………はい」

 そうして、言いたいことだけ言って、ライアンは颯爽と去っていった。
 彼の姿が見えなくなったことを確認すると、私は呑気に椅子に座って鼻歌をしているその人を見る。
 
 「………アース、私に危害を加えないとか言ってましたけど」
 「言ったねー、誓ったねー」
 「危害を加えないだけで、前みたいな突然転移は、私は勘弁ですよ」
 「えー。それはまたするかもー」
 
 またするのか。予定があったのか。
 できればどうか、二度としないでほしい。

 「…………するなら、せめて事前に教えてください」
 「えー、それも無理かもー」

 ………………おい、本当に神に誓ったのか。
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