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龍と晴と華夜

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華夜ちゃんは昔から特別だった。

僕は昔から弱虫だった。
八咫烏は迷った人間を導く妖怪。

でも全然能力も使えなくて龍みたいに強くもなれない。

だからいつも何をしても龍には追いつかなかった。

その代わり追いつけない僕をいつも気にかけてくれるのが華夜ちゃんだった。

「大丈夫?龍はいつも行動するのが早いからついて行くの大変だよね?晴はゆっくりで良いんだよ。」

そう言っていつも待ってくれた。

龍は4歳の頃に既に角が生えていて周りからは流石だと言われていた。

だから僕も同じようになりたかったけど結局変化が上手くできたのは5歳の頃。

変化が出来て烏になれても上手く飛ぶことは出来ない。

そう言われていたから一生懸命努力した。

1番龍には負けたくなかったから。

頑張って練習して何回も落ちたりして、傷だらけになっているのを必死で華夜ちゃんにバレないようにした。

怪我していることが分かるといつも華夜ちゃんは心配してくれる。

それが嬉しかったけど、辛かった。

華夜ちゃんから心配される男じゃなくて華夜ちゃんを守る男になりたいから。

でも飛べるようになったことが親から龍に伝わって、それを華夜ちゃんに見せる時になった時いつもニコニコしていた華夜ちゃんから笑顔が消えた。

変化できた時はすごいって言ってくれたのに、笑ってくれたのに急に消えてしまった。

それはほんの一瞬で、華夜ちゃんの名前を呼んだらボーッとしてたって言っていたけど、きっとそうじゃないと思った。

でも弱かった僕はその変化に気づきながらもそれを気にしてあげることがその時出来なかった。

龍はどんどん変化も能力も上手く使いこなしていった。そんな姿を見る度に、華夜ちゃんがすごい!って言う度に焦った。

だから早く龍みたいになりたくて7歳の頃、必死に能力も使いこなすように努力し続けて、ある日無茶をしすぎたせいで疲労で倒れた時があった。

それに1番早く来てくれたのが華夜ちゃんだった。

きっと大丈夫?って言ってくれると思って華夜ちゃんが家に来たことを聞いた時少し嬉しくなって部屋に案内するようにお手伝いさんに伝えた。

でもベットで待っていた僕は部屋に入ってきた華夜ちゃんに驚いた。

華夜ちゃん怒った顔をしながら泣いていた。

入ってきてすぐ僕に近づいてきた。
「華夜ちゃん…?」
「晴のバカ!」

華夜ちゃんの第一声にまた驚いた。

「どうして自分の体を大事にしなかったの?どうして無茶したの?倒れたって聞いて、何か病気にかかったのかと思って心配したのに能力の練習のし過ぎって…。バカ!!」

華夜ちゃんはそこで僕はどうして華夜ちゃんが怒っていたのかが分かった。

「どうしてここまでしたの…?私、理由によってはまた怒るよ?」
「また怒るの…?」
「うん。でも理由はちゃんと聞く…。」

少し泣き止んではいたけど、グスグス言いながら話を聞いてくれた。

「んと、実はね…龍が色々出来ることに焦ったんだ。僕よりも早く変化が起きて、今では能力も簡単に扱えてる。全然出来ない僕は早く龍に追いつきたかったんだ…。」

怒られることを覚悟していても華夜ちゃんのおこった顔を見たくなかったのと理由を言ったことが恥ずかしくて俯いた。

「バカね…。晴はほんとにバカ…。」
「え…?」
「二人は十分凄いのよ?4歳で変化した龍はほんとにすごいと思う…。でも5歳で変化した晴も凄いのよ。特に晴の場合は烏だから人型じゃない分、日頃の行動じゃない空を飛ぶことだってすごく難しいのに比較的すぐ出来たじゃない。どの人も才能があるって言っていたわ。龍と晴は能力の力もそれぞれ違うじゃない。龍は赤い鬼神で炎の能力だけど、晴は烏ということもあって風でしょ?変化の形も違えば能力も違う。そんなに違うのにどうして龍と比べるの?特に龍と晴は年齢も違うのよ…?」

違うよ、華夜ちゃん。
僕は華夜ちゃんにすごいって言ってほしいんだ。その為には、龍より先にいかないと龍より先にすごいって言ってもらえないじゃないか。

でもそれは言えなかった。
まだ龍を超えられないということが先に来て、華夜ちゃんのためにという事を伝えられなかった。

「ごめんなさい…、華夜ちゃん。心配かけて…。」
「まだ龍には負けたくないの?その顔はまだ納得いってない顔だもん。」
「さすが幼なじみだね…。」

すると華夜ちゃんは呆れたようにため息をついた。

あぁ、僕は華夜ちゃんに呆れられてしまったと思った。

するとベットで上半身だけ上げていた僕をふわっと温かいものが包んだ。

「え!!華夜ちゃん?!」

華夜ちゃんが僕を抱きしめてくれたのだった。

「もうこうでもしないと私の心配が通じないかと思って…。晴は十分頑張ってるわ。ほんとは知ってるのよ。こっそり練習していること。私や龍にバレたくないのかな?って思って色々練習してるの気づかないフリしてたの。ちゃんと気づいてるの、努力してること。」
「華夜ちゃん…。」
「でも晴はずるいわ。」
「どうして…?」
「私はまだ変化出来ないのよ…?」
「あ…」
「気づいた?私はまだ出来てないの。私にとって能力が使える2人がより羨ましいわ。私は能力が使えても変化出来てない時点で2人と肩を並べられないもの…。」

急に華夜ちゃん声が心細くなった。

「私は二人ともすごいと思っているし、とっても羨ましい…。」
「華夜ちゃん…。」
「そんなにいっぱい努力しないで…。私を置いて行かないで…。」
「ごめん…ごめんね、華夜ちゃん。」

僕の肩に顔を埋めていた華夜ちゃんの表情が見えなかった為、泣いてるのかと思ってそのまま抱きしめ返そうとした。

すると華夜ちゃんはすっと離れていつもの笑顔を見せた。

「冗談よ。ジョーダン!さっきのは気にしないで。でも心配は本当よ?」
「う、うん。」
「とにかく早く元気になって。龍も心配してたわ。ちょっとお家の用事で私みたいにすぐには来れなかったんだけど、それが終わったらすぐここに来るわよ?絶対理由聞かれるわよー!」
「えぇ…。」
「でも秘密にしてあげるね。んと、龍にはちょっと能力の練習をしてて無理しちゃっただけって言っておけば多分私みたいに聞いてはこないと思うから。」
「う、うん。」
「多分そろそろ来ると思うし、玄関で龍を待つよ。先に少しでも宥めとかないと倒れた晴には強烈だと思うから。」
「そんなに強烈…?」
「うん。強烈。」

そう言うと自然と二人で顔を合わせて笑いあった。

そのまま部屋出ていこうとした華夜ちゃんを呼び止めた。
「華夜ちゃん!ありがとう。」
「どういたしまして。私は一生懸命頑張る晴のこと好きよ。でもそんなに焦らずに自分なりのペースで頑張って欲しい。きちんと自分のペースを見つけて頑張ってくれたらきっともっと尊敬するわ。それじゃ行ってくるね。」

そう言って部屋を出ていった。

今の言葉が僕の心に響いた。

前まですごく好きだったけど、もっともっと好きになった。

そして多分僕のそばで言ったことは冗談じゃなくて本当だと思う。

絶対彼女のそばにいようと思う。

何があっても支えたいと思う。

だから彼女の16歳の誕生日の日、変化出来なくても側から離れないようにしようと思った。

でもどれだけ僕や龍が言っても彼女には響かなかった。

そして次の日彼女が消えたことで僕の心も空っぽになった。

龍が近くにいたけど、龍の雰囲気もどんどん変わっていった。

彼女は今どこにいて、何をしているんだろう…。

早く君に会いたい。君に会って君が大切だって伝えたい。

早く君に逢いたい…。
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