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9話
しおりを挟むその後、自業自得の乳でか駄エルフさんの先導で、俺たちはエルフの森の入口へと辿り着く。
「あぁ本当外から見ると変哲のない森だよなぁ」
「ふふん~」
「お前の威張る理由は少しわからないが、確かにそうだな」
俺の率直な感想に気を良くしたのか少しふんぞり返っているフェリシテ。それを見て図rた威張り方であることをライが指摘している。ライは意外にこういうところは普通なようだ。
森は外から見る限りそれほど大きくもなく見え、更に言うのであれば何となくだが、あまり近づかないほうがいいような気にさせられる。
「ん~……」
俺は少し唸ると、目に力を少し入れ大きく見開く。スキルにあたるものだが、ようは目を良くすると考えて欲しい。ただ目がよくなっているというよりも、色々と見えるようにできるというのが正しいかな。
そして、改めて森の入り口を見ると、何やらかみがふっわっふっわの可愛い幼女の様な見た目の奴がこちらを見て手を振っているのが見えた。何となしに手を振り返しておくと、嬉しそうにしているのがわかる。
「ヴァムどうした? 何かいるのか?」
「あぁ~お前たちには見えてないのか? ん?」
「あ、私見えてないです……」
エルフのこいつが見えない? ん~まぁそういうのもいるのか?それともフェリシテが見えないってだけなのかな?
「そうだな、あれは多分この森に居る精霊なんじゃないかな?」
「おぉ、精霊か~。ん?」
どうやらライも俺の思った違和感に気が付いたようだ。
「あぁ……気になさらず~」
フェリシテはいつの間にか少し間延びする喋り方に戻っており
ある意味調子を取り戻しているのかもしれない。ただ少しそちらを見るとちょっとばつの悪そうな顔をしていた。
「そうか、じゃあ気にしない」
「そうだな」
「え? あははは」
あっさり気にしない宣言の俺にとライに戸惑いつつも苦笑いをしているようだ。気にするなと相手が言うんだから、わざわざ地雷踏みに行くこともなかろう?
しかし、さっきから気にかかるのは手を振っている精霊の側で、すげえぇ眉間にしわ寄せながら、手を前に出して『くるな~くるな~』ってやってるショートカットの精霊がいることだな。名前もわからんし、あいつはとりあえず仮称ムムムにでもしておこう。
ふっわっふわっ(仮称二)に俺が手を振ると、さらに嬉しそうにブンブン手を振ってくる。それを見て横のムムムが『やめなさいよ』とでも言っているのだろうか。窘められたからなのか、ふっわっふわっは不満そうに口をとがらせている。
「あ、あと、横でムムムって、こう、眉間にしわ寄せてなんかしてるのもいるな」
「あ、それは多分森の精霊で、この辺の結界とか担当している子たちだと思うかな~」
ほう、結界とな?
「あぁ、だからちょっと嫌な感じがするのか」
「あぁ、違和感はソレだったのか」
フェリシテが言うには、どうやら普通の人ならぜっていに近づけないレベルの結界らしい。まぁあれだな、そもそものステータスが高いうえに、俺は状態異常への耐性が高いから、微妙な感じをするだけで終わってるんだろうな。
「あ、そこの子ー? 私はあなたたちのことが見えないけど、私ここの森のエルフだから、悪いんだけど中へ居れてもらえないかなー」
フェリシテが森の入り口の俺が見てた方向を見て言うと、ムムムはようやく、ハタと気づいたように、それをやめて中へと入れるようにしてくれたようだ。ただ俺のことは眉間にしわを寄せたまま、凝視しているが。まぁとりあえずは中へ入れてくれるみたいだ。
「お、なんかやめたぞ」
「よかった……聞いてくれたみたいで」
ムムムのほうが機嫌悪そうだったので、ふっわっふわっの方に礼を言ってやると、『いやぁ~』って感じで照れているようだ。それを見て『あ゛? お前じゃないだろ私だろ?』と、ふっわっふわっへ文句を言っているようなので、俺はわざと嫌そうな顔をして礼を言ってみるが、むしろガン付けられたりしている。
「ははは、ヴァム、端から見ているとものすごく変人だぞw」
「む、見えるとすごい面白い光景なんだぞ?」
「見えないからなぁ~それは残念だ。あとその精霊は強そうか?」
「いや可愛いのと面倒くさいのが居るな。なんか城であんなやつ見た気がするが……まぁいいか」
「ははは、じゃあ私の村まで行きましょうか~」
横で精霊の事などもあるのか、複雑そうな顔をしているフェリシテの先導で改めて森の中へと入っていく。
※
森の入り口。うん、森の入り口は森の入り口だわな。さて……などと思っていると森の少し奥の方から矢が飛んできた。
「ひゃぁああ!?」
フェリシテが大袈裟に驚く。俺たち? 驚かないよ? 当たらないものになんでビビらないといけないんだ?
「おおげさだな、当てる気もない矢がいくら飛んでこようが気にもならないだろうに」
ライはヤレヤレといった感じで、両手を腰のあたりで軽く上げて、フェリシテを困った者でも見るようにしている。
「いあ、だって、危ないですよ~?」
いつまでもこんな漫才じみたことをしていても埒があかないので、森の奥に隠れたつもりでいる何者かに向かって、声をかけることにする。
「ん~そこで隠れている感じの二人、そろそろ出てこないと、つい、火炎系の魔法とか無詠唱で投げ込みたくなっちゃうかもしれないぞ?」
少し奥の茂みが大袈裟に揺れる。お~動揺しとる動揺しとる。あ、さっきのムムムがまた出てきてすげえ怒ってるよ。手を振ってたのは、『え? マジ? やる? 本気?』といった感じでオロオロしているようだ。
「じゃあ五つ数えているうちに出てこなかったらやるね? いーち、にー」
右手の手のひらに小さい火の魔法をすこしだけ見えるように出す。
「さーん……」
「「まてまてまて、今出ていくからそれは流石に待て!」」
慌てて出てきたのは弓を手に持った狩人風の二人のエルフ(男)だった。
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