妹×僕・かいぎ

十四年生

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『使い魔』について

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 夕暮れの寒い日に、こいつはいつも家にやってきては暖かい場所を占拠する。

 こいつとはなにか?



 答えは『猫』だ。



 我が愛すべき妹が、庭に入り込んできたこいつを、保護という名の捕獲をしてからの付き合いとなる。

 正直いえば、野良であったので、家にあげる際には大地母神と、そりゃもう、ひと悶着はあったのだが。



 なかなかに難航した交渉ではあったが、結果としてはシャンプーをすること、蚤とりバンドをつけること、鈴をつけること、等などの条件の末、決着をつけた。 

 あ、もちろん僕は妹擁護派に決まってるわけだが、今回はそこに魔王も加わって、なんとか大地母神より許可を得た。魔王が何かを大地母神の耳元で囁いたのが決定だったようだ。何をささやいたかは知らないけど。



「にゃにゃにゃ?」



 とてもキュートな声が聞こえた。もうその声だけでゴハン三合は固い。

 え?誰の声だって? 猫の声かって?

 はっ、何を言ってるんだい? そりゃあ間違いなく僕の妹に決まってるじゃないか。ヤレヤレだよ。



「妹よ、ご機嫌じゃないか」

「あ、兄……うん……」



 ふと今の自分を視られていたことに気づき、妹の顔が少し赤くなる。そしてその姿は国宝級の可愛さじゃないか。



「あ、兄!」

「お、おう!」



 妹の今日の髪型はストレートなままにしているようだ。清楚な感じが実に魔性である、実に魔性である。

 そして髪を少しかきあげながらちょっと横を向いて妹が言う。



「あ、兄、か…...かいぎをはじめます」



 今日も妹の会議が始まるようだ。

 妹曰く、世界の真実を知る会議が……。






「あ…兄、猫は使い魔……」

「おお、王道だな」



 妹のまだ少し赤い頬についてはつっこまないし、あえて触れない。妹よ大変キュートだ! 兄は今この場を与えたもうたであろう、誰かは存じ上げない神様? に感謝をしているよ。本当誰ですか? マジお友達になりませんか?



「ん……」

「おあつらえ向きに、この猫は黒猫だしな」

「ん……まだ名前はない」



 使い魔……ファミリア、等ともいい、猫だけに限らず大抵の小動物は使い魔たりうる。自らの魔力の一部を与え、感覚の共有なども行えるわけだが……。



 僕自身、昔に飼っていた亀に名前を付け、使い魔として認定していた。寝食を共にしようとしたら、大地母神にこっぴどく怒られたのは懐かしい話だ。ただ、あいつはちょっとおっとり屋だったので、実質的な任務は一切何もこなしていないし、基本は食って寝てあくびをする使い魔だった……。



「かめ……、懐かしいな……」

「兄?」

「あぁ、古傷が少し痛んだだけだ、気にするな妹よ」

「ん……」

 使い魔は召喚後に使役するパターンや、その辺にいる小動物を使い魔へとするパターンもある。今回の妹の場合は後者になるのだろうな。



「この子はお利口……トイレもきちんとしている。私が脱いだ靴下も片づけてくれる……」

 な……なんだと!? 妹の靴下をくわえて片付けるだと?! 確かに優秀ではある。そして何かのフェチなのか? ちょっと気になるぞ兄は。



 妹の靴下の貴重さをよく理解しているという点では、全くこの猫侮れない……恐るべしだな。

 猫と目が合う、猫は少し自慢げに鼻を鳴らしてこちらを見てくる。やっぱそうなのか?



 うむ……多少自慢げな部分が気に入らないが、お前が使い魔というのであれば、この兄も認めざるを得まい。妹の靴下の貴重さ……(二回目)。 俺は視線で猫と分かり合い、見えない握手を交わす。やはりそうだったか……。



「妹よ、確かにこの猫は使い魔だな」

「ん……兄に、認められた良かった……」

 妹は嬉しそうに猫の頭を撫で、抱きかかえて僕のほうに向けてくる。



「いい?猫……貴方は使い魔。でも兄には絶対逆らってはダメ……わかった?」



『ニャー』



 猫は了解した!とばかりに強くひと鳴きする。



 猫のひと鳴きの後、大地母神がちょうど帰ってきたようで、玄関が少し騒がしくなりはじめる。



「兄~荷物多いからこっちきて~」

「へーい」



 僕が立ち上がって、その場を離れた時。妹は猫を抱き上げて自分に向かせて何かを言っていたようだった。



 ようは世界は平和で今日も妹は可愛い、それでいい。それでは、本日の妹と僕の会議を終えます。





「いい?あの人が私の大事な人.....わかった?」

『ニャ?! ニャ?? ニャー……』

「わかった?」

「ニャ!(敬礼)」



 妹がが何か小声で言っていたようだが、大地母神の再度の催促に掻き消え、それは聞こえなかった……。



 このお話は、どこにでもいる家族、どこにでもいる兄妹のお話し。

 ただ、少しだけ違うのは、この妹は、小学一年生にして既に厨二病だということ……だったのです。

 そうこれは、どこにでもありそうでない、妹と僕の世界の真実の会議のお話し……なのです。



『ニャー!(この娘、本気ニャ!)』

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