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『パーツ』と『ヒドイン』について
しおりを挟む『魔物コタツ』……。
ああこれはこの間、そういえばやった気がする。
今、僕と妹は魔物こたつに入り、ゆっくりとしている。互いにおなかくらいまで入っているため、さほど広くないコタツの中でちょいちょい妹の足だのにぶつかる。ロマンだね。
「兄、ごめ……」
「おぉ、ごめんごめん」
さっきからちょくちょく妹の足だのに当たっているのが、なんだか悪い気もしてきたので、体を起こして座るようにする。何事も程々が良い。
ちょっと離れたところにテレビがあり、リモコンは妹の頭の向こうに置いてある。
縁側の方には、最近見なくなってきたといわれる灯油ストーブがある。そういえば炎の赤い理由は燃料の中の炭素がゆっくり燃えているからとか聞いたな。
ストーブの上にはやかんが置いてあり、お湯を沸かしている。大地母神曰く、この時期は湿気と高温の状態に部屋をしたほうがいいとのこと。確かインフルエンザとかの対策だったかな。
『のどかだ……』
我が可愛い妹と二人きりで、ゆっくりと入るコタツ。そしてこたつの上にはカゴに入ったミカンがある。
これぞ良き日本の冬の情景だ。
『みかん食うかなぁ……』
そんなことを考えていたら不意に妹が僕のお腹の方から、顔を出してきた。
「ぷはぁ……我目標に到着セリ」
今日の妹の髪型はお団子か……。どうやら妹は、おなかまで入っていたこたつにて向きを変え、こちらへと進軍していたようだ。こたつの中は当然のように熱いので、さぞ大変な工程だったであろう。労いが必要だな。妹は『到着セリ』からもぞもぞと向きを変え、当然のごとく僕の膝の上に座り直した。
「中は熱かったろ?」
「ん、道中は灼熱のマグマの中のよう……」
「ははは、妹よ、長旅ご苦労様」
「ん、艱難辛苦の旅だった」
僕は妹を膝の上に乗せて、こたつの上のミカンを手に取る。
それを見ていた妹が何かを思い出したかのように、僕のミカンを奪うといつものアレを始める。
「兄、かいぎをします」
あぁ、今日はここでだったか。お兄ちゃん何となくだけど気づいてはいたよ?
今日も妹の会議が始まるようだ。
妹曰く、世界の真実を知る会議が……。
「兄、みかんはパーツ……」
「おお、そう来たか妹よ、確かにみかんといえばパーツ。それはあながち間違ったことではないな」
「えっへん」
妹は僕の返答に自信たっぷりに胸をそらしドヤ顔をかます。
しかし妹よ、パーツとする前にこれは果物だぞ。
和名、みかん。学名、citrusシトラスという。ちな、シトラスのほうは、厨二病御用達であるラテン語が元。みかんの分類はどうやら田中さんという偉い人がしてくれたらしい。僕らが今食べているのなんだなんだろうね。
多分僕らが食べているのは温州蜜柑とかに属しているんじゃないだろうか。多分ね。そんな気がする。
「田中さんえらい……」
「だなw」
妹はパーツと言ったことからか、自分の親指に蜜柑を刺し、『指が腫れた…』とかいっている。確かにパーツだな……。
本来なら食べ物で遊ばないとか言って、取り上げるべきなのだろうけど。それは僕の仕事じゃない。大地母神にばれないようにするんだぞ、絶対怒られるからな。
ちなみに僕の仕事は妹を愛でることだ。今、微妙な顔をしている人もいるかもしれないけど、事実なのだから仕方ないので諦めていただきたいところだ。
「ちなみに、妹よ、蜜柑だけど、あの白い糸みたいな物のことを『アルベド』っていうらしいよ」
「ん、ヒドイン……」
あぁ某超有名小説のアニメ版のヒロインと一緒だね。抱き枕もってそうだね。相手に生殖能力があるかは知らないが、いつもやる気満々だよね、あのひと。おっといけない、このままだと誰かが来てしまいそうだな。
さぁ妹よ、蜜柑を平らげるとしようか。ちな、ビタミンとかも豊富で体にもいいぞ。
「しかし本当にアルベド抱き枕持ってたな……(マジだった)」
「ん……私も兄のを持っている……(ムフー)」
妹が何か言ったのが聞こえたのだけど、丁度タイミング良く、やかんのお湯が沸いたことを知らせる笛のような音が鳴り響いて聞こえなかった。何か不穏な発言をされた気がするのだが気のせいだろうか……。
まぁいい、今日も世界は平和で妹は可愛い、これでよいのだ。
では、これにて本日の会議を終えます。
「抱き枕とか当然で必然……」
このお話は、どこにでもいる家族、どこにでもいる兄妹のお話し。
ただ、少しだけ違うのは、この妹は、小学一年生にして既に厨二病で兄への愛に溢れているということ……だったのです。
そうこれは、どこにでもありそうでない、妹と僕の世界の真実の会議のお話し……なのです。
「おっきくなっちゃった……(謎深)」
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