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第一章 枯れそうな花
第五話 最後の花
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あれから丸一日寝ないで台車を押して歩いた。どうもこの体になってから、寝ない食べないが平気になったようだ。ただ、なんだろう空腹感等は残っているようで、寝ないでも平気だし、食べないでも平気だ、辛いし耐えられるけどな。といったぶらーっくな感じになっている。
<今なら徹夜も怖くないなぁ……>
僕が寝ないで歩いていた理由は、あのギリギリの状態の花が枯れてしまったらまずいと思ったからだった。
<急がなくては……>
焦りもあるせいか結構な速度で台車を押しているせいか、背中の人形は時折風に揺れてカチャッカチャッと音を立ている。最初のうちは、ちょっとびっくりして止まって確認したりしていたけど、だいぶ慣れてきた。
「食べなくても平気だけど食べたら美味しいな」
コンビニから持ってきた満足系のチョコバーを食べながら歩く。食べなくてもいい体だが、食べたほうがより良い気分になるのだから食べたほうがいいに決まっている。チョコバーに満足していると、心の声が位置を修正してくれる。
『もう少しこっち』
方角は言ってくれなくなってきたが、逆に言えば方向はもうあっていて、そろそろあの場所が近いのかもしれない。もう少しかな?急がなくてはいけない。僕はあの花の願いを叶えないとダメなんだ。それが世界の再編成をするための、あの神様との約束だから。糸口もなかったのにせっかく最初の願いを見つけて叶えられそうなんだから、これはものにしないとだめだ。だいぶ打算的ではあるが、叶えられる側は別にそこは気にしないだろう。
「急がなくては……」
カチャカチャと背中の人形が鳴る。荒野を結構な速度で台車を押しているのだが、なんだかんだなだらかなせいか台車が横転したり、大きな石にぶつかったりとかはない。荒野の中でガラガラと台車の音とザッザッと僕の歩く音がしている。そういえば汗もなんか、出ていないな。便利と言えば便利な体になったものだけど、体温調節とか大丈夫なのかな。汗は書かないでもどこかでお風呂にでも入りたいものだな。
『あと少し……ほらそこ』
お、心の声さんが僕を止める。どうやら到着したようだ。あの花のところまで戻ってこれたようだ。花のあったところを見てみる。だいぶお疲れのようだ、むしろ死にかけていると言ったほうがいいのだろうか。でも何とか生きているみたいだ、間に合ったかな?
二リットルのペットボトルを台車から降ろして、花の側の地面に少しずつこぼしていく。確かこういうときはいきなり花に水をかけちゃダメ……だった気がする。何となくなんだけどそう思ったので周りから水をかけていった。
花にはキャップを使って少しずつかけてみた。どうだろうな……。つい花が気になって覗き込んでしまう。心なしか少し持ち直したような気がする。
「あ、蕾がいっこある。まだ咲いていないのがあるんだ……」
『あぁ……水……え?!水!!水だ!なんで?え?なんで?』
花の声が聞こえる。どうも死にかけているところに急に水が来て、どうしていいかわからなくなっているらしい。無理もないよな、そりゃそうだろう。死にかけていやむしろそう諦めていたのだろうな。最後の蕾咲かせないとだろ?間に合ってよかったよ本当。
「ははは、驚かしてごめんね。間に合ってよかったよ。さぁ、たーんとお飲み。そして綺麗な花を咲かせてね。頑張れ!」
『応援……?あぁ、なんだか懐かしいな。そうだ俺は頑張らなきゃな……この蕾を咲かせるんだよ。綺麗な花をさ……』
その後、花はゆっくりと蕾を開いていった。僕にはその姿はとても健気で儚くみえて……汗は出ないくせにどういうわけか涙は流れてきた。
『俺、ほら蕾……最後の蕾……大丈夫だ、遅れてもいいんだ、ちゃんと綺麗に咲けば』
一生懸命なその花の最後の蕾はゆっくりと慌てないようにしっかりと綺麗に咲いていった
「おおおおお……」
僕が今まで見たこともないくらい綺麗な花が咲いていた。ゆっくり開いた花は白く綺麗で、あの花の言葉の通り、ゆっくりと綺麗にしっかりと咲いていた。僕は声にならない声を出し、ただただ感動していた。彼かけていた花の方はすっかりしぼんでしまっていたが、風に揺れたのか花が自分で向いたのか僕の方を向いて花は言った。
『あぁ……どうだい? 大きな生き物さんよ。俺は綺麗だったか?どうだったさ、綺麗だったろ?あぁ……だよな?言わなくてもいいさ、何言ってるかもう聞こえないしな……あぁ……腹いっぱいだ……美味い水だった……。あぁ……その最後の花は良かったらどこかに飾ってやってくれ……な。あ……り…と……う』
それっきり花は一言も話さなくなった。僕はそのままそこで座ってそのきれいな花を見続けていた。やがて彼かけた花は、最後の蕾の花を残して、地面へと落ちて還っていった。
『願い……叶えた……』
心の声が少し嬉しそうに言う。それと同時に何か小さなものが人形へスッと入っていった。僕はそれを驚いてみる。カチャ……人形が一瞬鳴った。ただその一瞬だけ鳴っただけであとはまたいつもの人形になっていた。こうやって何かを集めて行けばいいんだろうか。そのうち何かこの人形にもおきるのかな……。
「願い、叶えられたみたいだ……」
花のあったところのペットボトルの残りの水をかけたあと、僕はそのあたりの土と一緒に、三分の一くらいに切ったペットボトルに、最後の蕾の花を移して、そこを後にした。枯れかけの花の遺言みたいだったので、そのままにしとくの何かと思ったので持っていくことにした。
『もっと先……願い……』
心の声に次の願いを叶えろと催促されているようだ。神様から言われた、僕の願いを叶える旅はまだ始まったばかりなのだろう。きっとこのまま、まだまだきっと遠い旅なるんだろうな。そんな風に思いながら、少し華やかになった台車をゆっくりと押して先へと向かっていった。まだ、背中の人形は何も言わないけどね。
<今なら徹夜も怖くないなぁ……>
僕が寝ないで歩いていた理由は、あのギリギリの状態の花が枯れてしまったらまずいと思ったからだった。
<急がなくては……>
焦りもあるせいか結構な速度で台車を押しているせいか、背中の人形は時折風に揺れてカチャッカチャッと音を立ている。最初のうちは、ちょっとびっくりして止まって確認したりしていたけど、だいぶ慣れてきた。
「食べなくても平気だけど食べたら美味しいな」
コンビニから持ってきた満足系のチョコバーを食べながら歩く。食べなくてもいい体だが、食べたほうがより良い気分になるのだから食べたほうがいいに決まっている。チョコバーに満足していると、心の声が位置を修正してくれる。
『もう少しこっち』
方角は言ってくれなくなってきたが、逆に言えば方向はもうあっていて、そろそろあの場所が近いのかもしれない。もう少しかな?急がなくてはいけない。僕はあの花の願いを叶えないとダメなんだ。それが世界の再編成をするための、あの神様との約束だから。糸口もなかったのにせっかく最初の願いを見つけて叶えられそうなんだから、これはものにしないとだめだ。だいぶ打算的ではあるが、叶えられる側は別にそこは気にしないだろう。
「急がなくては……」
カチャカチャと背中の人形が鳴る。荒野を結構な速度で台車を押しているのだが、なんだかんだなだらかなせいか台車が横転したり、大きな石にぶつかったりとかはない。荒野の中でガラガラと台車の音とザッザッと僕の歩く音がしている。そういえば汗もなんか、出ていないな。便利と言えば便利な体になったものだけど、体温調節とか大丈夫なのかな。汗は書かないでもどこかでお風呂にでも入りたいものだな。
『あと少し……ほらそこ』
お、心の声さんが僕を止める。どうやら到着したようだ。あの花のところまで戻ってこれたようだ。花のあったところを見てみる。だいぶお疲れのようだ、むしろ死にかけていると言ったほうがいいのだろうか。でも何とか生きているみたいだ、間に合ったかな?
二リットルのペットボトルを台車から降ろして、花の側の地面に少しずつこぼしていく。確かこういうときはいきなり花に水をかけちゃダメ……だった気がする。何となくなんだけどそう思ったので周りから水をかけていった。
花にはキャップを使って少しずつかけてみた。どうだろうな……。つい花が気になって覗き込んでしまう。心なしか少し持ち直したような気がする。
「あ、蕾がいっこある。まだ咲いていないのがあるんだ……」
『あぁ……水……え?!水!!水だ!なんで?え?なんで?』
花の声が聞こえる。どうも死にかけているところに急に水が来て、どうしていいかわからなくなっているらしい。無理もないよな、そりゃそうだろう。死にかけていやむしろそう諦めていたのだろうな。最後の蕾咲かせないとだろ?間に合ってよかったよ本当。
「ははは、驚かしてごめんね。間に合ってよかったよ。さぁ、たーんとお飲み。そして綺麗な花を咲かせてね。頑張れ!」
『応援……?あぁ、なんだか懐かしいな。そうだ俺は頑張らなきゃな……この蕾を咲かせるんだよ。綺麗な花をさ……』
その後、花はゆっくりと蕾を開いていった。僕にはその姿はとても健気で儚くみえて……汗は出ないくせにどういうわけか涙は流れてきた。
『俺、ほら蕾……最後の蕾……大丈夫だ、遅れてもいいんだ、ちゃんと綺麗に咲けば』
一生懸命なその花の最後の蕾はゆっくりと慌てないようにしっかりと綺麗に咲いていった
「おおおおお……」
僕が今まで見たこともないくらい綺麗な花が咲いていた。ゆっくり開いた花は白く綺麗で、あの花の言葉の通り、ゆっくりと綺麗にしっかりと咲いていた。僕は声にならない声を出し、ただただ感動していた。彼かけていた花の方はすっかりしぼんでしまっていたが、風に揺れたのか花が自分で向いたのか僕の方を向いて花は言った。
『あぁ……どうだい? 大きな生き物さんよ。俺は綺麗だったか?どうだったさ、綺麗だったろ?あぁ……だよな?言わなくてもいいさ、何言ってるかもう聞こえないしな……あぁ……腹いっぱいだ……美味い水だった……。あぁ……その最後の花は良かったらどこかに飾ってやってくれ……な。あ……り…と……う』
それっきり花は一言も話さなくなった。僕はそのままそこで座ってそのきれいな花を見続けていた。やがて彼かけた花は、最後の蕾の花を残して、地面へと落ちて還っていった。
『願い……叶えた……』
心の声が少し嬉しそうに言う。それと同時に何か小さなものが人形へスッと入っていった。僕はそれを驚いてみる。カチャ……人形が一瞬鳴った。ただその一瞬だけ鳴っただけであとはまたいつもの人形になっていた。こうやって何かを集めて行けばいいんだろうか。そのうち何かこの人形にもおきるのかな……。
「願い、叶えられたみたいだ……」
花のあったところのペットボトルの残りの水をかけたあと、僕はそのあたりの土と一緒に、三分の一くらいに切ったペットボトルに、最後の蕾の花を移して、そこを後にした。枯れかけの花の遺言みたいだったので、そのままにしとくの何かと思ったので持っていくことにした。
『もっと先……願い……』
心の声に次の願いを叶えろと催促されているようだ。神様から言われた、僕の願いを叶える旅はまだ始まったばかりなのだろう。きっとこのまま、まだまだきっと遠い旅なるんだろうな。そんな風に思いながら、少し華やかになった台車をゆっくりと押して先へと向かっていった。まだ、背中の人形は何も言わないけどね。
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