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第一章 枯れそうな花

第三話 花の願い

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 小さな植木鉢で種から目を覚ました俺。しばらくして俺は頑張って二枚の葉で世界に触れた。初めて理解した世界はとても暖かく、そう陽だまりの匂いがした。

 そういえば世界を理解できるようになってから、たまに、えらい大きな生き物が声をかけてくるようになった。何言っているのかは分からないが、優しげな声がしていて、なんだか応援されているみたいに感じる。

 この大きな生き物は俺に飯をくれる。肥料と水、それとまた応援だ。最近少しずつ、言葉というのを覚え始めた。どうも綺麗になれとか何とか言っているらしい。綺麗か……。それって、どうなんだろうな俺にも似合う言葉なんだろうか。

 周りには俺の様な『花』の仲間たちが沢山いた。そいつらも俺と同じように応援されて飯をもらって、それにこたえるように蕾をつけて花を咲かせていく。若干競争みたいになっている。俺はソレを世k目にマイペースだ。慌てても仕方ないじゃないか、なぁ?

 結果的に、俺は少し遅めだったみたいだ。その分すごく綺麗な花を咲かせているはずだ。そこはちょっと自信がある。ようやく店と言われるところに並べられて、大きな生き物たちの目に留まって、という、その矢先だった……。

 急にぐるっと目が回ったかと思うと店はなくなっていた。またそのあとすぐ気を失って、気が付いたら何もない荒れ地に誰かに強引に刺されたように俺は居た。ここまでなんとか太陽とわずかに感じられた水気で生き延びてきた。その間も何度も心が折れそうになった。

 でもなんだろう、あと一個だけ蕾のままになっている花がある。これだけは何とか咲かせたい。何だか悔しいじゃないか。仲間たちの姿はどこにも見当たらない。せめてこの蕾だけはさ、なんとかしたいんだよ。そういえば、神様とかいうのがいるんだって大きな生き物がたまに言っていたよな。神様は願いを叶えてくれるんだって言ってたよな。

『なぁ……神様とかいうの、頼むよ。俺の最後の蕾に花を咲かせてくれよ。あの大きな生き物が言っていたんだよ。ずっと世話をしてくれていたあの大きな生き物がさ……あなたは綺麗な花を咲かせるのよってさ……なぁ……』

 あれから何日たっただろう。もう世界を感じるのもかなりしんどくなってきた。水が足りない……太陽は圧倒的にあるのだが、水がとにかく足りない。

 それからまた何日か経った。ため息が出て苦しい……。もう世界のほとんどが感じられない。

『あ~あ、もうダメだ……後は枯れるだけだ……。せめて、せめて最後に腹いっぱいお水が飲みたかった』

 誰も聞いてないだろうし、花である自分の声が聞こえるわけもないだろうな。あぁ最後にこの蕾、この蕾だけは咲かせたい。誰でもいい、神様じゃなくてもいいんだ。どうか雨でもいい……水を水を。

『水を腹いっぱい……』

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